第265話 呪いの品の浄化

「さて、いろいろ話してもらおうと思うのだが……この呪いは、どうやって装飾品に掛けているんだ?」

「呪い……何を言っているんだ? そんなの知らないぞ」

「今更とぼけるのは止めてもらおうか。手前の部屋に居た奴らは、この装飾品を見た途端に、態度を変えているぞ」

「いや、その装飾品の事は知っている。俺たちが露店で販売している物だ。だが、呪いと言うのは何の話なんだ? この期に及んで、とぼけようだなんて気はねぇよ。本当に知らないんだ」


 今回の発端となった呪いの大元を潰してしまおうと思い、マミたちによって心が折れてしまった闇ギルドの男に声を掛けて居るのだが……呪いの事を知らないと言ってくる。


「では質問を変えよう。この装飾品は、どうやって入手しているんだ?」

「定期的に闇ギルドの本部から送られて来る。その際、装飾品を運んで来た男が、ここで世話をしている女を本部へ連れ帰るんだ」

「その闇ギルドの本部は何処にあるんだ?」

「それは知らない。いや、馬車で来るから他の街だ……って事くらいで、本当に知らないんだ。闇ギルドの長なら知っていたかもしれないが、それを俺へ教える前に死んじまったからな」

「死んじまった……って、お前たちが殺したんだろ? 口封じの為に」

「いや、そんな事をする訳がないだろ? ……もういいだろ? 一人にさせてくれ」


 ふむ。嘘は吐いていなさそうだな。

 しかし、闇ギルドの本部か。

 ウララドの街はシーナ国の北端にあたる訳だし、南に……シーナ国の中央辺りに、本部とやらがあるのかもしれない。

 ただ、この国に巣食うかなり大きな組織のように思えるので、壊滅させるには時間が掛かりそうだが。


「パパー。むこうに、のろいがいっぱいありそうだよー」

「そうか。ありがとう、ユーリ」


 ユーリの案内で別の部屋に行くと、先程の男が言っていた物なのか、木箱の中に沢山の装飾品が入っていた。


「パパー。せーすいつかうー?」

「そ、そうだな。ちょっと待ってくれ」


 箱の中から適当な装飾品を証拠用として二つ取り出すと、ユーリを覆う上着を取り、スカートを捲り上げて箱の上で身体を支えてあげる。


「ん……ふぅ。パパー、おしっ……せーすいでたー」

「あぁ。ありがとう、ユーリ。さて、トイレは何処だ?」


 闇ギルドのトイレを探し、ユーリを拭いてあげて……二回目なので、色々と手慣れていたからか、


「父上。もしかして幼い者には、そのようなサービスがあるのですか!? 私はユーリ殿ほど幼くはないですが、まだ八歳です。お、同じ事を私にも……」


 様子を見ていたツキが羨ましそうにしているが……サービスって何だよ。


「それなら私にもして欲しいポン! ツキより少し大きいだけポン! ジュリに比べれば子供だポン!」

「私がどうかしましたか? あー、なるほど。どちらかというと、私はアレックスちゃんをお世話したいので……いつもの姿になられます?」


 いや、マミは精神年齢が子供じゃないだろ。

 あと、俺のいつもの姿がこっちなんだ! 子供の姿が一時的なものなんだよっ!


「一通り見て回ったが、もう捕らえられていた女性は居なさそうだな。一先ず、女性たちを自警団の詰所へ連れて行こうか」

「そうですね。アレックスさんのスキルで動けなくなっている者たちも、こちらで預かりますね」

「頼むよ。じゃあ、上に行こう……あ、少しだけ待っていてくれ」


 ジュリたちと階段に向かおうとして、忘れ物を思い出し、ケルベロスが現れた部屋へ。


「≪ホーリー・クロス≫」

「アレックス。既に倒したケルベロスを斬り刻んで、一体どうしたポン? ストレス発散なら、私の中に好きなだけ出して良いポン」

「いや、そういうのではなくて、俺は魔物を食べると能力が上がったり、新たなスキルを得たりするんだ。それで、少しケルベロスの肉を取っておこうと思ってな」

「へぇー! アレックスは流石ポン! そんな事が……凄いポン!」


 ケルベロスの肉は、後でリディアに調理してもらおうと思いつつ、皆と外へ。

 女性たちに闇ギルドの中から見つけた適当な服を羽織らせ、ジュリと共に自警団の詰所へ無事に送り届けた。

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