第212話 全力攻撃
「なっ……竜人族というのは、ドラゴンに姿を変えられるのか」
「ふんっ! 今更、奴隷にしてくださいって言っても、もう遅いし! ざこ種族の人間なんて、レッドドラゴンの姿になったウチのブレスで一発だかんねっ!」
ミオの結界を破壊し、大きな赤いドラゴンの姿となった少女は、そう言って大きく息を吸い込む。
「≪ディボーション≫」
「≪隔離≫」
その間にパラディンの上位スキルで皆を守り、ミオが防御の結界を張る。
その直後、ドラゴンの口から激しい炎が吐き出され、周囲が真っ赤に染まる。
だが、ミオの結界のおかげか、少しも熱くない。
「ふふっ! その結界は、さっきウチが破ったし! 同じ結界でウチのブレスが防げる訳ないんよ。やっぱり、ざこ種族……って、どうして無傷なんよっ!」
「我の結界を破ったのは、お主ではなく、ソフィの無茶苦茶な威力の攻撃なのじゃ。お主の力程度では、我の結界は破れぬのじゃ」
「な、何言ってんの!? ウチは竜人族なんよ!? 最強の種族なんよ!?」
「ふっ……レッドドラゴン如きが何を言っておるのじゃ。エンシェントドラゴン辺りならともかく、お主ではアレックスの敵ではないのじゃ」
そこで、俺を出すのかよ。
いやまぁ、俺もこのドラゴン相手なら負ける気はしないけどさ。
「アレックス……って、そこの人間の事!? バカにするのも大概に……」
「マスターへの攻撃により、敵と判断しました。魔導砲……発射」
「なっ!? ≪ドラゴン・シールド≫」
止める間もなくソフィが白い光の砲撃を放ち、ドラゴンが身体の前に半透明の盾を作り出す。
白い光が盾にぶつかり、分散された細い光がドラゴンの身体から逸れて、後方へと流れていく。
「くっ……硬い!」
「ざ、ざこ種族なんかに……」
暫く膠着状態が続き、魔力が尽きたのか、ソフィの砲撃が止まり、
「ウチの、勝ち……」
大きなドラゴンが最初に出会った少女の姿へ戻ると、その場に倒れた。
「モニカ! 以前にソフィへ飲ませたアレは今あるか!?」
「はい! こちらです! 昨晩、沢山ぶっかけていただいたので、記念に取っておきました」
アレをビンに保存するのはどうなのかと思いつつ、前もこれで助けられたので、倒れたソフィを抱きかかえると、すぐに飲ませる。
だが、意識はあるようだが、かなり辛そうだ。
「マスター……今飲ませていただいた物は薄過ぎて、エネルギーに変換出来ません。どうか、マスターの本物のアレを直接……」
「う、兎耳族が月影の魔法で作り出した俺のアレではダメなのか」
「アレックス。そんな事を言っている場合ではないのじゃ! 早く分身するのじゃ! ソフィが動けなくなるのじゃ!」
姿かたちは俺とそっくりなのだが、何かが違うのだろう。
ミオの言う通りで、ソフィが動けなくなる前に魔力を補充する必要があるか。
だが、あの少女は……意識を失っているようだし、そもそもソフィが優先か。
とにかく早くアレを出して飲まさなければならないので、ソフィを抱きかかえたまま分身を使うと、
「おぉぉ……来るのじゃっ! 凄まじいのじゃぁぁぁっ!」
「こ、これはソフィ殿を助ける為! あくまで人助けであって、私が楽しんで居る訳では……っ!」
「ご主人様、ご主人様、ご主人様ぁぁぁっ! 魔法で作り出された分身に心を惑わされてしまった、愚かな私をお許しくださいぃぃぃっ!」
すぐさまミオとサクラとモニカが分身に襲い掛かる。
だが三人のおかげで、分身たちと感覚を共有している俺は、早くもアレが臨戦態勢になっているので、倒れて動けないソフィへすぐに魔力補給を行う事が出来る状態に……って、ソフィはがっつかないでくれ!
まだ手足が動かないらしく、首から上だけを動かし、口の中で俺のを転がすようにして……待て! 三人が頑張っている事もあって、すぐに出るから! もう出るから慌てないでくれっ! ……というか、もう無理だっ!
ソフィが飲み足りないとでも言うように、俺のアレから一切離れないのだが、その間にミオがツバキと交代し、ユーディットはひたすら俺にキスを求めてきたり、抱きついてきたりしていると、
「マスター! ありがとうございます。活動可能レベルまで魔力が回復いたしました」
何度もアレを飲んだソフィが回復し、起き上がる。
だが、
「では次は我の番なのじゃ」
「ダメーっ! 次は私だもん! ずっと待ってたんだからー!」
「父上、私は混ぜていただけないのでしょうか」
ミオやユーディットが……というか誰も離れてくれなかった。
今更だけど、サクラの人形サラが見ているし、そろそろ落ち着いてくれよ。
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