挿話122 力を求めてしまった人魚族のラヴィニア
「レヴィアタン!」
目と鼻の先に、私を人魚族の群れから……両親の元から攫った海の悪魔が居る。
夫はレヴィアタンが――リヴァイアサンが人の姿に化けた、幼い女の子の姿に騙されているのよ!
私が……私が自分でアイツを倒さないとっ!
「≪水の刃≫」
全力で生み出した水の刃が海面を走るけど、水上に出ていたリヴァイアサンの鱗一枚傷付ける事が出来なかった。
やはり、圧倒的に力の差があり過ぎる。
『か弱き人魚よ。力を欲するのか?』
「また、この声が……」
『お前が望むのならば、魔王様に仕える風の四天王である、このギルベルトが力を貸してやろう』
「力を……くれるの?」
『あぁ、そうだとも。この風のギルベルトの力……望めば、どんな相手だろうと、倒せるぞ』
どんな相手でも……つまり、あの強大なリヴァイアサン相手でも!?
それならば、私は……あなたの力を借りるわ!
『ふふ、良いだろう。我が風の力をお前に貸してやろう。ふははは……』
突然聞こえてきた謎の声が私に力を……熱い。身体の奥が、熱い!
これはきっと、魔力!
今なら、リヴァイアサンに一矢報いる事が出来るはずっ!
そう思ったのだけど、竜巻を起こす魔法は効かず、稲妻を落とす魔法は夫に止められてしまった。
どうして!? どうして私の攻撃を邪魔するの!?
夫の行動で、泣きそうになっていたら、
「≪閉鎖≫と≪分身≫」
突然夫が分身スキルを使い……あっ! いきなりなのっ!
前と後から挟まれ、口にも……こ、濃いのが一気に注がれるっ!
美味しいし、嬉しいけど……せめて、分身はミオさんやプルムさんにも担当してもらって!
一人でこの人数を相手にするのは……あの水路の夜を思い出す。
あの時も凄かったわね。もちろん今も凄いけど!
『お、おい! 俺様の力を……聞いているのか!? 魔族の力に触れ、魔族に染まるのだっ! あのかつての竜人族のように……って、話を聞けぇぇぇっ!」
「あ、あなた! 凄いのっ! は、激し……」
「ふふふ。やはり、アレックスはこうでなくては。アレックスよ! アレを沢山ださなければならないのじゃ! 我とプルムも手伝うから、分身を何体かこちらへ……んぉっ! この分身は、ランサーの……中々強烈な突きなのじゃ!」
そうそう。私一人で、夫の分身全てを相手にしたら、死んでしまうから、分散させて。
私はあなたが――本人が居てくれれば満足だから。
「ん? アレックス、そういう事をするならレヴィアたんも呼ぶ事……んっ! 海の中でっていうのは嫌いじゃない」
……リヴァイアサンが幼女の姿になり、夫のを咥え込む。
夫は凄いし、愛しているけど、幼女趣味の疑いが……くっ! やはりこのリヴァイアサンが全ての元凶!
戦闘では勝てない! ならばせめて……
「あなたっ! もっとよ! あなたのを私が全て受け止めます! もっと本気で私の事をめちゃくちゃに……んひぃっ!」
「ラヴィニア。流石にそれは無謀。アレックスの鬼畜モード三体同時は……聞こえてる?」
『こらっ! 人魚族の女っ! ……な、なんだ!? この女の中に、俺様のを遥かに凌駕する魔力が!? くっ! 俺の精神支配が……いくら遠隔とはいえ、どうしてこうも簡単にっ!?』
……
「ラヴィニア。大丈夫か?」
「あ、あら? あなた? どうして船の上に?」
「いや、ラヴィニアが海中で気を失ったからな。レヴィアに手伝ってもらって、船まで運んでもらったんだ」
レヴィア……さん。
どうして人魚族を――私を攫ったのかを聞こうとしたところで、先に質問が飛んで来た。
「ラヴィニア。今、奴に……魔族に干渉されていた?」
「え!?」
「レヴィアたんも、今の魔族の魔力で思い出した事がある。……昔、竜人族の海竜種の村が、風の四天王という魔族によって潰された」
「――っ!?」
「唯一生き残ったレヴィアたんは、どうやったのか悪魔にされ、魔族に使われていた」
「ま、待ってください! 竜人族であるレヴィアさん程の……というか、竜人族の村を壊滅する程の魔族って……」
この話が本当だとすると、レヴィアさんも魔族に操られていて、私を攫ったという事!?
という事は……
「ごめんなさい。レヴィアさんに憎しみをぶつけてしまったけど、本来ぶつける相手は、あの風の四天王とかいう魔族なのね」
「憎しみ? 何の事かわからないけど、奴は絶対に許さない。全力で叩き潰す」
不幸中の幸いというか、レヴィアさんが強すぎて、私から攻撃された事に気付いていないみたいだ。
けど、そんなレヴィアさんの――竜人族の村を潰す程の魔族だったなんて。
もしかして、これからとんでもない相手と……ううん。どんな相手でも一緒よ! 絶対に許さないんだからっ!
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