第443話 思い出したアレックス

「ふう……これ以上本気でされると、また気絶してしまいそうなので、そろそろ優しく頼む」

「シェイリーがそんな事を言うのは珍しいな」

「アレックスの分身が容赦ないからな」


 あ……六合に分身を強制鬼畜モードにされて、そのままだった。

 ニナとノーラが、二人で分身のアレを弄っていたから……あの二人と居るのは、俺と同じ動きをする影分身か。


「という訳で、アレックスのスキルの話は、このまま挿れたままで……っ! こほん。まず、あの巨人族の者から貰ったのだろうな。ゴッドハンドというスキルが増えているぞ」

「ゴッドハンド? よく分からないが、凄そうだな。攻撃力が上がっているのか?」

「うむ。凄まじい事になっていると思うぞ。我は子種が欲しいから、手では程々にしてもらいたいがな」


 シェイリーの話はどういう意味だろう。

 何にせよ、防御特化のパラディンである俺にとって、攻撃力向上は助かるな。


「あと、コスプレ……こほん。祭服のまま気を失っているプリーストからは、ブレッシングというスキルを授かっておるな」

「ブレッシング? 祝福……か?」

「うむ。非常に喜ばしいスキルで、アレの命中率というか、クリティカル率が上がるというか……要は子供が出来やすくなるスキルだ。あのプリーストも同じスキルを持っているようだから、本人が気付いていないだけで、既に子供が出来ておるかもしれぬぞ?」


 ステラが既に妊娠していたら、エリーたちと時期が被ってあまり良くないのでは?

 とはいえ、今更どうしようも出来ないのも事実だ。

 あとでステラに話を聞いてみるか。


「さて、最後に我も一番気になっている事だが……向こうの黒髪の幼女は何者だ? 我と同じような容姿で、あのようにいきなり複数人を相手に激しく……しかも、体内に不思議な魔力を持っておる上に、いつの間にか現れたのだが」

「あー、ユイの事か。実はテイムしたシャドウ・ウルフが魔族を倒し、エクストラスキルを授かって獣人になったみたいなんだ」

「な、なんと……それでか。シャドウ・ウルフの魔力と体力に、エクストラスキル。まだジョブを授かって居ない年齢だというのに……げふんげふん。いや、何でもない」


 ん? 最後に凄くマズい言葉が聞こえたような気がしたのだが、シェイリーが頑なに教えてくれない。

 重要な情報なら、流石に教えてくれるだろうし、言わないという事は気にしなくて良いという事だろう……きっと。


「あのシャドウ・ウルフから、影分身スキルを得ており、分身の数が増えたようだな」

「なるほど。流石に腰の負担が凄いので、分身スキルを抑えて……あ! そういえば、スキルを封じるマジックアイテムがあったな。玄武の力を使っているとか、何とか……」

「ほぉ、玄武か。あやつも我と共に魔王と戦った神獣だ。玄武は相手の能力を封印したり、弱化させる力を持っておるからな。我がアレックスから助けてもらったように、誰かに助けて貰ったのか」


 ……ん? あれ? そういえば、数日前に変な夢をみたような気がするな。


「シェイリー。少し前に、夢の中で女神様みたいな人から、玄武を助けてあげてくれ……と言われる夢を見た気がするんだが」

「な……アレックスはエクストラスキルを数多く授かっておるであろう。おそらく、その夢は神からの神託……何故もっと早く言わぬのだ」

「すまん。夢という事もあって、完全に忘れていた」

「むう。それは仕方ないが、こんな事をしている場合では……い、いや、もう少しだけ。もうちょっと……アレックス。少し激しく……いや、我が動くっ! んっ……〜〜〜〜っ! よ、よし。玄武の元へ……行く為の手段を、考え……るのだ」


 シェイリーが真剣に話をしようとしているのは伝わってくるのだが、時折身体をビクンと跳ねさせるから……というか、本当にこんな事をしながら話す内容ではない。

 分身を解除し……


「アレックス様! 昨日しておりませんので、もう少し……もう少しだけお願い致しますっ!」

「お兄さん。私ももっと欲しいよー!」

「ごしゅじんさまの、こども……ユイ、ほしい」


 フィーネとテレーゼ、ユイから不満の声が上がったが、もう十分にしたはずなので、皆で玄武の所へ向かう為の話をする事にした。

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