第777話 自ら服を脱ぐモニカ

「おい、見てみろよ。この柔らかい胸。餅みたいだぞ」

「ふぅ。こっちは片付きました……って、モニカさん? 何をしていますの? いきなり胸が大きいアピールだなんて」

「おいおい。胸は柔らかさよりも、揉み心地だろ? なぁアレックス?」


 突然自分の胸を揉みしだき始めたモニカを見て、レイスたちを殲滅させたシアーシャとザシャが呆れている。

 だが、俺に意見を求めながらザシャが胸を押し付けてくるんだが……モニカもザシャも何をしているんだ?


「ふっ、何の強がりだ? それとも、仲間には手を出せないのか? ほれ、せっかくだ。お前にも見せてやろう」


 そう言って、モニカが鎧を脱ぎ捨て、胸元から胸をさらけ出す。

 いくら白虎を救出したとはいえ、まだ肝心の魔族を倒していないのに、モニカは何をしているんだ?


「モニカー。ここは洞窟の中だし、さっきお兄さんが大量の水を出して冷えているから、風邪をひくよー?」

「うむ。ニナの言う通りなのじゃ。昨日は我もここでしたが、冷水で冷えてはおらぬし、何よりアレックスのおかげで、身体は熱かったのじゃ」

「えっ!? そうなの!? お兄さん、ずるーい! ニナはー?」


 それを見たニナとミオがモニカを心配し、ニナが抱きついて来たところで、白虎がミオの隣へ行き、ヒソヒソと何か話し始める。


「み、ミオ。あの銀髪の女性は、もしかして……」

「ん? あぁ、乳女の事か。あやつは、胸ばかりに栄養が行っておるのじゃ。気にしなくて良いのじゃ」

「いや、そういう事を言いたいんじゃないアル。おそらく身体を乗っ取られているアル」

「いやいや、違うのじゃ。乳女は構ってもらえないと、時々奇行に走るのじゃ。いつもの事なので、気にしなくて良いのじゃ」

「えぇ……そ、そうアルか? しかし、私からすると、どう見ても異常アル」

「うむ。それがあの乳女なのじゃ」


 どうやら、白虎がモニカの行動を理解出来なくて不審に思っているようだ。

 まぁ気持ちはわからないでもない。

 モニカは普段から脈略も無く、突発的に全裸になったりするからな。


「お前たちは、ここまで挑発されて、何故動かぬ! ……ここまでして突っ込んで来ないというのであれば、これでどうだっ!」


 モニカが相変わらず変な事を言いながら一糸まとわぬ全裸になる。

 なるほど。魔族が姿を現したら、すぐさま聖水を出せるようにする為か。

 身軽になってスピードも上がり、容易に聖水を周囲に巻く事が出来る姿だな。


「うーん。寒そうですの。鳥肌が立っておりますの」

「アレックスー! モニカは放っておいて、俺たちで楽しもうぜ」

「お兄さん。ニナもニナもー!」


 抱きいてきたザシャとニナまで服を脱ごうとしたが、二人は俺が止める。

 ダメだぞ。モニカはちゃんと深い考えがあって全裸になっているんだ。

 だけど、ザシャとニナは全裸になったら防御力が下がるだけだからな。

 二人を止めながら、モニカの行動に感心していると、再びモニカが叫びだす。


「わかった。お前たちが何も出来ない腰抜け共だというのなら、この女が立ち直れなくなるくらいに、心を折ってやるぜ! 後悔するんだなっ!」


 突然モニカがその場に大きく脚を開いてしゃがみ込み、自らくぱぁっと――


「くっ! これは……聖属性!? こんなところに、罠を仕込んでいただと!?」


 モニカが自身の下腹部に手を伸ばしたかと思うと、何かに弾かれたかのように手を引っ込める。

 何だ? モニカが自ら行動を止めた!?

 普段は誰かに止められるまで、余計な事をし続けるのに!


「ま、待つのじゃ。今のは……乳女が自身の聖水で痛みを受けたという事なのか!? もしかしてこれは……乳女の身体に、白虎を操っていた者が憑依しているのかもしれぬのじゃ!」

「な、何だって!? ミオ、どういう事だ!?」

「いやあの、私は最初から言っているアル。あの胸の大きな銀髪の女性が変だって! 私を操っていた魔族が、きっとあの女性に憑依しているアル!」


 ミオと白虎の言葉を聞き、改めてモニカの行動を振り返る。

 突然自分の胸を揉みだして、全裸になって……いや、普段のモニカの行動通りだ。

 最後の、聖水でダメージを受けた事以外は。


「くっ! 相手の身体を乗っ取るというのは厄介だな。行動パターンまで合わせて来るのか」

「えっ……この女は、普段からこんな変な事ばかりしているのか!?」

「え? 驚くほど、行動が普段通りだったのだが」

「え?」


 モニカが……いや、モニカの身体に憑依した魔族が目を丸くしているが、それはさておきモニカの身体を返してもらうぞっ!

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