第862話 ザガリー邸の捜索

 デイジー王女を抱きかかえ、マリーナをおんぶした状態で、ミオと共に屋敷の中を捜索する。


「ここは……武器庫か? 剣が多いようだが」

「特に魔力を感じぬのじゃ。おそらくナマクラばかりなのじゃ」

「そうか。じゃあ、次へ行こう」


 一階で幾つか部屋を回り、めぼしい物が見つけられなかったので、二階へ上がる。


「ここは……衣装室? いや、メイドさんの部屋って感じだな」

「おそらく。メイドの服しかなさそうなのじゃ」

「……一着借りておこう」

「アレックスよ。そういうプレイは、太陰たちを止めてからにするのじゃ」

「いや、止めた後に必要で……って、マリーナ!? 違うぞ! こういうのを着てくれという意味じゃない!」


 オティーリエが姿を取り戻した時に、着る服が無いと困るだろうと思って、一着を空間収納に格納すると、マリーナが触手でメイド服を拝借する。

 だが、流石にマリーナの身体の大きさに合うメイド服は無いようで……いや、どうして全部持って来るんだよ!


「アレックスー。後で誰かにサイズを直してもらうのー。だから、これも収納しておいて欲しいのー」


 ……いや、戻しに行く時間も惜しいし、マリーナを説得する時間もない。

 ひとまず空間収納に放り込み、次の部屋へ。

 特に何もなく、次々と部屋を見て行くと、


「この部屋は……寝室か? 重要な物はなさそうだな」


 物凄く大きなベッドがある部屋へ。

 ベッドの横に子供サイズの服が飾られており、ドレスや水着に修道女の服や魔法使いのローブ……と様々な種類がある。

 一体、何の為にこんな服がたくさんあるのだろうか。


「アレックスー! ベッドがあるよー? さっきの続きをしようよー!」

「マリーナよ。すまぬが、今はそれどころではないのじゃ。それに、並べられた服からして、おそらくここはあのクズの寝室と思われるのじゃ。生理的に無理なのじゃ」


 ミオが何か感じ取ったようだが……あぁ、あの服はデイジー王女の服という事か?

 朝起きたらすぐに着替えられるように、服を並べているという事なのだろうか?

 だが、あの紺色の水着はまだしも、デイジー王女が何かと戦ったりする事はないだろうし、ビキニアーマーを着けたりする事はないと思うのだが。

 ひとまず部屋を出ると……マリーナが不機嫌そうに声を上げる。


「むーっ! じゃあ、ミオたちが探している何かを見つけたら、さっきの続きをしてくれるー?」

「うむ。この部屋ではごめんじゃが、別の部屋なら構わぬのじゃ」

「じゃあ、何を探しているのか教えてよー! マリが見つけるからー!」


 そう言って、マリーナが沢山の触手を廊下に伸ばす。

 とはいえ、俺たちも太陰に関する手掛かりを探している訳で、探しているものの形状などはわからないんだよな。


「……マリーナよ。屋敷の外で二つの大きな魔力がぶつかりあっているのはわかるか?」

「んー、何となくは。ちょっと待ってね。触手を近付けてみるから」

「あまり近付き過ぎてはならぬのじゃ。オティーリエと太陰が戦っておる故に、巻き込まれるのじゃ」

「大丈夫だよー! マリ、触手が切れたりしても痛くないし、すぐに生えてくるんだー」

「ふむ。そういう事なら……では、オティーリエではない方の魔力はわかるかの? 太陰という我の知り合いなのじゃが、そ奴の魔力を発しているものなり、感じるものがあれば場所を教えて欲しいのじゃ」

「わかったー! ちょっと待ってね」


 マリーナがいろいろと調べてくれているようなので、邪魔しないように直立不動で待っていると、頬に何かが触れる。

 今のは……デイジー王女?


「きゃっ……す、すみません。レックス様の横顔を見ていたら、つい……」


 先程マリーナが何かを飲ませてからデイジー王女の様子がおかしいのだが……まさかフョークラの薬とかではないよな?

 後で状態異常解除の神聖魔法をデイジー王女にかけてみようと思ったところで、マリーナが口を開く。


「あのね……アレックスのを沢山貰ったからかなー? いつもより調子が良いのー!」

「むっ!? という事は見つかったのじゃな!?」

「うんっ! この触手の先だよー!」


 マリーナが一本だけ残して触手を戻したので、その一本を辿ってミオと共に走り始めた。

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