第543話 次の目的地へ

「あなたっ! もっと本気で私の事をめちゃくちゃに……んひぃっ!」


 ラヴィニアが俺の分身たちに囲まれ……気を失った。


「って、海中で気絶するのはラヴィニアといえどもダメだろ! レヴィア、手伝ってくれ!」

「えー。あとで、たくさん……えっ!? この魔力は……」


 レヴィアが俺の分身に囲まれながら近付いて来て、ラヴィニアの身体に触れると、突然顔を強張らせる。

 とはいえ、俺の分身から離れないあたり、どういう心境なのかはわからないが……とりあえず、ラヴィニアを船まで戻してくれた。

 そこからのレヴィアは、ずっと気絶したラヴィニアの傍に……というか傍で、ラヴィニアの様子を伺いながら、俺の分身と続けている。

 とりあえず、ラヴィニアが正気に戻ったのであれば、分身を出し続ける意味がないので、解除しようとしたのだが、ミオとプルムが待ったをかけてきた。


「アレックス! それは酷いのじゃ。もう少し……もう少しだけ頼むのじゃ!」

「お兄さん。プルムも、もっと美味しいの欲しいよー!」

「パパー。ユーリは、なにもみてないから、きにしないでねー!」


 って、緊急事態という事で、ミオの言う通り分身を出したものの、すぐ傍にユーリが居るんだった!

 という訳で、全力でミオとプルムを満足させると、急いで分身を解除する。

 それから暫くして、ラヴィニアが目を覚ましたのだが、レヴィアから意外すぎる話が出て来た。


「……昔、竜人族の海竜種の村が、風の四天王という魔族によって潰された」


 ラヴィニアも俺と同じ事を思ったようだが、レヴィアのように凄い竜人族の村を滅ぼすなんて、風の四天王とやらは、相当手強いようだ。


「アレックス。ラヴィニアに残っていた魔力で、いろいろと思い出した。次は、何処へ行く? 風の四天王を倒す為なら、レヴィアたんは幾らでも泳ぐ」

「あなた、私も同じです! レヴィアさんを操っていた魔族が真の敵だと分かりました。今すぐ向かいましょう」

「待ってくれ。二人の気持ちはよく分かるし、俺も玄武を助け出したい。おそらく、玄武が居る場所に風の四天王が居るのだろうが、その手掛かりを得る為に、ここへ来たんだ」


 レヴィアとラヴィニアが、もの凄い勢いで迫って来るが、今の所その手掛かりが何も無い。

 なので、今すぐ風の四天王の所へ行きたいのだが、何処に居るのかが分からないんだ。


「あなた。先程、調査途中だった人魚族の棲家をもう一度調べましょう。何か残っているかもしれません」

「それは……大丈夫なのか?」

「はい。同じ過ちは繰り返しません!」


 ラヴィニアの強い要望により、今回は念の為ミオにも同行してもらって、再び人魚族の棲家へ。

 先程と同じ、俺とラヴィニアとプルムとユーリの四人で色々調べていると、沢山の部屋の一つから、ラヴィニアが人魚族の文字を見つけた。


――引っ越し先は、西の海。出発は、明日の朝――


「どうやら、ここに棲んでいた人魚族が引っ越す事を決めた時のメモみたいですね」

「……もしかして、この西の海という場所へ行けば、ラヴィニアの仲間や家族に会えるという事か?」

「おそらく。でも、今は玄武さんを助けないといけないのでしょ? そちらを優先で構わないわ」

「だが、この地に玄武の社があると聞いて来たのに、灯台しかなかった。流石に灯台が、玄武の社だとは思えないし、手掛かりをこの人魚たちに聞いてみるというのが、次の手段だと思うんだ」


 とはいえ、ラーヴァ・ゴーレムが聞いたという手掛かりは、北の大陸の最北端に玄武の社がある……という話だった。

 北の大陸の地理が全く分かって居ないが、もしかしたらこの場所が最北端ではないのかもしれない。

 この大陸を東側から左回りに進んで来たから、このまま西側へ進んで行くと、別の最北端があるかもしれないという確認と、人魚族の新たな棲家へ移動する一石二鳥となる。


「よし、ラヴィニア。船へ戻ろう。ここから西へ行くぞ! 人魚族に、玄武の居場所に関する情報を教えてもらうんだ」

「わかりました。その際、私の両親に会えたら、あなたを紹介出来るわね」

「そうだな。俺もラヴィニアを妻として迎えている訳だし、挨拶はしておきたいしな」


 一先ず、この場所は空振りだったが、新たな目的地として、西の海という場所を目指す事にした。

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