第542話 魅了の解き方
ラヴィニアが放った風魔法で、海面に大きな竜巻が現れ、水を吸い上げていく。
船に居る俺たちを猛烈な風が襲って来るので、石の壁を生み出し、船とユーリたちを守る。
「……≪隔離≫」
「ミオ! ありがとう、助かったよ」
「これくらいお安い御用なのじゃが……一体何があったのじゃ? ラヴィニアは水魔法の使い手だと思っておったのじゃが、風の魔法も使えたのじゃな?」
「正直言って、よく分からないんだ。ラヴィニアの様子もおかしいし」
「ふむ。どれ、少し見てみるのじゃ。……とはいえ、この風が止むまで待つのじゃ」
ラヴィニアが生み出した竜巻が、海水を周囲に撒き散らすので、水と風で台風の中に居るようだ。
ミオが結界を張ってくくれなければ、翼のあるユーリは飛ばされていたかもしれないな。
それから暫くすると、竜巻が掻き消え、元の穏やかな海に戻ったのだが……レヴィアが深いところに居たからか、それとも単純に身体が大きいからか、はたまた魔力の差か。幸いな事に、先程の水魔法と同じで、レヴィアは一切のダメージを受けていないようだ。
「まだ……まだよ。まだ足りないわ。もっと……もっと強い力を!」
「む!? これは……何かに魅了されておるな。天后の時と同じ様な状態かもしれぬのじゃ」
「天后……って、最初に襲って来た時か。確か、玄武の力を悪用されているという話だったな」
「うむ。だが、今回は玄武の力という感じはせぬな。おそらく、玄武を利用している者……おそらく、風を司る魔族だと思うのじゃ」
時々話に出て来る、風の四天王とかいう奴か。
この近くに風の四天王が居るのか、それとも風を司るというだけあって、広範囲に力が及ぶのかはわからないが、いずれにせよラヴィニアを留めなければ。
「≪リフレッシュ≫」
「力。海中に居る、リヴァイアサンにも届く力を……」
ラヴィニアに治癒魔法をかけたのだが、先程と言動が変わらない。
どうやら中位の治癒魔法では治らないようだ。
「アレックス、何をしておるのじゃ!」
「何って、ラヴィニアに治癒魔法を……」
「違うであろう! 天后を正気に戻した時はどのようにしたのじゃ? 我はその時は、その場に居なかったが同じ事をすれば良いのではないのか?」
「同じ……って、アレか。仕方ない……ミオ、ユーリを頼む」
ミオにユーリの目を塞いでもらうと、海に飛び込み、ラヴィニアが茫然としている場所まで泳いで行く。
あともう少しでラヴィニアのところへ辿り着くというところで、
「……そうだわ! 風じゃないわ! 雷よ! それなら、きっとリヴァイアサンにも効くはず!」
恐ろしい事を言いだした。
確かに、海に向かって雷魔法を放てば、レヴィアにも効くかもしれない。
だが、そこまで距離が離れていないところに、ラヴィニア自身が居るんだぞ!?
海中での雷魔法なんて、絶対にダメだろ!
レヴィアに攻撃どころか、自殺行為に他ならない!
「……≪ライトニング……」
「ラヴィニアっ! ダメだっ! やめるんだぁぁぁっ!」
「ボル……」
「ラヴィニアっ!」
魔法が発動するギリギリのところで間に合い、ラヴィニアの口を塞ぐ。
危なかった。ラヴィニアがもっと船から離れていたら、絶対に間に合わなかったな。
俺の手で口を塞がれたままのラヴィニアが、何か言いたげに悲しそうな顔で俺を見つめてくる。
ラヴィニアの目を見つめながら、ゆっくり手を離すと、
「あなた。どうして、悪魔の味方をするの?」
ラヴィニアが泣きそうになっている。
「ラヴィニア。レヴィアは悪魔ではないよ。竜人族だから、強い魔力と強靭な体力があるけどさ」
「でも、間違いないの! 私はリヴァイアサンに連れ去られたんだからっ! だから≪ライトニ……」
「待て。とりあえず、海の中で雷魔法を使うのはダメだ! ラヴィニアだけでなく、船の上に居るミオやプルムまで危ないだろ」
再びラヴィニアの口を塞いで魔法を止める。
やっぱりミオが言う通りの手段しかないか。
とはいえ、ラヴィニアを無理矢理船の上に連れて行こうとすれば、俺から離れてしまうかもしれない。
水中でラヴィニアに逃げられたら、再び俺が捕まえる事は不可能だ。
という訳で、悪く思わないで欲しいのだが、
「≪閉鎖≫と≪分身≫」
「えっ!? あ、あなた!? まさかこの人数で一気に私を!? う、嬉しいけど……か、身体がもつのかしら」
結界魔法で逃げられないようにして、分身たちでラヴィニアを囲む事になってしまった。
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