第68話 九歳のアレックスと十歳のモニカ
「凄いな。人間そっくりな上に、自動で動く人形を作り出すスキルか」
シェイリーのおかげでようやく静まり、メイリンのスキルの話に耳を傾けられるようになった。
何でも、アレを使って人形を作るのだとか。
しかし、九歳の頃の俺にそっくりな全裸の人形が作られるというのは、何とも複雑な気分だな。
「メイリン。スキルで作った、その人形はずっとその姿なのか? あと、どれくらいの間、活動出来るんだ?」
「うむ。妾は自身でこのスキルを使うのは初めてだが、母が同じスキルを使う為、効果は知っている。何でも、この人形の年齢の日数分だけ身体を維持出来るそうだ。つまり九歳であれば、九日を過ぎると、人形が消滅するのだ」
「九日間か。ちなみに、この人形の能力や性格は? メイリンが指定した通りに動くのか?」
「身体能力や性格は、アレックス殿の当時の――九歳の頃で、スキルは今現在のアレックス殿が所有しているスキルを行使可能だ。なので、元軍人で中年男性の子種から作ると、凄く優秀な人形が作れるという訳だ」
なるほど。
つまり今の俺を、そのまま若返らせた感じになる……って、本当に凄いな。
ただ、メイリンは見た目からすると、ノーラに近い年齢だと思われる。
そんな少女に中年のオッサンのアレを……いや、実際俺のアレが使われた訳だから、俺がとやかく言える立場ではないのだが。
「メイリン殿。ご主人様の子種を使って人形を作るという事だが、男性の人形しか作れないのか?」
「え? 子種は男性からしか出ないと思うのだが」
「……子種はそうだが、その代わりと言ってはなんだが、ここに私が作った聖水があるのだ。品質はかなり良いらしくてな。これを使って人形を作る事は出来ないだろうか」
「聖水? 妾はもちろん、母も試した事は無いと思うが、せっかく用意してくれたのだ。やってみよう」
そう言って、モニカがメイリンに小さなカップを渡してるのだが……そのカップはどこから取り出したんだっ!?
というか、どっちだ!? 二通りある作り方のどっちの方法で作った聖水なんだっ!?
しかし、俺が止める間もなく、モニカから聖水入りのカップがメイリンに手渡され、
「≪人形生成≫」
スキルが発動された。
モニカの聖水で発動されたスキルだとどうなるのかと思っていると、
「母上。私は何をすれば宜しいでしょうか?」
モニカを幼くした、シェイリーと同じくらいの背丈の少女が現れる。
「おぉ、モニカ殿。聖水から人形を生成する事が出来たぞ! これは、妾の一族も知らなかった、新事実だ」
「なるほど。つまり、私が聖水を作れば作る程、幼女時代の私が作られ、ご主人様にご奉仕出来るという訳か。さぁ行け、私よっ! ご主人様にご奉仕するのだっ!」
「って、おい。モニカは、その子に何をさせる気だっ!」
だが、小さなモニカの人形は、何もせずにメイリンのすぐ傍で佇んでいる。
「悪いが、この人形はそれぞれの考えに従って動くものの、指示や命令は、妾の言葉にしか従わぬのだ」
「な……それでは、作ってもらった意味が無いではないかっ!」
「いや、だからモニカは、何をさせようとしていたんだよっ!」
モニカの半分の年齢――十歳児に奉仕されて喜ぶような俺では……あ、いや。さっきまでシェイリーに……こほん。
まぁその、見た目年齢だけでなく、中身まで幼い子供はダメだ。いや、本当に。
「幼い頃の自分そっくりの人形かぁー。私も作ってもらいたいけど、モニカさんみたいに聖水なんて作れないし……って、そういえばモニカさんは、あの聖水っていつの間に作ったの?」
「もちろん、ご主人様にご奉仕させていただいている間にだ。まだ効果を確認していない方の聖水を作ってみようと、予めカップを用意しておいたのだ」
「な、なるほど。せ、聖水じゃなくても、愛え……こほん。その、私もアレを提供したら作れないかしら?」
エリーの子供時代……懐かしくはあるが、皆子供の頃の自分の人形を作ってどうするんだ?
というか、俺とモニカの人形に何か服を……って、シェイリーの社はもちろん、家にも子供服なんて無いんだが。
あのまま二人とも全裸っていうのは、どうにか出来ないだろうか。
「あ……ところで、この人形たちは、食事や睡眠はどうするんだ?」
「食事や睡眠は無くても大丈夫だが、あった方が良いと聞いている。食事や睡眠をとらなければ、代わりに身体を維持出来る時間が減ると聞いている」
「一先ず、食事とベッドは用意しよう。メイリンの近くに居る方が良いのか?」
「いや、特に距離は関係ない。離れていても妾とは会話が可能だ。なので、空き家などがあれば、そこに住まわせてくれれば助かるが」
「……わかった。前に使っていた小屋があるから、そっちを使ってもらおう」
メイリンの凄すぎるスキルにより、子供姿の俺とモニカの人形が作られてしまった。
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