第11章 新たな地でスローライフ

第439話 謎の声と助けられたヘレナ

 シーナ国の闇ギルドを潰したお礼にと、港町クワラドの郊外にプライベートビーチ付きの屋敷を貰ったのだが、そのせいで皆がはしゃぎ過ぎて困る。

 自警団の女性やシャドウ・ウルフも居るので、セキュリティとしては問題無いと思っているのだが、流石に浜辺でするのはどうなのだろうか。

 まぁ一旦昼食にするという事で、分身を解除したら全員屋敷に戻って来てくれたが。

 そんな事を考えていると、


『……サマ。ハマ……オンナ、タヲレ……』


 謎の声が聞こえて来た。


「クララ……今、誰かの片言の声が聞こえたか?」

「え? いいえ。誰がアレックス様の夜伽のお相手をするかという、メイドさんたちの争いの声なら聞こえていますが。……そんな事で争わなくても、アレックス様なら全員お相手出来るんですけどね」


 いや、クララは何を言っているんだよ。……って、メイドさんたちに意識を向けたら、本当に言い争っていた。

 それはさておき、さっきの声は何だ? 奴隷解放のクールタイムを告げる声でもないようだし。


『ゴシュジン……サマ。ハマベ……キテ。オンナ、タオレテル……』


 ご主人様。浜辺来て。女倒れてる……か。


「って、ダメだろっ!」

「えぇっ!? アレックス様っ!? どうされたのですかっ!?」


 あの言葉が誰の言葉かは分からないが、慌てて席を立ってビーチへ行くと……ボロ布を纏っただけの、半裸の女性が倒れていた。


「おい、大丈夫か!? ≪ミドル・ヒール≫」

「……あっ! 人……それも男。……よかった、シャドウ・ウルフじゃない」

「何を言っているんだ? それより、大丈夫か!?」


 見た所、怪我などは無さそうだが……女性のお腹がくぅーっと鳴る。

 近くには木の板が落ちてあり、女性は全身びしょ濡れ。

 まさか、この板で海を渡って来たのか!?


「すまない。抱きかかえるぞ。家に連れて行く。中には食事もベッドもあるから」

「助かる……し、しかも私を軽々とお姫様抱っこだと!? ……結婚しよう!」


 何を言っているか分からないが、放っておくわけにもいかず、屋敷へ連れて行き、先ずは女性をベッドへ寝かせる。

 メイドさんたちに言って、食べ易そうな食事を用意してもらい……あ、関係無しに何でも食べるのか。

 それなりの量を食べると、女性が深々と頭を下げてきた。


「いやー、すまない。本当に助かった。私はヘレナって言うんだ」

「俺はアレックスだ。一体、どうして海に居たんだ?」

「いや、それが……なんだ」

「ん? すまない。よく聞き取れなかったから、もう一度言ってくれないか?」

「え? だから……なんだってば」


 どういう事だ?

 何か言おうとしているようだし、口も思いっきり開いているのに、言葉が聞こえない。


「アレックス様。この女性……奴隷だったのかと。奴隷紋がありますし、定められた秘密を他人に漏らせない状態かと」


 そう言って、クララがヘレナの胸元を指さすと、確かに不思議な模様がある。

 そういえばケイトにも、こんな感じの模様があった気がするな。……いつの間にか消えていたが。


「そうか。リディアたちは奴隷解放スキルで来たから、奴隷紋が消えているのか」

「奴隷解放スキル? そんなのがあるのかい?」

「あぁ。だが、残念ながら使用条件があるのと、使用対象を俺が決められないんだ」

「ふぅん。まぁでも、さっきの事以外は普通に聞こえているんだろ? 私は戦士のジョブを授かっている。頼む! 雑用でも警備でも、夜の相手でも何でも良い! 給料も要らないから、ここに居させてください! 正直、行き場がないんです!」

「それなら、心配しなくて良い。そうだな。ここで警備に当たってもらえれば良いのだが……おっと!」


 この屋敷に住んで良いと言ったのが嬉しかったのか、いきなり抱きついて来た。


「ありがとう! アレックスは命の恩人だっ! と、とりあえず、私に出来るお礼が、か、身体で払うくらいしかなくて……」

「お待ちください。ヘレナさん……ご主人様には私たちが居ます。あと、そういう事をする前にお風呂へ参りましょう。ヘレナさんは海に浸かっていたからか、潮の香りが凄いので。ご主人様も、今ので身体に香りが移っているかと。お身体を洗いますので、お風呂へお願い致します」


 いや、別に俺はそんなの気にしない……って、どうしてクララもウキウキしているんだ!?

 あと、身体は自分で洗える……いや、どうしてメイドさんたち全員で裸に!?

 というか、屋敷に来た女性全員が来ているのはどうしてだーっ!

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