挿話154 オーブリーに泣きつくアーチャーのベラ

「す、凄かった……」


 オーブリーさんと出逢ってからは、オーブリーさんしか知らない身体だったけど、ハーパーさんも入れた三人で代わる代わる……とても濃厚な夜を過ごす事が出来た。

 そのハーパーさんは、今も私の横で眠っていて……でも、オーブリー様の姿がない。

 何処かへ出掛けてしまったのだろうか。

 けど、オーブリー様は黙って何処かへ行ったりしない方だと思うんだけど……あ、ベランダに居た。


「おはようございます。オーブリー様」

「おはよう、ベラ。昨日のベラは激しかったね」

「あ、あはは。三人で……なんて初めてだったので」

「ふふっ、そうだね。僕も最後に楽しめて良かったよ」


 ……え? オーブリー様!? それはどういう意味なのっ!?

 私がハーパーさんを部屋に連れ込んでいたから、怒っているの!?

 でも、あれは本当に助けてもらったお礼だし、それに何より、昨晩はオーブリー様もハーパーさんと一緒に私を……


「ま、待ってください! 何でもします! ですから、私を捨てないでください!」

「ん? 捨てる!? ベラ……何を言っているんだい?」

「えっ!? でも、さっき最後って……」

「あぁ。勇者の務めというのがあってね。暫く魔族領に行かないといけなくなるからさ。僕がベラを捨てる訳ないじゃないか。とはいえ、昨日みたいに知らない人を部屋に連れ込むのは、程々にして欲しいけどね」

「し、しませんっ! あれが最初で最後ですっ! もう二度と致しませんっ!」


 ハーパーさんも良かったけど、オーブリー様とは比べ物にならない。

 私は、オーブリー様と一緒に居たいの!


「はっはっは。とにかく、そういう訳だから、ベラの誤解だよ。とはいえ、暫く会えなくなるけどね」

「あ、あの……それはどれくらいの期間ですか?」

「うーん。第四魔族領という場所へ行くように言われているんだけど、凄く遠い場所でね。転送魔法を使って行くらしいんだ。だから、帰って来るには賢者に召喚魔法を使ってもらう必要があるそうで、いつ戻れるかは分からないんだ」

「えっ……そ、それなら私も行きます! オーブリー様とずっと離れて暮らすなんて嫌ですっ!」

「だが、向こうは何もない荒れ地……かもしれないという話なんだ。というか、第四魔族領がどんな場所か分からないから、その現地調査という役割で、今までみたいな暮らしは出来ないんだよ?」

「オーブリー様と一緒に居られるなら構いません!」


 そう言って、オーブリー様に抱きつき、返事を待っていると、


「わかった。それなら、ベラも一緒に行こうか」


 オーブリー様が優しく抱きしめてくれた。


「オーブリー様っ! ありがとうございますっ!」

「だけど、少しだけギルドと交渉しよう。というのも、第四魔族領にはベラの元パーティメンバーである、ステラというプリーストや、フィーネというウィッチの女性がいるらしいんだ」

「ステラとフィーネが……」

「前のパーティメンバーと同じ場所に居るというのは、少々気まずいだろう? だから、もう一つ候補に挙がっていた、第三魔族領という場所にしてもらおう」


 オーブリー様がいつものように優しく微笑み、頭を撫でてくれる。

 やっぱりオーブリー様はお優しい。


「けど第三魔族領は第四魔族領と違って、転送魔法などは使わないから早く帰って来られるかもしれないんだけど、その一方で魔物が多いらしいんだ。いや、第四魔族領にも居るんだけどさ」

「オーブリー様。魔物なら私も援護致します。オーブリー様の槍で、全て倒してしまいましょう」

「ふふっ、そうだね。魔物相手なら杞憂だったね」


 ふぅ。オーブリー様に捨てられないで良かった……と思っていると、いつの間にか後ろにハーパーさんが居た。


「話は聞かせてもらったよ。第三魔族領に行くんだね?」

「ハーパーさん!? ……はい」

「じゃあ、僕も手伝わせてくれないかな? その……ベラは僕の初めての人だし」


 えっと……どうしよう。私が招いた事とはいえ、凄くややこしい事になりそうな気がするんだけど。

 どうしたものかとオーブリー様を見つめていると、


「はっはっは。大歓迎だ。二人纏めて、俺様が守ってあげよう。俺様は勇者だからな」


 まさかの許容……昨晩の三人で、第三魔族領へ向かう事になった。

 ……ま、また昨日みたいな激しい事になっちゃうのかも。

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