第564話 空の事は天使族に相談

 レヴィアが自分で言っていた通り、一度通った場所だからか、もの凄い速さで進んで行く。

 これなら、昼までには第一魔族領を確認出来るのではないだろうか。

 夢の中で女神様から玄武を助けるように言われ、早数日。玄武をかなり待たせる事になってしまったな。


「あ、アレックス様ー! 早くも、ティーウィーが見えて来たよー!」

「そうだな。レヴィアに感謝だな」

「という訳で、ちょっとウチの家に寄って行こうよー! お母さんもきっと喜ぶと思うからー!」


 ルクレツィアが海獺族の家に行こうと言うが、今は本当に時間が惜しいからな。

 悪いが、またの機会にしてもらおう。

 何となくだが、海獺族の村へ寄ったら大変な事になってしまう気がするし。

 少し残念そうなルクレツィアに謝りつつ、あっという間に北の大陸の最北端にある灯台が見えてきた。


「皆、空に何か浮かんでないか? 人魚族たちの話によると、この辺りに何かが浮かんでいるはずなんだ」


 そう言って、俺自身も空を見上げ、周囲を見渡してみる。

 だが、ちょっと天気が悪く、黒い雲が広がるだけで何も見当たらない。


「この辺りのはずなのだが……空に浮いているというだけあって、どこか他の場所へ移動してしまったのか?」

「パパー! ユーリがみてくるー!」

「いや、待ってくれ。本当に魔族領が空にあったとしたら、ユーリ一人で空を見に行くのは危険だ」

「そうかなー?」

「あぁ。ユーリが空へ飛んで行くのは、最後の手段だな」


 引き続き、皆で空を見上げながら、レヴィアに灯台へ向かってもらう。

 だが、真上どころか遠くを見渡しても。空には何もないのはどういう事だ?

 とりあえず、灯台の近くに船を泊め、皆で陸地へ。


「うーん。ラヴィニアの母親は本当の事を言っていたように思えるんだが……」

「あなた。お母さんの話は、数十年前の話よ? 同じ場所に留まり続けているとは限らないんじゃないかしら?」

「なるほど。だが、空を探すというのはかなり難しいんだよな……あ、そうだ。皆、少し待っていてくれ」


 空の事なら天使族に聞いてみるべきだろうと思い、逢瀬スキルを使用って、ユーディットの所へ。


「……ユーディット。聞こえるか?」

「あれ? この声は……アレックス!? あ、エリーが時々言っている、見えないアレックスが来てくれるスキルだねー?」

「あぁ。その通りなんだが……って、どうして裸なんだ?」

「少し暑いから、お風呂へ入ろうかと思って……そうだ。アレックス。せっかくだし、分身してよー。見えないままだと、何だか喋り難いよー」

「え? ……は、話すだけだよな?」

「うん。あ、でも少しだけ待ってね。場所を変えるから」


 そう言って、ユーディットが何処かへ移動する。

 俺は自由に視界を動かせないが、見える範囲から推測すると、話していた通り風呂へ移動しているようだ。


「お待たせー! アレックスー、分身してー」

「わかった。≪分身≫」


 ユーディットの要望で分身スキルを使用すると、早速本題へ。


「ユーディット。玄武の居場所が……第一魔族領の場所がわかったんだ」

「そうなの!? じゃあ、もうすぐ帰って来てくれるー? アレックスに会えなくて、寂しいよー!」

「そうだな。もう少しで帰れると思うのだが、その空に浮かぶ第一魔族領が見つけられないんだ。どうやら、空へ上がったのが数十年前らしくて」

「うーん。陸地? 島? わかんないけど、宙に浮かせるだけでも凄い魔力を要すると思うし、風で流されるっていう可能性はあり得るかも」

「なるほど。そう言った場合……っ!?」

「アレックスー? どうしたのー? ……あ! もー、仕方ないなー。私が出してあげるねー」


 そう言って、ユーディットが分身たちのを……ち、違うんだ!

 これは、北の大陸に居る俺の本体も分身をしているから……くっ! この感じはトゥーリアとレヴィアだな? ……ミオとラヴィニアに、トゥーリアやプルムまで混ざりだしたっ!


「ふー。今日はちょっと暑いわねー……って、アレックス!? ユーディットにだけズルい! というか、昨日来なかったでしょ!」

「あっ! 旦那様、私もお願いしたいです」

「お兄さん。乳搾りもお願ーい!」


 こっちはこっちで、エリー、メイリン、ボルシチの三人が風呂へ来てしまい、ユーディットにされている事を見られてしまった。


「おっ! これは……材料を集めるチャンスやないかっ!」

「マスター! 大至急、魔力の補給をお願いします」

「お兄さん! ニナも混ぜてーっ!」


 あぁぁ、レイとソフィにニナ……いや、それだけではなく、フィーネにテレーゼ、ステラにノーラやイネスまで。

 と、とんでもないタイミングで逢瀬スキルを使ってしまった。

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