第914話 白虎からもらったスキル
「まったく……どうして我の所へ来るのが狼どもより後なのだ」
「アレックス。帰ってきてくれたのは嬉しいけど、もう少し短い期間で帰ってきて欲しいな」
「そうだよー! あの、意識だけ戻ってくるスキルでも良いんだよー? 私は旦那様とお話し出来るだけでも嬉しいしー。もちろん、直接抱きしめられる方がもっと嬉しいけど」
シェイリーやエリー、ユーディットを満足させたものの、戻ってくる頻度が低いと口を尖らせられる。
ちなみに、コルネリアや莉子と美月たちとの一件の後、アマゾネスの村の分身を消して、こちらで出し直したからだろう。
オティーリエやミオたちも合流し、辺り一面が大変な事になっている。
そんな中で、リディアがジッと俺を見つめてきた。
「アレックスさん。ニナさんは無事にご両親と再会出来たのでしょうか」
「あぁ。暫くは家族とゆっくり過ごすと言っていたよ」
「良かったです。では、いつかアレックスさんも、私の両親と会ってくださいね」
そう言って、抱きついてきたリディアの頭を撫でる。
ダークエルフのフョークラに出会った事だし、その内エルフの森を見つけてリディアも家に帰してあげられればと思う。
とはいえ、今は安静にしていて欲しいし、モニカを戻すのが先だが。
「さて、アレックスよ。お主に様々なスキルが増えておるのだが……一番強力なのは白虎から得た力であろう。ミオから聞いたが、神族との戦いで勝てたのは、この力のお陰だろうな」
「どういうスキルなんだ?」
「無形の物質を任意の形にする力だ。神の水を剣の形にしたのだろう? 白虎に礼を言っておくべきだ」
なるほど。シェイリーに教えてもらった新たなスキルで、いろいろ合点がいった。
あの時、咄嗟にあんな事が出来たのは、白虎のおかげだったのか。
「どんな形にも出来るのだろうか?」
「それはスキルの習熟度などに寄るのではないか?」
「習熟度……あ、スキルレベルか」
「うむ。ちなみにアレックスは気付いていないのか、あえて目を背けていたのかは知らぬが、分身スキルと複製スキルの習熟度が大きく上がっておるぞ?」
分身と複製のスキルレベル……いや、目を背けていた訳ではないのだが、レベルが上がったと聞いたような気がした直後に意識を失った事が何度かあった。
そのため、レベルが上がった事による効果を知らないんだよ。
という訳で、ついでにシェイリーに聞いてみると、感嘆の声が上がる。
「ふむ。分身スキルは……ほほう。分身が分身スキルを使えるようになっておるな。多重分身という奴じゃ」
「まさか、際限なく増えるのか!?」
「流石にそういう訳ではない。どうやら、全部で五十体が上限のようだな」
いや、十二分に多いから!
今までも、分身スキルだけでなく、影分身スキルや複製スキルで合計三十体近くの分身が現れていたのだが……増えすぎだって。
「むっ!? 待った! これは……アレックス、凄いぞ! 複製スキルの習熟度が上がった事により、複製先の位置を固定出来るようだ」
「……どういう事だ?」
「分身スキルとは違って、全裸のアレックスが現れる複製スキルがあるであろう? これまでは分身スキルと同様に、一度消すとアレックスの居る場所にしか出現しなかったが、消した場所で再び出せるようだ」
シェイリーによると、第四魔族領で複製スキルを使った後、俺が消して何処かへ移動しても、再度複製スキルを使用した際に、遠く離れた場所から第四魔族領へ複製スキルを出現させられるらしい。
「という事は、アレックスが帰って来なくても、夜にはアレックスの複製がここに現れるって事!? それは、凄くありがたいんよ!」
「ヴァレーリエー。旦那様の事が好きなのはわかるけどー、今は無茶な事はダメだからねー?」
「もちろんわかっているんよ。この子は、竜人族の赤竜種を増やす為の、最初の一人目だもん。けど、ちょっとはその……ね?」
ヴァレーリエがユーディットに注意されているが、今は本当に無理をしないでもらいたい。
「あ、そうそう。本人はわかっていそうだけどー、ヴァレーリエだけでなく、ミ……」
「こほん。シェイリーよ。他にも、アレックスのスキルはあるのじゃろ?」
「む? うむ。沢山増えておるが……全部説明すると、夜になるぞ?」
ユーディットの言葉を遮って、ミオがシェイリーに俺のスキルについて聞き……たくさんのスキルの説明を聞く事になってしまった。
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