挿話58 困惑するシノビのツバキ

「うぅっ、サクラ姉のバカ……」


 昨晩、少年少女たちが身体を重ね合わせている所を見て、「あの男にメイリン様やサクラ姉が再び襲われるのでは!?」と思って様子を見に行ったら、いつの間にか拘束されていた。

 いつの間にか眠っていたので、何らかの魔法か薬を使われたのだと思うのだが、妖術使いの男がそこまで多数のスキルを持っているとは考えにくい。


「あっ! そうか。あの妖術使いの男は、人を洗脳状態にするのだから、あの女性たちの誰かが眠らせるスキルを使ったのか」


 待てよ。となると、ツバキ姉のさっきの言動は、既に洗脳されているが故に仕方の無い事。

 つまり私は、あの男の手のひらの上で踊らされていただけという事か。


「悔しい! でも……どうして私を、すんなりと逃がしてくれたの? 眠らされた上に拘束された状態だったから、いくらでも妖術が掛けられたはずなのに」


 まさか、既に何かされた後とか!?

 だけど、身体に変な事は起こっていないように思える。

 強いて言うなら、空腹……というくらいか。


 ……周囲を見渡すと、畑が広がっており、様々な野菜が立派に育っている。

 少しくらい採ってもバレないだろうが……いや、私はシノビであって、盗賊ではない。

 自然に生えている植物ならともかく、これらはどう見ても人の手が加えられている。

 とりあえず、昨日見つけた風呂の水……は危険な気がするので、そこに流れ込む水で腹を満たす為に移動すると、


「あ、いたいた。お姉さん。お腹空いているでしょ? はい、これ」


 昨晩、私に声を掛けてきた少年が、小さな箱を差し出してきた。


「これは?」

「パンに野菜を挟んだ物と、お水だよ。一緒に食べよ」

「えっ!? な、何を……はっ! ま、まさか毒が……」

「毒……って、そんな物を入れたら食べられないよ。そこの小屋を使って良いから、中でゆっくり食べようよ」

「な、ならば、小屋に入った途端に、私を襲うつもりか!?」

「襲わないってば。そうだ、サラー! こっちに来てー!」


 少年が誰かを呼ぶと、


「どうしたんだ?」

「お姉さんと一緒に朝ごはんを食べようと思って」

「うむ。元よりそのつもりだ。任務……こほん。では、そこの小屋へ」


 昨日見た、サクラ姉の娘が現れたっ!


「あ……サクラ姉の……」

「如何にも。私はサラ。母の名はサクラだ」

「僕はアレイレブ。よろしくね」


 サラと名乗る少女が平然とサクラ姉を母だと言い、少しショックを受けている内に、アレイレブに手を引かれて、小屋の中へ。

 小さな部屋の床には何かの毛皮が敷かれていて、その上にアレイレブが持ってきていた箱を置き、蓋を開ける。

 中にはアレイレブが言った通り、パンが三人分と、木で出来たコップが三つあり、それぞれ液体が注がれていた。


「お姉さんから好きなのを取ってよ。さっきも言った通り、変な物は何も入っていないし、僕たちから先に食べても良いからさ」


 正直、他人から出された食べ物を口にするなど、師匠に怒られそうな気もするが、今回の条件であれば大丈夫……だろう。

 実際、二人が先にパンを口にし……うん、問題無さそうなので、心の中で師匠に言い訳しつつ、いただく。……普通に美味しかった。


「あの、どうして私に施しを?」

「壁の外は見た?」

「うん……何も無かった」

「ここは第四魔族領っていう場所で、本当に何もない場所なんだよ。そこに父さんたちが村を作ったんだ。ここに来た以上は、お姉さんも仲間として……」

「それは無理だ。私はメイリン様とサクラ姉を助けなければならない」


 アレイレブが私の事を仲間と言ってきたけれど、あの男を父と呼ぶ者と親しくする事は出来ない。

 そう思い、食事の恩は感じつつも、ここから離れようとしたところで、サラが口を開く。


「分かった。母の妹であるツバキ殿は私の叔母にあたる。父の弱点を教えよう」

「叔母ね。オバさんって呼ばれると、ショックが……って、弱点!?」

「うむ。父は房中術に弱い。昨晩見ていたと思うが、私たちが毎晩相手を変えて、交わっているのは、父を倒す為に房中術の修行をしているからなのだ」

「そ、そんな理由が……」

「うむ。父を倒そうとしているツバキ殿にも、ぜひ房中術の修行をしてもらいたい」


 そう言って、突然サラがアレイレブのズボンを脱がす。


「えっ!? ちょっ、サラ……」

「大丈夫だ。私に任せろ……ほら、ツバキ殿。よく見ておくのだ。先ず、殿方のここをこうして……」

「サラ、いきなりそんな……」

「ほら。アレイレブも、ツバキ殿に見られて興奮しているようだ。いつもより大きくなっている」


 ちょっと待って! いきなり目の前で……えぇっ!? 口で……そんな所までっ!? そんなの未だ習ってないっ!

 あ……サラがアレを……凄いっ!


「ふふっ。最近はチャージスキルというのを身につけ、更に凄くなったからな……こほん。さぁツバキ殿。こっちへ」


 気付けば、いつの間にかサラが私の手を取り、アレイレブのを……え、ウソ! 待って。硬くて大きくて……す、凄いっ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る