第372話 お風呂の攻防

 リディアの人形たちが沸かしてくれていた風呂へ入ると、早速ノーラとティナが近付いてきて……そこへレヴィアが混ざって来た。

 ノーラとティナはいつも通り、俺のそばで喋っているだけなのだが、レヴィア……おい、レヴィア。空気を読んでくれっ!

 とりあえず、今日は状態が状態なので、先に身体を洗ってから湯船に入ろうと思うのだが、


「あれ? お兄ちゃん。お湯に入らないのー?」

「あぁ、今日はいろいろあって、汚れているんだ」

「……そうかなー? そんな風には見えないけど……ちょっと甘い香りがするかな? あれ? でも皆から香る不思議な匂いも、お兄ちゃんからするー」


 ノーラがクンクンと俺の身体を嗅いでくる。

 とりあえず石鹸で身体を洗おうと思うのだが……西の宿はティナしか居ないから、石鹸が一つしか無かった。

 モニカたちも早く身体を洗って、匂いを落としてもらいたいが、待ってもらうしかないか。

 ……タバサから送ってもらう物資に、次回は石鹸を増やしてもらおう。

 そんな事を考えていると、


「あ、あれ? 今、モニカさんから白い何かが垂れたような……」

「き、気のせいだ。そうだ、ティナ。背中を洗ってあげよう。さぁ後ろを向いて、そこの椅子に腰掛けてくれ」

「良いんですか!? ぜ、是非お願いしまーす!」


 見られたくない物を見られてしまったので、ティナの目をモニカから逸らし、しゃがみ込んで小さな背中を洗う。

 この間に、モニカたちが身体を洗ってくれると良いのだが、


「えぇーっ! ずるーい! アレックス、レヴィアたんもー!」

「ボクはお兄ちゃんの背中を洗うねー!」

「では、私はご主人様の前を……あぅっ! どうして私だけ怒られるのですかっ!?」


 レヴィアも身体を洗って欲しいと訴え、ノーラが俺の背中を洗い、変な所を触ろうとしてきたモニカに冷たい目を向けておいた。

 それから、レヴィアとノーラの背中も洗う事になり、湯船の中でレヴィアとヴァレーリエが余計な事をしようとしてきたけど、何とか無事に乗り切る事が出来た……はずだ。

 ノーラがヴァレーリエの真似をして胸を押し付けてきたり、ティナがレヴィアの真似をして俺の上に座ったりしたが、大丈夫……だと思う。……きっと!

 エリーたちと交代し、全員が風呂を済ませて、皆で夕食となったので、ようやく本題へ入る事にした。


「ネーヴ。少し相談があるんだけど」

「それは、私の故郷であるエミーシ国を見に来てくれるという話だな? ここからだと、召喚魔法で呼んでもらう必要があるから、スノーウィと海産物のやり取りをする際に、手紙を記そうか」

「いや、それではなくて別の話なんだが……」

「む? 別の相談という事は……私との結婚式場か? エミーシ国で私の立場が微妙だからな。だが、良い場所は幾つか知っていて……氷で出来た古城などはどうだ? 結構人気の場所なのだが」

「……言い方を変えよう。相談というか、依頼だな。ネーヴに任せたい任務があるんだ」


 暫く変な話が続いてエリーが少しムッとしたり、隣に座るレヴィアが腕にしがみつきだしたり、ティナが顔を輝かせたり……任務という単語を出して、ようやく皆の様子が普通に戻る。


「そういう話か。アレックスの頼みであれば、何でもやろう。私は何をすれば良いのだ?」

「あぁ、シーナ国にウラヤンカダという村があるのだが、そこの村長を任せたい」


 不思議そうにするネーヴを前に、村の概要と経緯を説明する。


「ふむ。つまり、悪人共が金儲けの為に作った、非公式の村があるが、そこに住む者たちは悪い者ではないと」

「あぁ。村の長が不在で、かつ闇ギルドが関わる可能性があるから、統治と戦闘の両方が出来る者が望ましいんだ」

「なるほど。確かに私向きの話しではあるな」

「村に住む者たちは、元冒険者が多いので、鍛えれば戦う事も出来るだろう」

「そういう事なら引き受けよう。実はメイリンの人形は鍛え過ぎて、かなり強くなってしまったからな。もう教える事が無いのではないかと思っていた程だったのだ」


 ネーヴの言葉でメイリンが頷くが……そんな事になっていたのか。

 まぁ個々の能力は人形の元となった者に依存するが、人形たちはネーヴが教えた隊列や戦略を共有し、統率の取れた動きが出来るからな。

 という訳で、明日はネーヴもウラヤンカダ村へ行く事になり、皆が夕食も済ませた所で、ティナが普段使っている部屋へ。

 そして、


「≪夢見る少女≫」


 フィーネのスキルで食堂に残っていた者たちが全員眠る。

 フィーネと、スキルが効いていない俺とテレーゼ、ソフィの四人で皆を寝室へ運んで行くと、


「アレックス様。ここからはフィーネたちの時間ですよー!」

「ふふっ、お兄さーん。家では他の女性たちに譲って控え目にしたからねー。夜は本気でイかせてもらうよー!」

「マスター。沢山魔力補給をお願い致します」


 別の部屋へ連れて行かれ、いつものように一晩中三人の相手をする事になってしまった。

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