第576話 式神召喚

 ひとまず天后の力で、北の大陸最北端にある灯台の場所へ……と思ったのだが、船を引くレヴィアが疲れているし、まずは陸地から行ける範囲で黒い雲を探す事にした。


「街や村が無い方角へ行きたいのですか? それなら……西でしょうか。確か、ここから西へ行っても、平地が続くだけだったかと」

「わかった。悪いが、ラヴィニアはこの村で待っていてくれ」

「陸地を行くと言うのでは仕方ありませんね。しかも、今回はレヴィアさんも抱きかかえられるようですし」


 ジェシカに教えてもらい、西へ向かう事に。

 ただ、ラヴィニアには留守番を頼むし、船で移動する訳でも海に近い場所でもないので、今回はレヴィアとミオ、プルムとユーリの五人だけで行く事にした。

 プルムが変形してラヴィニアを連れて行く事も出来なくは無いが、あれは移動速度が遅くなってしまうからな。


「では、行ってくる。陽が落ちるまでには戻るよ」

「アレックスさん、行ってらっしゃーい!」

「アレックス様ー! 早く戻ってくてくださいねー!」


 リディアやルクレツィアたちに見送られ、真っすぐ西へ。

 ちなみに、レヴィアは先程の魔法の反動か、まだぐったりしている。

 あまり無理をさせない方が良いのかもしれないな。

 なので、小さな黒い雲や、薄い雲は無視して、これは……という雲を見つけたら、レヴィアにお願いしよう。


「……って、黒い雲がないな」

「ふむ。周囲に街や村は無いし、ここは……我の出番なのじゃ」

「いや、ミオの召喚スキルは出来れば避けたいのだが」

「何を言っておるのじゃ。あれだけ沢山、アレックスから魔力をもらったのじゃ。今なら、きっと良い結果となる気がするのじゃ」

「いや、前もそう言っていただろ」


 それで、結果的に現れたのが騰蛇とシェイリーだったんだよな。

 いや、二人共空を飛べるから、今ならどちらが来てもアリか。

 まぁ騰蛇は空を飛ぶ時は、全身が紅く燃える蛇になるから俺しか乗れないが。


「うーん。じゃあ、一回だけ頼むか」

「うむ。流石はアレックスなのじゃ。良い判断なのじゃ。早速……≪六壬≫」


 ミオが召喚スキルを使用すると、うさぎ耳の幼い女の子が現れた。


「ん? あ、ミオ! 久しぶりな気がするねー……って、アレックス! ちょっと! 私たちを放置し過ぎじゃない!?」

「六合! いや、見ての通り今は違う大陸に居て……」

「そんなのどうでも良いから、早速分身するの! 今まで全然してくれていないから、ミオたちと公平となるように、沢山してもらうからねっ!」


 そう言って、六合が強制的に俺の分身スキルを発動させる。


「ふふ、これは面白い事になったのじゃ。結界を張るから、魔物は気にしなくて良いのじゃ」

「あと、そっちでコソコソしている者もおいで。公平にアレックスの愛を注いでもらいましょう」


 六合が見ている方に目をやると、チェルシーがアマゾネスの女性たち数人を連れて、こっそりついて来ていた。


「チェルシー? どうして、ここに?」

「えへへ。きっとこういう事になるかなーって思って。アレックス様、私たちにも宜しくお願いしまーす!」


 チェルシーたちが合流した所でミオが結界を張り、身を隠す物が何もない平地で、十数人での……どうして、こうなってしまうのか。


「……ん。アレックスので、魔力が回復する。……そうだ。さっきの魔法を放つ度にしてくれたら、レヴィアたん元気になる」

「公平に……アレックスは、ちゃんと全員を満足させないとダメなんだからねっ!? あ、何か雰囲気が違うアレックスの分身? が居るんだ。そっちのアレックスも、私を抱きなさーいっ!」

「あ、待って! アレクシーは私専用というか、私の子供みたいな存在で……あぁぁっ! 私の目の前でアレクシーが……ふ、不思議。何故か興奮しちゃうんだけど、どういう感情なの!?」


 突きを得意とするランサーで、チェルシーの愛から生まれたアレクシーが、チェルシーの事を気にしつつも、六合に激しく……チェルシーが身悶えているから、程々にしてやってくれないだろうか。

 とりあえず、レヴィアの魔力が回復したらしく、元気になったのは良かったのだが、やはりミオの式神召喚スキルは、誰が来るかわからないので、多用すべきではないな。

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