第271話 ご立腹のミオ
「シェイリー。神族って……」
「うむ。神だ」
神……って、随分簡単に言うが凄い存在なのでは?
「そんなの関係無いんよ! ウチらのアレックスとの時間を邪魔したのは許せないんよ!」
「ヴァレーリエ!? 待て! ……くっ!」
ヴァレーリエがブリジットの側に居る半透明の存在…… メトトゥシカムイの元へ飛んで行き、巨大な火炎弾を放つ。
だが、そのメトトゥシカムイが腕を振るうと、ヴァレーリエの放った火炎弾がフッとかき消える。
「くっ……だったら、こうなんよっ!」
ヴァレーリエがドラゴンの姿のまま、飛行状態でメトトゥシカムイに突撃し……弾き飛ばされたっ!?
「ヴァレーリエ! ……大丈夫か!? ≪ミドル・ヒール≫!」
「アレックス、ありがとう。ウチは大丈夫なんよ。それより今の衝撃で、アレックスがウチの中に出してくれた物がちょっと出ちゃったんよ。後で、もう一回出して欲しいんよ」
吹き飛ばされた衝撃で、ドラゴンの姿から元に戻ってしまったヴァレーリエだが、一先ず無事のようだ。
「≪閉鎖≫」
何処からともなくミオの声が聞こえ、大きなメトトゥシカムイを結界で囲う。
これで動けなくなるはずだ。
だが突然、結界にヒビが入り……砕け散った!?
「む……我の本気の結界を破るのか。厄介なのじゃ」
依然としてミオの姿が見えず、声だけが聞こえるのだが……少し落胆しているようにも思える。
しかし、それにしてもだ。
そもそもメトトゥシカムイというのは何者なんだ?
「シェイリー。メトトゥシカムイは神族だという話なんだろ? どうして、神様が現れたりするんだ?」
「む? 何を言う。我も神族だぞ? 神獣と呼ばれておるが。そもそも神族など、そこら中に居るのだ」
「そ、そうなのか」
「うむ。だが、宗派というか、神の種族というべきか、メトトゥシカムイとやらは、我とは全く異なる神族だ。本来の力の我であれば、余裕で追い払えるのだがな……」
つまり、今のシェイリーでは、簡単に追い払える相手では無いという事か。
しかし……メトトゥシカムイから攻撃してくる様子は無いな。
ヴァレーリエもミオも、攻撃しようとして反撃されただけで……そういえば、元はブリジットがヴァレーリエに吹き飛ばされ、その後シャドウ・ウルフに襲われて現れた。
ブリジットは、ヴァレーリエの事を幻だと思っていたから認識していなかったけど、シャドウ・ウルフに襲われて、死を感じて現れた……とか、そんな感じなのか?
ブリジット本人は……気絶しているのか。
という事は、もしかして……
「む? アレックス……行くのか? ならば我も……」
「いや、大丈夫だ。少し考えがあるから、任せてくれ」
「そうか。アレックスなら、大丈夫であろう。ただ、念の為に側で控えさせてもらうが」
思いついたある事を試そうと思い、人の姿に戻ったシェイリーと、沢山尻尾が生えた謎の女性と共に、ブリジットの元へ。
「二人はここで待っていてくれ」
ある程度近付いたところで、一人でブリジットの元へ向かうと……思った通り、メトトゥシカムイは向かってこない。
やはり反撃専用というか、ブリジットに敵意を持つ者に反応するようだ。
「≪ミドル・ヒール≫」
先ずは、ブリジットが最初にヴァレーリエの尻尾で受けたダメージを回復させ、
「≪リフレッシュ≫」
気絶から目覚めさせる。
すると、思った通り半透明だったメトトゥシカムイの姿が消えていった。
「ん……あ、あれ!? シャドウ・ウルフに囲まれていたはずなのに、生きている? アンタが私を助けたのか?」
「いや、ブリジットを助けたのはメトトゥシカムイという神族だそうだ」
「なるほど。熊耳族の村を出ても、護ってくださったのか。……さて、アレックスよ。改めて勝負……って、きゅ、九尾の狐っ!? お、お前は一体何者なんだ!? その後ろの二人は何なんだっ!」
「何だと言われても、一人は親しい女性だが、もう一人は……誰なんだろうな?」
いや、締まらなくて申し訳ないのだが、この背の高い、綺麗な女性が誰かわからないんだよ。
シェイリーと仲が良さそうではあるが。
「あ、アレックスよ! 何故、我の事を不思議そうに見るのじゃ!? 酷いのじゃ!」
「え? その声は……ミオなのか!? でも、背が高くて胸があって……」
「あ、しまった。怒りで本気モードになっておったのを忘れておったのじゃ。いや、まだ許してはおらぬがな」
そう言って、尻尾の沢山生えた女性がミオの姿に変わる。
ミオは凄く綺麗な女性の姿なのに、どうして普段は子供の姿なんだ?
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