第565話 暴走する分身たち

「……すまない、イネス。助けてくれ……俺の腰を」

「アレックスさん、大丈夫ですか? ひとまず、分身さんにマッサージをしてあげれば、アレックスさんの腰にしているのと同じ効果なんですよね?」

「あぁ、そのはずだ。頼むよ」

「わかりま……んっ! う、嬉しいですけど、そんなに激しくしたら、マッサージが……っ!」


 逢瀬スキルの分身に対して、イネスにマッサージをお願いしているのだが、他の分身がよりによってマッサージしようとしてくれているイネスに……頼むから、イネスの邪魔をしないでくれ、俺の分身よ。

 だが逢瀬スキルは意識しか飛ばせないため、分身を解くとマッサージもしてもらえないという困った状況で……イネスっ! 気を失わないでくれ……イネスーっ!

 イネスが気を失ってしまったので、マッサージは諦め、ユーディットと第一魔族領の話をしようと思うのだが、


「ふふっ、アレックスが昨日来てくれなかったから、みんな凄い事になってるねー! 私も、分身とはいえアレックスと一緒に居られるから、少し嬉しいなー」

「ユーディット。それより、さっきの……」

「うん。わかってるよー。アレックスは、ここが好きだよねー。あ、ニナー! ノーラ! 三人で一緒にしよー!」


 ユーディットがニナとノーラと共に……いや、ユーディットは妊娠しているのだから、無理しないでくれ!


「アレックスさん。ニナちゃんやノーラちゃんばっかり……大人な私は嫌いですか? 泣いちゃいますよ?」

「あー! アレックスったら、ステラを泣かしたー!」

「いや、俺は決してそんな事は……って、ステラはそっちの分身と始めたんだが。とりあえず、全員俺の大切な妻だから、誰かを除け者にするような事はないからな」


 ステラとエリーが口を尖らせたが、その直後にステラは自ら……ほ、程々にな。

 その一方でユーディットは、ニナとノーラの三人で、どういう風に触ると一番反応するのかと言いながら、三人掛かりで楽しそうに分身の……というか俺のアレを弄り倒している。

 そんな事より話を聞いてもらいたいのだが、その前にバケツをもったレイが現れた。


「アレックスはん。確か今は北の大陸に居るんやろ?」

「あぁ、そうだが……どうかしたのか?」

「あのな。出来たらでえーんやけど、海獺族っていう獣人に出会えたら、教えて欲しいねん。なんでも、女性の汗とか唾液に催淫効果のある成分を含むらしくて、植物のマンドラゴラ、動物の海獺族って言われるくらいに、薬師には有名な伝説の研究対象やねん」


 海獺族……トゥーリアやルクレツィアの体液は、マンドラゴラ並にヤバいという事らしいが、それは身をもって知っている。

 というか、こうしてレイと話して居る今も、本体側で海獺族の二人が暴走しているからな。

 そのせいで、いつもよりもアレの量が多くて、イネスが気絶したり、ニナたちが大量に出るアレで遊んでいる訳だし。

 とりあえず、嫌な予感しかしないので、海獺族の事は一旦伏せておくか。


「ら、海獺族の事はあまり知らないが、ラージ・アバロンという巨大な貝なら食べたが」

「おぉー! 滋養強壮効果がある有名な貝やん! なんでも、海獺族は先祖代々毎日アバロンを食べているから、催淫効果があると言われるくらい、凄い貝やで。帰って来る時には、是非一つお土産に欲しいなー」

「……そ、そんなに凄い貝なのか」

「せやでー。今日のアレックスはんも凄くて、いつもより沢山アレが出てるけど、それを食べたらもっと凄い事になるんとちゃうかなー?」


 流石はレイと言うべきか。まさにその通りだったよ。


「ラージ・アバロンを持ち帰れるかはわからないが、ラヴィニアの……人魚族の村へ行った時に、必ず妊娠する薬というのがあったから、ラヴィニアが許可してくれたら、それが手土産になるかもな」

「えぇーっ! 凄い! そんな薬があるのっ!? 僕も欲しいーっ!」

「待ってよー! そんなのボクも欲しいよーっ! お兄ちゃんの子供が欲しいもん!」


 レイに人魚族の秘薬の事を話したら、離れた場所に居たはずのコルネリアとノーラが走って来た。

 コルネリアもノーラも身体が小さいから、いろいろと心配なのだが。


「いや、その薬は人魚族にしか効果がないんだ……って、違うんだ。俺は、空に浮かぶ第一魔族領への行き方を相談したいんだよ」


 人魚族にしか効かないと言う話をしたとたん、コルネリアたちが残念そうにしたのだが、


「――っ! 空……浮かぶ。ま、マスター! 何か……何かとても重要な事を思い出しそうですっ!」


 一人で俺の分身二体を相手にしているソフィが、突然大きな声を上げた。

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