第805話 ニナの幼馴染のエマ
「ニナー! こっちこっちー!」
「エマ、待って……わぁ! 本当に帰って来たんだ!」
幼馴染だというエマにニナがついて行き、足を止めて周囲を見渡す。
奴隷解放スキルで二番目に来てくれたニナを、やっと故郷へ帰す事が出来た。
次は可能であれば、最初に来てくれたリディアを帰してあげたいところだ。
「お兄さーんっ! ありがとうっ! ニナ……帰って来られたよーっ!」
「あぁ、良かったな」
「えぇっ!? ニナっ!? え、えっと、その人間族の男性と、そういう関係なのっ!?」
涙目のニナが走り寄って来たかと思うと、全力で抱きついてきて、エマが恥ずかしそうに顔を両手で覆う。
その一方で、最初に俺が話し掛けたドワーフの女性兵士が、不思議そうに首を傾げる。
「……あの男性が抱きかかえている青髪の幼女は娘ではないのか? 物凄く懐いているが」
「アレックスさんは、奴隷にされてしまった方を何人も助けていらっしゃるので」
「なるほど。では、あの背中に抱きついている幼女もか? ずっと首を舐め続けているが……」
「……そ、そんな感じです」
グレイスが対応してくれているが……モニーは俺の背中で何をしているんだよ。
確かに変な感じはしていたが、ずっとネーヴたちだと思っていた。
ずっとメチャクチャにされ続けているからな。
……というか、そろそろ分身を消しても良いだろうか。
結衣も大変だろうし、ニナのご両親にも挨拶したいし。
「あっ! お兄さん! ここっ! ここがニナの家なのっ! パパーっ! ママーっ!」
「えっと、アレックスさん……でしたよね? ニナを助けてくださって、本当にありがとうございます。ニナが悪い人間族に連れ去られたのは、私のせいで……本当にありがとうございます」
ニナが家の中に駆けて行く一方で、エマが深々と頭を下げる。
話を聞くと、このニナの故郷であるドワーフの国モザビーは、西大陸の南西にあり、海のすぐそばなのだとか。
その海の向こう側、目視で見える程の距離のところに人間の国があり、時々そこから人間族がやって来ては、ドワーフを連れ去って行くらしい。
そんな事が起こっているのに、エマがニナを誘って地上へ遊びに行ってしまい、ニナが連れ去られてしまったのだとか。
「……という事は、その海の向こう側に、ニナ以外にもドワーフ族が連れ去られているというのか?」
「……はい」
「同じ人間族として、本当に申し訳ない。わかった……ちょっと、そこへ行ってドワーフ族を探してみるよ」
「えぇっ!? そ、そんなつもりで話した訳ではないんです! ニナを助けてくれただけでも、十分過ぎるし……」
「心配するな。こう見えて、俺……というか、俺たちは結構強いんだ」
「あ、ありがとうございますっ!」
モニカを元に戻す為にハヤアキツヒメを探さなければならないが、そこで何か情報が得られるかもしれないし、今の話を聞いて放置も出来ない。
俺に任せろと、エマの頭を撫で……
「ひゃぅっ!」
小さく悲鳴を上げられてしまった。
「あ、ニナといる時の癖が……す、すまない」
「い、いえ。私もニナと同い年ですし、そろそろ男性にも慣れないとダメなので……む、むしろもっとお願いしますっ!」
「頭を撫でるくらいなら……」
エマの頭を撫でていると、マリーナとモニーが俺から降りて、その後ろに並ぶ。
「アレックスー。マリもー」
「父上。私にもお願い致します」
「お兄ちゃん。ボクもー!」
その後ろにノーラも並び、一人ずつ頭を撫でていく事に。
うん。ほのぼのしていて、良いと思う。
だが、その一方で、
「……あの殺伐としていたエマが、懐いただとっ!? わ、私は指導係として、どれだけフレンドリーに接しようとしても、ダメだったのに」
「……あの幼馴染が帰ってきたからでは? いつもと表情が全然違うし」
「……あの人間族の男が、女性をたらし込むスキル持ちかも。私も、ちょっと気になる。何ていうか、雄の香りがする」
エマに馴れ馴れしくし過ぎてしまったのだろうか。
ドワーフ族の兵士たちが、俺を見ながらヒソヒソと話している。
だがエマはニナと同い年だと言うし、変な事にはならないはず……たぶん。
「お兄さーん! 来てー! ニナのパパとママを紹介するー!」
タイミング良くニナが呼びに来てくれたので、兵士たちから逃げるようにしてニナの家に行く事にした。
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