第826話 突撃メンバー選出
「迷惑を掛けてすまなかった」
「いやいや、有名な十字架のブレアさんの活躍を間近で見られたんだ。気にしないでください」
「クケケッ! 主人。ひとまずこれは店に迷惑を掛けた詫びだ。食事の代金として受け取ってくれ」
迷惑を掛けた事を謝罪し、ブレアがかなり大目に代金を払って店を出る。
よくよく考えたら、この国の貨幣を持っていなかったので、ブレアに立て替えてもらった分を何かで支払うと話したのだが、
「クックック。先程のメリナ商会の馬車から、金が沢山詰まった袋を見つけたので、それをそのまま渡しておいた。だから、気にする必要はない」
貨幣を持っていない俺たちが言うのも何だが、それは良いのだろうか。
とはいえ、相手は人身売買をするような奴らだから、まぁいいか。
「では一旦、街の外で馬車を出そう。流石に、この女性たちを連れて行く訳にはいかないからな」
街の門を通ろうとすると、先程のメリナ商会の馬車の件が伝わっているのだろう。
苦々しい顔をしている兵士が半分と、ブレアに尊敬の眼差しを向けている者が半分。
先程捕らえた人攫いが言っていた事は、ほぼ真実のようだ。
うーん……兵士や騎士の半分が悪事に加担している国か。
……やはり大元となるメリナ商会を潰すのが手っ取り早いのだろうな。
「アレックス様。この辺りで宜しいですか?」
「あぁ。グレイス、ありがとう」
街から少し離れた場所で、グレイスが馬車を出してくれたので、一旦全員乗ってもらい、これからの事を説明する。
「先程少し話したが、俺たちはモザビーとイベールの王女から、攫われたドワーフたちを救い出すように依頼されてきたんだ」
「イベール! わ、私イベールの出身です!」
「そうか。モザビーの国の船が海沿いで待ってくれているから、先ずはそこまで送ろう。後は、兵士たちが送ってくれるはずだ」
「やった……やっと帰れる! ありがとうございます!」
話を聞くと、一か月ほど前に攫われ、売り手がつくまで奴隷商の牢に閉じ込められていたのだとか。
許せないな。
「君たちが居た場所には、何人くらいのドワーフが居たのだろうか」
「うーん。たぶんだけど……私たちを含めて十人くらいかと」
「なるほど。全員女性だろうか?」
「そうですね。というか、男性ドワーフは基本的にずっと穴を掘ったりして外に出ませんし、この国では特定の嗜好を持つ男性に売れるという理由で、ドワーフの女性ばかり狙われているんです」
特定の嗜好? よくわからないが、許せない事に変わりはない。
ひとまず、ミオとモニカに馬車を守ってもらう事にして、グレイスとノーラ、マリーナも待機。
その一方で、モニーは俺の連絡係だから絶対についてくると言い張り、フョークラも参戦するという。
「ふふふ。アレックス様の敵という事は、私の敵です! ダークエルフの毒薬……たっぷり味わってもらいましょう」
「あの、貴女はダークエルフですよね? 昔から私たちドワーフ族とは仲が悪いはずなのに、どうして……」
「私はアレックス様がされようとしている事をお手伝いするだけです。私個人の事などアレックス様の御意志と比べるまでもありませんし、そもそも私はドワーフ族の事を嫌ったりしていませんから」
「えぇっ!? 私たちは、小さい頃からダークエルフは敵だと教わって来たのに……」
ドワーフの女性たちがフョークラの発言に衝撃を受けているが……種族間のトラブルはなかなか難しいと思うので、時間を掛けてでも徐々に解決に向かってくれればと思う。
「クックック……では、そろそろ良いかな? 当然、私も行くからな」
「わかった。では、俺とフョークラとブレアとモニーの四人でメリナ商会へ行く。ミオは結界を。他の者は結界から出ないように頼む」
「わかったのじゃ。こっちは全く心配いらぬのじゃ。早く行って来るのじゃ」
ミオが結界を張ったところで、俺たち四人は街の中へ。
ブレアが道を案内してくれて、先程聞いた街の中心にある赤い屋根の建物……メリナ商会の拠点の前にやってきた。
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