第635話 アレックスたちの大移動
「とりあえず、方角的には北……だよな? ただ、真っすぐ北なのか、北東なのか北西なのかは分からないが」
「パパー。とりあえず、一番近い街か村がないか見てみるねー」
「あぁ、頼むよ。……≪ディボーション≫」
空高くへ舞い上がり、周囲を見てくれるというユーリにパラディンの防御スキルを使用し、暫く待っていると、ふよふよとユーリが戻って来た。
「あのねー、あっち、こっちと、そっち……だいたい、同じくらいの距離にそれぞれ村があるよー」
「どれがララムバ村かは……まぁ分かる訳がないよな。全部違う可能性だってあるし」
「アレックス。とりあえず、真ん中で良いんじゃないか? 違っても、そこなら一番ダメージが小さいし」
ザシャの意見を採用し、とりあえず真ん中……真っすぐ北に進んだ所にある村を目指して進む事に。
「アレックス様。では、こちらの船は私が収納致しますね」
「あぁ頼む……って、凄いな。十人乗れる船が消えるなんて」
「アレックス様に褒めていただけましたー! えへへ、嬉しいですー!」
グレイスの空間収納魔法に感心していると、陸地に上がったラヴィニアが助けを求めてきた。
「あ、貴方……助けて」
「す、すまない」
「ふぅ……せっかく空間収納が使える方が居るのですから、何か大きな桶を持って来てもらえば良かったですね。
ラヴィニアを抱きかかえて事なきを得たものの、指摘通りで、何か用意しておけば良かったな。
とりあえず北の村へ行く事に決めたので、皆で歩き出したのだが……うん。遠い。
このまま歩き続けて行くと、いつ到着するか分からない。
「ジャーダやジョヴァンナが居ると速いんだけどな」
「馬耳族の女性ですよね? あの女性におんぶされながら、アレックス様に突かれるのは本当に素晴らしかったです」
前に六合の教会から、ウラヤンカダの村まで走るジャーダにおんぶされて移動した事を、俺とグレイスが思い出したのだが、こうも感想が違うのは何故だろうか。
「そうだ! あの時のように、俺が抱えて走れば良いのか! …… ≪分身≫」
分身を人数分出すと、それぞれを抱きかかえて走りだす。
うん。これなら、かなり違うな。
ただ、分身が運ぶ重さも共有するので、八人を抱きかかえているのだが、魔物を食べたりして腕力が上がっているからか、問題なく走れる。
「すごーい! パパ、はやーい!」
ユーリは分身ではなく、ラヴィニアを抱きかかえる俺の首にしがみついているが、楽しそうで何よりだ。
そう思っていたのだが、突然変な感覚に襲われる。
何だ!? まるでアレが……って、ちょっと待った!
「ミオ!? 何をしているんだっ!」
「む? もちろんナニなのじゃ……おほぉっ!」
「いや、そういう目的ではなくて、移動の為に……くっ! これは……グレイスもかっ!」
よく見れば、ミオに続いてグレイス、プルム、レヴィアと……いや、続くなよっ!
「あ、アレックス様ぁ……この移動、最高ですっ!」
「アレックスさん! プルムも、これ好きー!」
「……アレックス。ご褒美、嬉しい」
更に、周囲を見てザシャとシアーシャも真似をして……って、ザシャは抱きかかえなくても、普通に俺より速く走れそうなんだが。
そしてシアーシャは、どうして幼女の姿になるんだっ!? ……あ、俺のアレから魔力を摂取して、若返り過ぎるんだっけ。
「あ、貴方。私も……皆さんだけ、ズルいです」
「いや、元々そういう事の為に抱きかかえた訳ではないんだが」
「私だけダメなんですか? 泣いちゃいますよ? それに、貴方の……もう大変な事になっているでしょ? ほら……ね?」
いや、俺の背中にはユーリが居るんだってば。
「あ、パパー。ユーリはなにもみてないし、なにもきこえないから、だいじょーぶだよー」
「ほら、ユーリちゃんもそう言っていますし」
「そんな訳ないって……あっ! ラヴィニアっ!」
結局、ユーリを除く全員を走りながら……どうしてこうなった。
暫く……というか、かなり走ると、ようやく村が見えてきた。
「よし、皆。そろそろ歩くから分身を解除するぞ……って、気絶してるっ!?」
「……アレックス。レヴィアたんはギリギリ大丈夫……んっ!」
「あ、アレックス……妻にしてください」
レヴィアがかろうじて意識を保ち、ザシャが妻にしてくれと……いや、元より責任は取るつもりだが、何故今なんだっ!?
ひとまず、ユーリと一緒に神聖魔法で皆を起こし、分身を解除すると、
「アレックス様。どうして分身をもう一体出してくれなかったのでしょうか」
影から泣き出しそうな表情の結衣が現れ、涙目を向けられてしまった。
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