第804話 怯えるフョークラ
「ダークエルフだと!? くっ! 戦争を仕掛けてきたのか!」
「王女に連絡を!」
ドワーフ族の兵士たちがフョークラを見て、異様な反応を見せているが、当然ながら俺たちに戦う意志など無い。
何とかして誤解を解かなければ。
「アレックス様! 幸い、行手を阻んでいるのは女性ばかりです。アレックス様のお力で全員服従させましょう!」
「くっ! ダークエルフが何か魔法を使ってくるぞ! 全員警戒せよ!」
フョークラが変な事を言うから、兵士たちがますます警戒し始めたっ!
「待ってくれ! 俺たちは仲間を故郷に送り届けに来ただけなんだ!」
「そうだよー! ニナは家に帰って来ただけなんだよー!」
「皆、騙されるな! きっとダークエルフの罠だっ!」
俺とニナが勘違いだと主張するが、聞いてもらえない。
とはいえ、フョークラが言う手段は本当に最後の手段というか、選択肢から除外すべき方法だ。
もちろん戦闘も行わず、何とか理解してもらうしかない。
だが、どうやって……と悩んでいると、一人の兵士が前に出てきた。
「待って! もしかして……ニナ!? ニナ・デュルフェ!?」
「そうだけど……あーっ! エマっ! エマーっ!」
前に出て来た女性兵士とニナが抱き合い、リーダー格の兵士が困惑している。
だが、戦意が徐々に失われているのが見てとれるし、これはもう俺が何もしなくても戦闘を回避出来そうだな。
「えぇ……。せっかく、アレックス様のご褒美……もとい、お力を目にする事が出来るかと思いましたのに。アレックス様、とりあえず友好を示す為に分身致しませんか?」
「いや、フョークラが何を言っているか意味がわからないのだが」
「簡単な事です。人魚族を服従させたように、ドワーフ族も……んぐっ」
とりあえず、フョークラが喋ると、上手く行くものも行かなくなる気がしたので口を塞ぎ、成り行きを見守る。
「ニナ、無事で良かった……」
「うん。お兄さん……あの人間族のアレックスさんがニナを助けてくれた上に、ここまで連れてきてくれたんだよー!」
「隊長! この子……ニナは私の幼馴染で親友なんです。かなり前に、行方不明になっていたのですが、以前と何一つ変わる事なく、無事に戻って来ております!」
エマと呼ばれていたニナと同じくらい幼いドワーフの女性兵士がリーダー格の女性に話し掛ける。
それが決定打となったのか、リーダー格の女性が武器を下ろす。
「わかった。そうまで言うのであれば、信じよう。ただし、そこのダークエルフ! お前はダメだ!」
「えぇっ!? な、何の話ですかっ!?」
「そこの人間族の男は、確かに戦意が一切なかった。だがお前は違う。殺意や戦意は感じられないが、我々を煽っていたし、何かこうドス黒い何かを感じるのだ!」
「い、言いがかりですよぉー! 私はただ、アレックス様のアレが欲しかっただけで……」
「アレとは何だ? 何を言っているのだ?」
「もちろん、アレはアレですよー!」
マズい。今はまだ、ウラヤンカダの村に残した分身がネーヴやドロシーを満足させようと戦っている。
当然、今も結衣が頑張ってくれている訳で、フョークラに変な事をされると、マズい事になりかねない!
「フョークラよ。ここは一旦落ち着くのじゃ。気持ちは分かるが、空気は読まねばならぬのじゃ。今はニナのターン。少し待つのじゃ」
「うぅ、そんな……って、アレックス様のアレの事しか考えてなかったけど、待って! 貴女のその魔力って、まさか伝説の九尾……」
「≪閉鎖≫……アレックスよ。フョークラは我がみておくから、今はニナを故郷に返してやるがよいのじゃ。そちらのドワーフの兵たちも、すまなかったな。我が責任をもって、このダークエルフは見張っておこう」
「ひ、ひぃっ! 竜人族のレヴィアさんだけではなかったの!? こんなに凄い人まで……」
何故かフョークラが物凄く怯えているが、ミオの結界を見てドワーフ族の兵士たちも納得してくれているようだ。
なので、フョークラとミオには少し待っていてもらい、残りのメンバーでニナの故郷であるモザビーへ入国する事にした。
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