第201話 やらかしたアレックス

「あ、あの……アレックス様。歩きにくそうですので、宜しければ私がお相手を致しますが」


 ツバキが俺を見て、顔を赤らめながら話し掛けて来た。


「待って下さい。そういう事なら、私もします」

「私もするよー! だって、大好きな旦那様の為だもん」


 その言葉を聞いて、リディアとユーディットが抱きついて来て……違う。違うんだっ!

 これは俺が変な事を考えている訳ではなく……ても、分身から伝わってくる感覚は非常にマズくて、既に暴発しかかっている。

 しかも、この三人は俺が限界に近い事をしっかり理解していて、


「リディア。勝手にズボンを……くっ!」

「…………ふふっ、間に合いましたね。アレックスさんのを溢すのは勿体ないですからね」

「リディア殿、ずるいです! 私だって飲みたかったのに!」


 リディアが満足そうに微笑み、ツバキが口を尖らせる。

 ……人形たちの住む東エリアからは既に離れており、誰も居ない東の休憩所へと続く道だからまだ良かったが、とにかく先を急がなくては。

 だが、分身から伝わって来る感覚は……これは複数人居るなっ!?

 分身を解除しても良いのだが、新たに分身を出した時は近くにしか出せないからボルシチが困ってしまう。

 自動行動を解除して、分身を俺の意志で動かせば、誰が分身に変な事をしているかが分かり、注意も出来ると思うが……遠隔でそういう事をした事がないから、本当に出来るかどうかは怪しい。

 最悪、自動行動だけが解除されて、再度自動行動を設定出来なければ、結局同じ事だからな。

 つまり、分身の周りに居る者たちの良心に期待しつつ、俺が耐えるしかないのか。


「リディア……あ、ありがとう。けど、先に進まないと……」

「でも、まだ苦しそうですよ? 気を失わなくなりましたし、もう少し……」

「いや、先に進まなければ。エル……こほん。リザードマンの村の奥を調査したいんだ」

「でしたら……こう致しましょう」


 突然、服を脱ぎ捨てたリディアが俺に抱きつき、立ったまま抱っこする形で……って、何を!?


「アレックスさんなら、このまま歩けますよね? そうすれば、リザードマンの村にも移動出来ますし、苦しそうなアレも……んっ! さ、さぁ参りましょう」


 それを見たツバキが、俺のズボンを完全に脱がし、まるで荷物を運ぶような形でリディアを……本当にこのまま進むのかっ!?


「つ、次は私もお願い致します」

「私もー! 何だか楽しそうだもん」

「……一歩進む度に、奥が突かれて、凄いですぅぅぅ」


 結局、代わる代わる交代しながら、何とか東の休憩所へ辿り着いたのだが、元よりかなりの距離があるのと、移動中ずっとこの状態だったので、

 ここで風呂へ入ってから再び移動する事に。


「……噂には聞いておりましたが、父上は本当に凄いのですね」


 しまった。気配を消して居たからか、それとも俺が大変な状況だったからか、すっかり失念していたが、ツバキの人形ツキが居たんだった!

 八歳くらいの幼いツキと一緒に風呂へ入っているし、そもそも三人としている所を普通に見られていたし……大失敗だ。

 サクラの人形のように、混ざりたいと言われなかったのが不幸中の幸いだが。


「そうだ。ツキ……向こうに居る分身に誰か変な事をしていなかったか分からないか?」

「最初にレイ殿が材料が欲しいと仰り、ミオ殿やモニカ殿が協力すると仰ったようです」


 レイ……いや、いろいろ作ってくれているのは知っているのだが、分身だけしか居ない時はやめるように言っておかないとな。


「ですが、向こうはある程度したら満足され、父上の分身は普通に作業をされておりましたよ?」

「え? ……という事は、途中からは分身の影響ではなかったという事か!?」

「はい。作物を採集している分身のアレが常に大きいし、時々何かが出ているので、向こうに居る方々が、羨ましいとか、帰ってきたら同じ事をしてもらうとか、色々仰っていたそうですが」


 しまったぁぁぁっ!

 ツキの話を聞いて、風呂から出た後は移動に専念し、何とかリザードマンの村へ到着した。

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