挿話32 念願のスキルを発動させるドールマスターのメイリン

 すぐ目の前に、アレックス殿の雄々しく剃り立つ太くて長いアレがある。

 その先端には、妾の求めるモノが少し付いているが……ちょ、直接触れと!?

 先程から何度も出しているようだし、それを小瓶か何かに入れてくれると、妾は凄く助かるのだが。


「さぁ、メイリン殿。遠慮せずにパクッと」

「いやいやいや、おかしいっ! 妾は子種は欲しいが、男性のコレは、将来夫となる人のモノしか……というか、そもそもこんなモノは口に含むモノではないっ!」

「なるほど。つまり口ではなく、さっさと中に出せと言うのだな。分かる……分かるぞ! 私も早くご主人様の子を授かりたいのだが、どういう訳か挿れさせてくれなくて困っているんだ」


 いや、アレックス殿はエリー殿の夫なのだから、当然では?

 というか、ここでエリー以外の女性がアレを口にしている事自体がおかしいのだが。

 だ、だが、目の前の子種を手にすれば、妾のスキルが使える……ゆ、勇気を出すのだメイリン!

 たかが、赤黒い男性の棒ではないか。

 いつか妾だって、黒髪の一族を増やす為、夫のモノを受け入れる時が来る。

 それが少し早くなって、しかもほんの先っちょに触れるだけだ。上手くいけば、棒には触れず、先端のアレだけを指で取れかもしれない。

 集中するのだ。先端に付着している白いものだけ。白いものだけを……うぅ、でもピクンピクンって小刻みに動いてる! しかも変な形で変な匂い!

 うぅ……どうして妾のスキルは、こんなモノが必要なのだっ!


「……無理だっ! モニカ殿。妾の代わりに子種を……舐めたっ! 飲み込んだっ!? どうしてぇぇぇっ!?」

「メイリンさん。アレックス様の子種って、コレの事ですか?」

「フィーネ殿っ! そう、それだっ! すまん、もらうぞ」

「どうぞ……ひゃんっ!」


 頑張ろうとしたが、やはり無理だった。

 そもそも、妾は男性と手を繋いだ事すらないというのに、いきなりこんな棒を目の前に出されるなんて、無理が過ぎるっ!

 一先ず、フィーネ殿が自身の胸に付着した子種を取らせてくれて……ついに手に入れた!

 しかし、ネバネバした変な感触だが、皆よくこんなモノを飲めるのだな……っと、これの感想はどうでも良い。

 やっと……やっとスキルが発動出来る!


「≪人形生成≫」


 妾の……母の使っていたのと同じスキルを発動すると、目の前の地面に小さな塊が盛り上がっていき、それが段々と人の形に変わっていく。

 そして、


「お母さん。僕、何をすればいいのー?」

「で、出来たっ! 妾の人形……っ!?」


 幼いアレックス殿が現れた。

 ……何故か全裸で。

 いや、妾が覚えていないか、もしくは母が常に服を用意してからスキルを使っていたのかもしれないな。

 いずれにせよ、初めてスキルを使い、見事に成功したのだ。

 しかし、妾の事を母と……な、なんだ!? この胸の奥がキュンとする感覚は!?


「凄い。子供の頃のアレックスそっくりね。……アレも」

「お、おぉぉ……可愛いっ! これが噂に聞く、ご主人様の幼少期……ねぇ、僕。お姉ちゃんと一緒にイイコトしよっか」

「お、おい。モニカ殿! 妾の人形に変な事をしてはダメだっ!」


 一人で感慨にふけっていると、モニカ殿が妾の人形の手を取り、自らの胸を触らせていた。

 幸い、まだ子供だからか、人形はキョトンとしているだけだが……頼むから、変な事を学習させないでくれ。


「ふふ……ほははひほほほ、はへっふふは」

「青龍様。それを舐めながら話されても分かりません」


 青龍様が何か仰っているのだが、アレックス殿のアレから口を離さないので何を言っているのか……え? そろそろアレックス殿が達しそうだから? アレが少し大きくなったのがサイン?

 ……そ、そうか。モニカ殿にまた一つ、余計な事を教えられてしまった。


「子供のアレックス様が出て来たーっ! 可愛いっ!」

「フィーネ殿。先程モニカ殿にも言ったが、妾の人形に変な事をしないでもらいたいのだが」

「変な事なんてしてないよー? 可愛いから抱きしめているだけだよー?」


 いや、抱きしめているだけ……って、全裸で人形に抱きつくでないっ!

 大きな胸に顔が埋もれて苦しそうではないかっ!


「メイリンさん。結局、この小さなアレックスは何なの? こ、子種……って言っていたけど、まさかメイリンさんとアレックスの子供!?」

「そうではない。妾は、人形使い――ドールマスターというジョブで、男性の子種を使い、その子種の元となる者の、半分の年齢の人形を作り出す事が出来るのだ」

「半分の年齢という事は、アレックスは十八歳だから、この子は九歳なんだ。でも……人形? その割には本物の子供に見えるんだけど。それに、勝手に動いているみたいだし」

「外見は人間そっくりだが、中身は血も通っていないし、生殖行為なども出来ない、文字通りの人形だ。だが、妾の命令に従う忠実な駒であり、妾はこのスキルを使って、何としても国を復興させるのだ!」


 エリー殿に妾の人形について説明していると、生殖行為が出来ないと言ったところで、モニカ殿が残念そうな表情を浮かべたのだが……一体何をする気だったのだろうか。

 本来は、優秀な三十代から四十代の男性から子種を貰うのが、このスキルの最も良い使い方だと思うのだが、ここには男性がアレックス殿しか居ないのだから、仕方が無い。

 とにかく、先ずは妾の人形を増やし、忠実な軍を作る。

 そして、この国や隣国を乗っ取り、妾の国を復興させるのだっ!

 ……と、とりあえず、先ずは人形の服を入手しないとな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る