第465話 共同戦線
「え? 勝負!? リディアとヴィクトリアが?」
「はい! お腹にアレックスさんの子供がいる以上、妻になるなとは言えません。ですが、彼女が第一夫人というのであれば、せめて私が! 私が第一婦人として旦那様に愛でていただきたいのです!」
ヴィクトリアがリディアに向き直り、ビシッと指を突き付ける。
俺は本当に順序なんて付けていないのだが、ヴィクトリアにとっては重要な事のようだ。
「しかし、リディアは身重だから、勝負というのは……」
何とか話し合いで収まらないだろうかと思っていると、
「ふっ! 話は聞かせてもらったわ! ここは、ご主人様の第二婦人である私、マジックナイトのモニカが、おめでたエルフに代わって勝負を受けて立つっ!」
テントにモニカが入って来た。
「乳女さん!? あの、実は……」
「皆まで言わなくても良いわよ。ご主人様の子を授かった貴女は、無理せず安静にしていなさい。ずっと待ち望んでいたのでしょ。貴女に代わって、私がこの女に身の程を弁えさせてあげるわっ!」
「ほほう。アレックスさんの第二夫人ね。胸は大きいみたいだけど、身の程を知るのはどちらかしらねっ!」
モニカの申し出で、身重のリディアに勝負をさせないというのはありがたいが、そもそも争いをやめてくれないだろうか。
……いや、ヴィクトリアの感じからすると無理か。
「とりあえず、今から勝負という訳にはいかないし、リディアが作ってくれた食事を食べたいので、一旦戻っても良いだろうか」
「えぇっ!? も、もう少しだけ! もう少しで……ありがとうございますっ! ……こほん。その、アレックスさんの家には、私とヴィクトリアも行って宜しいですよね?」
「あー、まぁ構わないと思うが……って、すまない。誰か肩を貸してくれないだろうか。実は腰が痛過ぎて動けないんだ」
モニカとヴィクトリアに両側から支えられて立ち上がったのだが、今も兎耳族たちが全力でしているので、アレが止まらない。
これでは移動どころでは無いと思ったのだが、
「結衣にお任せー! 結衣なら軽いから平気だよねっ!」
影から結衣が現れ、俺に抱きついてきた。
「こ、こんなに幼い少女が……凄い。どうして入るんだ?」
「私は、この少女が何処から現れたのかが気になるのですが」
ヴィクトリアとジェシカが不思議そうにしているが、それはさて置き、無事にレヴィアたちの所へと戻って来た。
「アレックスー! 探したの!」
「すまないな、レヴィア。ちょっと色々とあったんだ」
「アレックスよ。何やら見知らぬ者が二人増えて居るが……まぁ良いのじゃ。早く食事を済ませるのじゃ」
レヴィアやミオ、それにラヴィニアやユーリたちに謝り、先ずは夕食に。
ただ、夕食を食べている間も机の下に結衣が潜っていて……レヴィアが物凄く羨ましそうにしているが、リディアが怒るから先ずは食事な。
「ごちそうさまでした。リディア、いつもありがとう」
「あ、いえ……お粗末様です」
リディアが食器などを片付けようとするが、何故か元気が無いように思えるのは何故だろうか。
その一方で、モニカが勢い良く立ち上がる。
「ご主人様が食事を終えた……さぁ、ヴィクトリアとやら! 勝負だっ!」
「えっ!? 今から? 乳女とやら……流石に一晩しっかり休んでからでないと、我らアマゾネスの戦いはこなせないぞ?」
「え? どちらがご主人様をより満足させられるという勝負なのでは?」
待った! 勝負って、そういう勝負なのかっ!? というか、今日はダメだっ!
ここまで歩いて来るのにも、二人に支えてもらったし、今も椅子に座っているのがやっとなんだが。
それに何より、ヴィクトリアとジェシカの表情が呆気にとられている。
モニカの言うような勝負方法なんて、想像もしていなかったはずだ。というか、俺だって予想出来なかったんだが。
「なるほど……わかった。その勝負、受けて立とう! 私はアレックスさんの妻になるのだ! 誰にも負ける訳にはいかないっ!」
「その勝負、私も参加しまよう。私はアレックスさんの妻ではなく愛人だが、する事は同じ。ヴィクトリアを支援するっ!」
「ふっ! 貴女たち……ご主人様は、屋外でするのがお好きなのだが、真似出来るかな?」
……って、モニカは何を言っているんだよっ!
そんな趣味は無いからなっ!?
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