第766話 魔族領攻略の対策

「おとーんっ! 大丈夫やった!? なんか、ずっとザシャはんがヤバいヤバいって……」

「あぁ、大丈夫だ。ただ、ちょっと作戦会議が必要だけどな」


 魔族領を一歩出ると、あの重苦しい感じが無くなり、レミが抱きついてきた。

 それから、ザシャが心配そうな表情を浮かべて近付いてくる。


「アレックス。何かは分からないけど、ヤバそうな魔力をずっと感じていたんだ。何か居なかったか?」

「それについては、戻りながら説明するよ」


 イベール国の門へ戻りながら、魔族領の中の話をザシャとレミに共有する。


「つまり、聖属性の付与が必須なのと、アレックスの盾の修理に、何故か攻撃してくる白虎をどうするか考えないといけないのか」

「あぁ。聖水はモニカに頑張ってもらうとして、盾はニナに依頼。あと、魔族領にいる魔族の情報収集だな」


 レイスが大量にいた事と、墓場という事から、アンデッドが多いというのは間違いないだろう。

 聖属性が有効なので、俺が有利でな相手ではあるのだが、物理攻撃が効かないというのが辛い。


「……アレックスよ。我は白虎が炎の攻撃を仕掛けてきた事が気になるのじゃ」

「そういえば……そうだったな。白虎は火が苦手なんだよな?」

「うむ。だが、あの白虎の気配は本物じゃった。だから、尚更解せぬのじゃ」


 納得いかないといった表情のミオと話していると、イベールの門へ辿り着く。


「すまない。先程、魔族領へ向かった者だ。ここを開けてもらえないだろうか」

「山」


 ……山? 何の事だ……あ。確か合言葉を決めていたな。

 いろいろあって、すっかり忘れていたが。


「鉄だ」

「酒」

「えっ? そんな言葉は決めていなかったが」

「ふむ。引っかからないあたり、本物のようだな」


 そう言って、中から兵士が門を開けてくれたのだが、事前に決めていないやり取りは勘弁してもらえないだろうか。


「で、首尾はどうだったのだ?」

「良くは無いな。ただ、偵察へ行った甲斐があって、練るべき対策は分かったが」


 ドワーフの女性兵士と少し話し、トロッコへ。

 疲れからか、重い腕でトロッコを走らせると、レミが何かを思い付いたらしく、頭を上げる。


「せや! おとん……聖水がめっちゃ沢山要るんやろ?」

「あぁ。もしかして、レミやレイは聖水を作れるのか?」

「いや、ウチやレイおかんはあくまで薬を作る事が出来る訳で、聖水みたいなんは無理や。けどな、そこに居るモニカはんは、おしっ……アレが聖水になるんやろ?」

「あぁ。そうだが……」

「それやったらウチに任せてや! 飲むだけで聖水が止まらへんくなる利尿剤を作れるで。バケツ一杯分くらいの聖水やったら、これで一発や!」


 いや、聖水が大量に必要なのはその通りだが、それは流石にモニカの身体に負担が大きくないか?

 とはいえ、あの魔族領にはレミが入れないので、ユーリを連れて行く事も出来ないし、身重のユーディットを連れて行くのは論外なので、必然的にモニカ頼みになってしまうのだが。


「ふむ。ご主人様の為なら、薬の一つや二つ、飲んでみせましょう」

「お、おい。モニカ? 気持ちはありがたいが、無茶はしないで欲しいのだが」

「何を仰いますか! そう言いながら、ご主人様は無理をなさるではありませんか。私がご主人様の為に身体を張れるのなら、本望です!」

「モニカ……」


 モニカがやる気になっているので、水を差すのも悪いか。

 だが、脱水症状とかにならない程度でやめてもらいたいが。


「……ところでレミ殿。私には聖水を出す方法がもう一つあるのだが、そっちが止まらなくなる薬は無いだろうか」

「えーっと、何でそっちの聖水の方が良いんや?」

「いや、ご主人様に私の聖水を使っていただけるのであれば、私の愛が篭った液の方が興奮……もとい、そちらの方が効果が高いのだ」

「……あ、うん。愛の形は自由やしな。えぇんとちゃうかな」


 レミ……急に目が死んだが、出来ればそのモニカの依頼は断って欲しかったかもしれない。

 いやまぁ効果が高いのは本当なので、難しい所だが。

 そんな話をしている内に、イベール国へ着いたので、先ずは文献を調べてくれているニナたちと合流する事にした。

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