第37話 地下探索組と地上開拓組の、メンバー振り分け会議

「あははっ! 何て言うか、すっごく不思議な感じがするよー!」


 足を綺麗に洗い、一時ぐったりしていたニナだったが、回復してからは楽しそうに葡萄を踏んでいる。

 とりあえず、楽しそうで何よりだ。


「ニナ殿。しっかりスカートを捲り上げないと、葡萄の汁が付いてしまいますよ」

「えっと、こう……かな? えへっ……楽しいっ!」

「そうです。どうせなら、葡萄酒造りを楽しみましょう」


 ニナがワンピースのスカートを持ち上げ、足を大きく動かし始めたので、時折下着が見えてしまっている。

 ニナはあまり気にしていなさそうだけど、リディアやエリーだったら、見るなと怒られていたかもしれないな。

 ……いや、もちろんニナの下着を凝視している訳ではなく、視界に映ってしまうだけなのだが。


「さて、私も本気を出すので、しっかりスカートを上げて……」

「も、モニカさんっ! 貴女は捲り上げちゃダメでしょっ! 見えちゃうじゃないっ!」

「大丈夫です。見せているので」

「尚更ダメよっ!」


 モニカはスカートが汚れるのが嫌なのか、ただでさえ短いスカートを捲り上げようとして、エリーに止められている。

 それから暫く二人が葡萄を踏み続けた後、次の工程へ。


「そろそろ良いでしょう。次はこれを発酵させます……が、発酵用の部屋なども無いと思いますので、一先ずこのまま置いておきましょう。出来れば、木の板で簡単にでも覆っておきたいですが」

「木の板ならあるから、鉄の桶を囲うくらいは出来るぞ。ちなみに、どれくらいの期間、置いておくんだ?」

「父は葡萄の様子を見ながら、二週間くらいは発酵させていたかと。とりあえず、同じくらいの期間は置いておきましょう」


 モニカに言われた通り板で桶を覆って、葡萄酒作りは一旦待ちとなった。

 それから昼食を済ませた所で、モニカの荷物が届いたので、鎧を装着してもらい、ニナのスキルでモニカの剣を強化して、いざ地下洞窟へ。

 パラディンの防御スキルで全員を守った上で、モニカの力を見るために先頭を進んでもらうと、


「はぁっ!」

「≪ミドル・フレイム≫」

「くっ……たぁっ!」


 流石はマジックナイトと言うべきか、グリーン・スコーピオンは剣で、アイアン・スコーピオンは魔法で倒す。

 アサシン・ラビットの素早さに少し手間取ったものの、最終的にはしっかり倒していた。

 うむ。流石、ソロでA級冒険者になっただけはある。


「モニカ。昼食前に開拓の様子を見てもらったと思うが、地上の開拓にはリディアの協力が必要不可欠なんだ。それで、俺はリディアに魔力供給を行うから、地下洞窟の探索をモニカとエリーの二人を中心に行っていきたいと思うのだが、どうだろうか」

「ご主人様。この程度の魔物でしたら、私は一人で大丈夫ですが」

「いや、この付近に現れるのは、この三種類の魔物だが、何が居るか分からないから、ソロはダメだ。それに、魔物が大量に現れた時は、エリーの魔法が無いと辛いだろう」


 長年ソロで活動しているからか、エリーと一緒に……という話をすると、僅かに眉をひそめる。

 その一方で、


「アレックス。モニカさんの実力は分かったわ。その上で、安全性を高める為、私と一緒に行動する事も。だけど、パーティを分けるっていう事は、地上に残るのはアレックスとリディアさんだけ? ニナちゃんは?」

「ニナは鉄や土の採取があるから、エリーたちに同行の方が良いと思っているのだが……」

「ダメよっ! 二人っきりだなんて、アレックスが危ないじゃない! 私とモニカさんが地下洞窟を探索するのなら、せめてニナちゃんをアレックス側にしてよ」


 エリーがよく分からない事を言ってくる。

 二人だと地上が危ない?

 いやでも、シャドウ・ウルフは一撃で倒せるようになっているし……まぁ、地上だって未知の魔物が現れないとは限らないが、その可能性は地下の方が遥かに高いと思うのだが。


「だが、鉄や土の採取には、ニナのスキルがあった方が良いと思うぞ?」

「ダメっ! 何て言われようと、これは絶対に譲れないんだからっ!」


 エリーが物凄く固執するので、ニナの意見を聞いてみようとした所で、


「ニナちゃんも、アレックスと一緒の方が良いわよね?」

「うんっ! 鉱物も好きだけど、ニナはお兄さんの方が好きだもん」

「すっ……ま、まぁとにかく、そういう事よっ!」


 先にエリーがニナに話を振り、最終的に開拓組となった。

 エリーの希望通りとなったし、話も纏まったので、もう問題も無いだろう。

 ある程度アイアン・スコーピオンを倒して鉄を採取した所で、開拓組の三人は地上へ戻る事にしたのだが、


「……これはこれで、失敗だったのかしら……」


 エリーがよく分からない事を呟いていた。

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