挿話15 同盟を持ち掛けられ、検討するアークウィザードのエリー

 モニカさんが加わり、五人のパーティとなったので、アレックス、リディアさん、ニナちゃんの三人が地上の開拓を。私とモニカさんが地下洞窟の探索を……と、パーティが二つに分かれる事になった。

 その際、当初こちら側だったニナちゃんをアレックス側に変えてもらい、リディアさんと二人っきりにする事は避けられたのだけど、


「エリー殿。ニナ殿は、我々と同じく、アレックス様に抱かれたいと思っているようだが、大丈夫なのか?」

「だ、抱かれたい……って、流石にニナちゃんはそこまで考えてないでしょ。せいぜい、き……キスとかじゃないかしら?」

「そうだろうか。幼くても女である事に変わりは無い。マセている子は、色々と早いしな」


 モニカさんの言う通り、ニナちゃんも、私と同じくアレックスの事が好きみたいだ。

 だけど、流石にニナちゃんがアレックスを襲うなんて事は考えられないので、気を付けなければいけないのはリディアさんだけど、三人で居れば大丈夫だろう。


「想定されるケースとしては、ニナ殿が無垢な事を良い事を利用して、リディア殿が三人でしようと提案する事だな」

「さ、三人で……って、そんな事する訳ないでしょ!」

「いや、十分あり得る。事実、私はアレックス様に愛していただけるのなら、最悪二番でも良いと思っている。まぁもちろん、アレックス様の一番になれるに越した事はないがな」


 えぇ……二番って事は、アレックスは誰か別の女性の事が好きで、その次に私って事よね?

 それはちょっと、辛くないかな。


「エリー殿。私が思うに、アレックス様には色仕掛けが通じ難く、エリー殿はライバルであるリディア殿と牽制し合って、どちらも先に進めない……おそらく、そんな所ではないか?」

「うっ……否定出来ないのが辛い」

「しかも奴隷解放スキルがある為、時間が経てば経つほど、アレックス様を狙うライバルが増えていく」

「そ、その通りよ」


 モニカさんは、まだ魔族領へ来て半日しか経っていないのに、的確に状況を把握している。

 くっ……これが大人の女の力なの?

 私と一つか二つくらいしか、違わないはずなのに。


「そこでだ。私はアレックス様にこの身を捧げたいと思っている。エリー殿はどうだ?」

「そんなの決まっているじゃない。私は昔からアレックスの事が好き。何年、アレックスの事を想っていると思っているのよ!」

「ならば決まりだな。エリー殿。私と手を組まないか?」

「……え? ど、どういう事なの?」

「今、私が話した通りだ。一人でアレックス様を落とせないのであれば、二人がかりで行くしかないだろう」


 二人がかりって事は、その……私とモニカさんとが一緒にアレックスと!?


「おそらく、リディア殿はニナ殿を仲間に引き入れるはず。そして、今日見た限りでは、最も強敵なのは、リディア殿でもエリー殿でもなく、ニナ殿だ」

「な、何を言っているの? ニナちゃんは無邪気にアレックスへじゃれているだけの子供じゃない」

「子供だからだ。さっきの足を洗っていた時もそうだが、アレックス様もニナ殿の事を子供扱いしていて、何の躊躇も無く抱き上げたりしていただろう? 現時点でアレックス様と最も距離が近い者……それは、ニナ殿だ」

「た、確かに。そういえば、ニナちゃんは毎晩アレックスに抱きついて、胸の上で眠っているわね」

「な……何だって!? やはり私の目に狂いは無かったな」


 言われてみれば、何かある度に、アレックスの側にニナちゃんが居るような気がする。

 そんなっ! アレックスの一番近くに居るのは、幼馴染である私のはずなのにっ!


「ま、待って。モニカさん、貴女は二番目でも良いって言ったわよね? だったら、ニナちゃんと組めば良いんじゃないの?」

「それは、アレックス様が私を愛してくれるのならば……という話だ。もしも、アレックス様が仮にニナ殿を一番とした場合、私やエリー殿は窮地に追い込まれるのだが、何故だか分かるか?」

「アレックスが、ニナちゃんを好きだと言ったら、私たちが窮地に? ……アレックスは浮気しそうに無いから?」

「もちろん、それもある。だが、我々にはあってニナ殿に無い、分かりやすい物があるではないか」


 私やモニカさんにあって、ニナちゃんに無い物?

 それって、逆じゃない?

 ニナちゃんの評価が高いというのなら、ニナちゃんにあって、私たちに無い物っていうのが普通だと思うんだけど。

 ニナちゃんに無い物と言ったら……あっ!


「気付いたようだな。そう、ニナ殿はお子様体型で、胸が無い。一方で、私やエリー殿は胸が大きい。もしも、アレックス様がニナのような幼児体型好きになってしまわれたら、二番目ですら、私は選んでもらえないだろ?」

「くっ……私たちの武器は胸。それが通じないなんて事になったら……」

「そうならないように、先に手を打つんだ。私とエリー殿の二人がかりでアレックス様に、巨乳の素晴らしさを教えるんだっ!」


 モニカさん。自分で自分を巨乳と断言するなんて……いえ、実際モニカさんの胸は凄く大きいんだけどさ。

 一先ず、胸の話は置いておいて、そもそもニナちゃんは、アレックスに子供だと思われているから距離が近い。

 だったら、その子供であるニナちゃんに、アレックスが手を出すかしら?

 それに、モニカさんは気にしないみたいだけど、三人でっていうのは、どうなんだろう。

 私の独占欲が強いの? ……普通だと思うんだけどな。


「ふむ……まだ納得できないか。では、実際にエリー殿の目で確かめてみると良いだろう。じっくりニナ殿を観察してみるんだ。そして、納得したならば、改めて手を組もうではないか」

「……一先ず、考えておくわ」

「うむ。ただし、あまり時間は無いぞ? アレックス様の話では、三日後に新たな奴隷が解放されると言っていた。今でさえライバルが多いというのに、早くしないと更に増えるからな」

「分かったわ」


 おそらく、これから私は毎日モニカさんと洞窟を探索する事になる。

 確かに、情報交換の場としては良いわね。……地上のアレックスは心配だけど。

 一先ず私とモニカさんは周辺の魔物を倒し、初めて見る魔物――大きめの蛇を氷結魔法で凍らせ、持ち帰る事にした。

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