第806話 ニナの両親
「おぉ、貴方がニナを助けてくださった、アレックス殿か! 本当にありがとう! 心から礼を言わせて欲しい」
「アレックスさん! ニナを……ニナを本当にありがとうございます!」
エマやマリーナたちには外で待っていてもらい、ニナに連れられて家に入ると、全くニナに似ていないドワーフの男性と、ニナのお姉さんのように見える女性から礼を言われる。
ただ、ドワーフ族の女性が幼く見えるだけで、姉ではなく母親だと紹介されたが。
「あのねー、パパ、ママ。ニナはお兄さんと結婚するのー」
「うむ。ワシは反対せんぞ」
「ママも、ニナがそうしたいなら構わないと思うわ」
俺はニナの両親と初対面なのだが、何故か即断してもらえた。
もちろん俺としては、責任を取るつもりなので、全く問題ないのだが。
「しかしニナ。一つ問題があってな」
「えっ!? 問題って? ニナとお兄さんの間に問題なんてないよー? 子供だって作れるもん!」
「こどっ……こほん。そういう事ではなく、ニナの従姉妹……ワシの兄の娘が、数日前に攫われてしまってな。今は間が悪いというか、もう少し日を空けてあげて欲しいのだよ」
「従姉妹って……まさかララお姉ちゃん!?」
ニナの叫び声を聞いて、父親が苦々しく首肯し、母親は悲しそうに顔を背ける。
「あの、先程ニナの友人から聞いたのですが、それは海の向こう側から来ている人間たちに攫われたのでしょうか」
「おそらく……」
「なるほど。ニナ、ご両親と少し待っていてくれるか? ちょっと行って、助け出して来るよ」
「え? ちょ、ちょっと待ってくだされ。我々としては非常にありがたい話だが、相手は海の向こうに居るのだが」
「地上に上がれば見える場所なんですよね? でしたら、大丈夫だと思います。俺やニナの仲間に、頼れる者が居るので」
もちろんレヴィアの事なのだが、きっと頼めば運んでくれると思う。
万が一断られたとしても、見えているくらいの場所なので、泳いでいくとか、船に乗ってオールで漕いで行くとか、最悪ロープで俺と結んだ丸太などを全力で投げれば、それに引っ張られて飛んでいけないだろうか。
「だ、だが、危険では?」
「別の人間の街で、人身売買をしている組織を潰した事もあるので、きっと大丈夫ですよ」
「そ、そうなの……か? ニナの婿殿が不幸な事になって、せっかく戻って来たニナが泣くような事にならないのであれば……」
「えぇ、余程の事が無い限り、大丈夫かと」
ドラゴンや神族が相手なら厳しいが、人間相手ならよっぽどでない限り遅れはとならいだろう。
大半の状態異常も効かないから、罠の類も心配要らないしな。
「わかった……しかし、今日はもう遅い。とりあえず、うちへ泊って行ってくれないか? ニナと一緒に話を聞きたいのだ」
「親子水入らずに、水を差してしまいませんか?」
「ニナも妻も酒を飲まないからな。いつかニナが結婚すると言った時に、その相手と飲み交わすのが夢だったんだよ」
「わかりました。では、ニナが寝るまでお付き合いさせていただきます」
「あぁ、頼むよ。ニナが眠くなったら、ワシも二人の邪魔はするまい。孫の顔も早くみたいものだしな」
あれ? ニナが眠たそうにしたら、俺も一緒に就寝するという意味だったのだが、変に取らえられていないだろうか。
流石に、ニナの実家で変な事を……と思ったが、ノーラやラヴィニアの実家ではやらかしまくっていたので、何も言えず、黙っておく事に。
「あ……外で待っているマリーナたちはどうしようか」
「あー……結構、大勢いるよねー? マリーナちゃんやモニーちゃん、ノーラちゃんくらいならニナのベッドで一緒に寝られるかも」
「では、他のメンバーは宿に泊まってもらおうか」
一旦外に出てマリーナたちに事情を伝え、ニナが故郷へ帰ってきたのだからと、納得してもらった。
後は、国の外で待っているミオとフョークラだが……中に入れて貰えるだろうか。
ひとまず、ミオたちに事情を話し、ドワーフ族の兵士にも事情を伝える。
「そこのダークエルフは先程盛大にやらかしている。そちらの獣人族の女性は問題ないが、ダメだ」
「そ、そんなぁぁぁっ! こ、こんな何もない所で放置ですかっ!? アレックス様。せめて分身を一体出してください! それなら、私はここで待っております」
「えぇ……何とかなりませんか?」
兵士とフョークラと俺……三者で話し合いを行った結果……
「では、私は地上に居ますねー! えへへー、アレックス様を一晩占有出来るなんて、幸せですぅ」
兵士が全く折れてくれないのと、ダークエルフであるフョークラは、木がある場所なら屋外で過ごしても全く問題ないという事で、俺の分身一体を連れて、教えてもらった地上への道へ向かって行った。
未だにネーヴやドロシーと一緒に居る分身も攻められ続けているし、これからニナの両親と一緒に過ごすというのに、大丈夫だろうか。
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