第203話 エルフと間違えられた獣人
翌朝。朝早くからヌーッティさんの案内で、湖南の村から湖東の村へ移動し、そこの若者、ペルットゥさんを紹介された。
「お、オラが東の森を探索してたら、木々の間から、チラッと動く茶色い物が見えたんだぁ」
「なるほど。俺たちをそこへ案内してもらえないだろうか」
「構わないだぁ」
何が起こるか分からないので、俺とペルットゥさんを先頭に、パラディンの防御スキルを使用して進む。
暫く魔物を倒しながら森の中を歩くと、
「ここだぁ。オラはここで、三日前に見たんだぁ」
ペルットゥさんが足を止め、エルフの目撃地点に着いたと教えてくれた。
「どっちへ行ったかは分かるか?」
「東の方へ行ったんだぁ」
「分かった。後は、こちらで探す事にするよ。ペルットゥさんは一人で帰れるかい?」
「もちろんだぁ。それより、アンタたちの方が大丈夫なのかぁ?」
ペルットゥさんの言葉で、リディアに目を向けると、
「大丈夫ですよ。認識阻害や、方向感覚を狂わせる魔法などが掛かっていない普通の森ですので」
問題無しと返ってきた。
「……自信たっぷりみたいだから、大丈夫かもしれねぇが、オラはこの先に進んだ事がないぞぉ?」
「本当に大丈夫ですよ。エルフにとって、森は庭みたいなものですから」
「エルフ……? アンタが?」
「はい。この尖った耳が何よりの証拠。私はエルフですよ?」
「尖った耳……そ、そうかぁ。じゃあ、オラはこの辺で」
ペルットゥさんが慌てて帰っていったので、とりあえず俺たちは東へ進む事に。
ただ……先程のペルットゥさんの反応見る限り、この先に居るのはエルフではなさそうだな。
リディアがエルフだと言って驚いた様子だったし。
「ところでアレックスさん。この森の中で、何を探すのでしょうか」
「……あー、詳しく言ってなかったが、先程のペルットゥさんが、森の中で人を見たらしい。なので、村や街が無いかと思ってさ」
「分かりました。先程もお話しした通り、リザードマンの村へ戻る道は完璧ですので、ご心配なく」
エルフではないにしても、人を見た事に違いはないはずなので、そのまま探索を続行する事にしたのだが、
「アレックス様! 足下に罠が!」
ツバキの警告の直後、踏み出した右足の下が崩れ……落とし穴だ!
「んーっ! ……ふぅ。良かった、旦那様にケガがなくて」
「ユーディット、ありがとう」
「えへへー。じゃあ、ご褒美のチューしてー」
「構わないが、昨日あれだけ……んぐっ」
「ふふっ、やったー! 旦那様とチューしちゃったー」
深めの穴に落下しそうになった所を、文字通り飛んで来たユーディットに引き上げられ、助けてもらった。
……ツキの前で思いっきりキスされてしまったが、もう今更なので、気にしない事に。
「アレックス様。おそらくこれは、動物や魔物を捕らえる罠かと」
「リザードマンたちは、こっちへ来ないと行っていたし、この罠を仕掛けた人物が居るという訳か」
「おそらく。一先ず、他にも罠がある可能性がありますので、ここからは私が先頭を進みますね」
ツバキに先頭を代わってもらい、森の中を東へ進んで行くのだが……とにかく罠が多い。
それらの罠を、ツバキが事前に発見し、無効化して進んでいると、
「ちょっと! アンタたちでしょ! ウチらの罠を壊しているのはっ!」
頭から大きな耳の生えた、獣人の女性が現れた。
なるほど。ペルットゥさんは、この大きな耳を見てエルフだと思った訳か。
知っていれば全然違うと一目でわかるが、エルフの特徴を大きな耳としか認識していなければ、まぁ……仕方ない気がしなくもない。
「アレックス様。もしや、あのリザードマンは……」
「あぁ、そういう事だろうな」
ツバキと共に目の前の獣人の耳を見ていると、
「何なの!? ウチの耳ばっかり見て! 兎耳がそんなに珍し……って、待って! 男! 若い男っ!」
「な、何だ!?」
「ふふふ……よくも、ウチらの罠をことごとく壊し、食料を得られなくしてくれたわね。本来ならアンタたちから食料を巻き上げる所だけど、そこの男がついて来たら、許してあげるわっ!」
俺に気付いた獣人が近寄って来て、俺の手を取る。
「アレックス様……」
「待て。おそらく、彼女たちの村に連れて行ってくれるのだろう。友好的な関係を築きたいし、こちらが罠を解除していったのも事実だ。とりあえず、行って来るよ」
「待って! 私も行くー!」
結局、全員でついて行く事になり、暫く歩いて行くと、木々の中に小さな家が見えた。
その家の中に通されると、小さな兎耳の女の子がお茶を出してくれる。
「ふふっ、兎耳族の集落へようこそ。改めて名乗らせもらうけど、ウチがこの集落のリーダー、パメラよっ!」
「アレックスだ。ここから西にある壁の上で暮らしている」
とりあえず、パメラたちが食料を得る為に仕掛けていた罠を解除した事を謝罪し、この付近の情報を得る為の話を……と思ったのだが、突然下半身から変な感覚が。
ま、待ってくれ。こんなタイミングで、分身に変な事をしないでくれぇぇぇっ!
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