第577話 近況報告?

「あっ! そろそろ時間かも! アレックス! 公平に、ちゃんとうちの教会にも来てよね! アレックスが来てくれないから、うちの修道女たちに禁断症状が出ちゃいそうなんだから!」

「いや、禁断症状って……」


 どうやらミオの召喚スキルの時間が切れる頃らしく、六合が早口で慌てだす。


「あと、アレックスは海獺族に会った?」

「え? あぁ、海獺族が住む島へ行ったが、どうかしたのか?」

「なるほどねー。催淫っていうスキルが増えていたから。海獺族といえば、女性が一人居たら、周囲の者が発情するって聞くし、もしかして……と思って」


 さ、催淫!? それはつまり、周囲の者がそういう気分になってしまうという事なのか!?

 魅了スキルが強化されたような感じだと、凄く困るのだが。

 は、発動条件は!? 魅了スキルのように、何もしなくてもそうなる訳ではないんだよな!?


「それから……っ!」

「何だ!? まだ何かあるのか!? 六合……六合ーっ!」


 本当に時間切れが来たようで、何か言いかけていた六合の姿がかき消える。

 催淫スキルの話は衝撃的だったが……いや、知らない方が良い気もするので、一旦忘れよう。


「アレックスよ。もう一度式神召喚で六合を呼ぶのか? 我もアレックスから沢山魔力を貰ったから、連続でも大丈夫なのじゃ」

「いや、やめておこう。俺たちの目的は玄武を助ける事だからな」


 また違う事で時間を費やしてしまったので、本来の目的を果たす為に分身を解除し、ついて来ていたチェルシーやアマゾネスの女性たちも含めて皆で天を仰ぐ。

 だが、大勢で見ても空は変わらず……うん。数人居れば十分だよな。


「どうすべきだろうか。レヴィアが元気になったし、また船で移動した方が……」

「アレックス。でも、あの魔力弾を放った後は、船を引く元気はない。潮に流されても良いなら……」

「それはそれで困るな。……そうだ。確か、北の大陸に何人か人形たちが分散しているだろ? それぞれの空の状況を聞いてもらおう」


 という訳でユーリに頼み、メイリン経由で北の大陸に来ている人形たちに聞いてもらう事に。


「えっとねー。まずは、おんせんをつくっている、ニースちゃんだけどー……ララムバむらのひとたちが、パパがいつ、きてくれるのかって」

「……げ、玄武を助け次第向かおう」

「わかったー。つたえておくねー」


 ……ん? いや、ニースの近況報告……にすらなっていないが、俺が聞きたいのは、ララムバ村から見える空の様子なんだが。


「ユーリ。黒い雲が近くに無いか聞いてもらいたいんだが」

「あ、えっとねー……しろいくも、ばっかりだってー! あと、そろそろ、おんせんができるよーって」

「そうか。わかった。さっきも言ったが、出来るだけ早く向かうようにするよ」


 ララムバ村の辺りには、現状黒い雲は無いのか。

 しかし、流石ニナの人形だな。仕事が早い。

 確か、ヴィクトリアとプルムの分裂体が三体程居たんだったかな。

 ……プルムの分裂も増えすぎて、直近では二十六体目だっただろうか。

 いや、さっきの六合が来ていた時に、二十七体目が現れていたな。


「つぎはねー……ノアちゃん。いまはー、ノーラさんのおうちさがしで、にしのほうに、いるんだってー!」

「あぁ、モニカとフェリーチェと共に行動しているからな」

「それでねー、おおきくて、くろいくもがあるってー! でも、あめはふっていないって」

「……もしかして、それじゃないのか!? 正確な場所はわかるか?」

「まってねー。えっと、いまはワブルトンのまちっていう、ところにいるってー」


 ワブルトンの街? それは一体、どこだ?

 フェリーチェの住んでいたムササビ耳族の村の近くの山にある、リス耳族の村へ向かったけど、そこはノーラの故郷ではなかったんだよな?

 そこから、別のリス耳族の村へ向かったはずなんだが。


「チェルシー。ワブルトンの街という場所を知っているか?」

「え……知っていますけど、メチャクチャ遠いですよ? ここから遥か北西の方角です」

「なるほど。それなら、やはり天后に船を転移させてもらった方が良さそうだな」


 ただの散歩になってしまった……と言いながら、いろいろあったんだが、一先ずアマゾネスの村へ戻る事にした。

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