第538話 北の大陸の最北端

 北の大陸の最北端と思われる岬に到着し、地上へ上がる為の穴を掘ろうとして……船を留めたところでタイムアップとなった。

 改めてニースをララムバ村に残した事の痛さを感じつつも、天后のスキルで一旦アマゾネスの村へ。

 そして、翌朝。


「では、行ってくる」

「アレックス。仲間のところまで、あと少しなのだろう? 頑張れよ」

「あぁ、ありがとう。サマンサ」


 サマンサたちに見送られ、天后のスキルにより、俺とユーリ、レヴィアとラヴィニア、プルムとミオが再び北の岬へ。

 ちなみに、昨晩でプルム・トゥエルブが誕生しているが、ひとまずアマゾネスの村に残してきた。


「アレックスよ。今日は分身をしないのか? 分身して人手があった方が、早く地上へ出られると思うのじゃ」

「いや、その結果、昨日が大変な事になったからな。このまま地上を目指すから、釣りでもしながら待っていて欲しい」

「ふむ。残念なのじゃ」


 ミオから分身スキルを求められるが、それを断り、ユーリに応援されながら一人地上を目指す。

 暫くして、もう少しで地上だという話なので、パラディンの防御スキルを使用し、ユーリを守ると……ついに、地上へ出た。

 周囲を警戒するが……誰も居ないようだ。


「パパー。ここは、せかいのはしっこって、かんじだねー」

「そうだな。北大陸の最北端のはずだしな」


 念の為、西側に目を向けるが……少なくとも、視界の範囲では、ここより北側の場所はなさそうだ。

 今居る岬は、南西に向かって大きな弧を描くような湾になっている。

 魔族がこの大陸を持ち上げていなければ、きっと綺麗なビーチになっていたのだろう。


「とりあえず、あの建物に入ってみるか」

「パパー。ユーリがとんで、うえからみてこようかー?」

「いや、別行動を取って何かあった方が怖いからな。ユーリは俺から離れないでくれ」

「わかったー!」


 そう言って、ユーリが俺の背中に抱きつき、ぴったりと文字通りくっつく。

 まぁユーリは小さいくて軽いし、問題ないだろう。

 建物の傍までやって来たが、遠目には灯台のように見えたが、近くで見ると、


「……アレックス。これ、灯台だと思う」

「そうね。私もそう思うわ」

「あー、やっぱり? まぁそうだよな」


 残念ながら、やっぱり灯台にしか見えない。

 特に、レヴィアとラヴィニアが言うのだから、間違いないだろう。

 建物には鉄で出来た扉があり、鍵がかかっているものの、老朽化していたのか強く握ると簡単に開いた。

 内部は螺旋階段となっており、上へと昇っていくと、


「アレックスよ。やはり灯台だったのじゃ」

「お兄さん。これ、凄いねー! 真ん中に何かの装置があるねー!」

「あー、うん。おそらく、照明を灯すマジックアイテムの類だろう」


 一番上に到着して、ミオやプルムの言う通り、この建物が灯台以外の何物でもないというのが分かってしまった。

 しかも、誰かが居る気配もないので、これは無駄足という奴だろうか。

 もしかして、ここから西へ行ったところに、この岬よりも北となる場所があるのだろうか。

 それとも、この灯台以外に、何か玄武に関するものがあるのだろうか。


「待てよ。ラーヴァ・ゴーレムは、社があると言っていたな。シェイリーの社はこんな形ではなかったし、他に建物があるという事か」


 皆と共に、螺旋階段を下りて、灯台から出ると、周囲の捜索を開始する。

 まず間に見えるところに、社のようなものはない。

 だが、思い返してみると、元々水に近い場所にあるはずだ……と、崖に洞窟の類があるのだろうと考えていた。

 なので、岬の近くの岸壁を含め、ユーリに強力してさがしてもらう。

 すると、


「パパー! あったよー! こっち!」


 ユーリから声が掛けられ、灯台よりも更に北……本当にただの岩場でしかない崖の下に、小さな洞窟があると教えてくれた。


「あそこへ降りるには……また穴を掘るか」

「まぁ帰りの事を考えると、それがベストなのじゃ。滑り降りて上手く洞窟に入れたとしても、戻る時に困るのじゃ。だが、また待つだけというのは暇なのじゃ。……という訳でアレックスよ。やはり分身を……」

「却下だ。というか、他にも何かあるかもしれない。俺が、あの洞窟目指して穴を掘っていくから、皆は引き続き周囲の調査を頼む」

「むぅ……アレックスが、いじわるなのじゃ」


 口を尖らせるミオを宥めつつ、再びツルハシを振るう事にした。

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