第36話 葡萄の収穫方法と、お風呂の話が繋がる理由?

 途中でシャドウ・ウルフが現れバタバタしたものの、一先ず畑一つ分の場所を、石の壁で囲む事が出来た。

 それから、ニナの――ブラックスミスのスキルで強化された農具を使い、固い地面を耕す。


「モニカ。次は葡萄を生やしてもらうんだが、品種などの指定はあるのか?」

「そうですね。皮が厚めの葡萄をお願いしたいです。品種で言うと、例えば……」


 リディアに聞いてみると、ある程度であれば品種も指定可能らしく、精霊魔法で葡萄酒用の木を生やしてくれた。


「えへへー、どんな味かなー」

「あ、ニナ殿! その葡萄は……」

「……す、すっぱいよぉー」


 聞けば、葡萄は食べるのに向いた品種と、葡萄酒に向いた品種で味が大きく異なるらしく、味見と称して食べたニナが悲しそうな顔をしている。

 それでも食べ物を無駄にせず、ちゃんと全部食べたのは偉いが、この後に葡萄酒用として収穫するから、そこに入れても良かったんだぞ?

 とりあえず、ニナ用に食べる為の葡萄の木を数本生やしてもらい、早くも葡萄酒用の品種の収穫に移るのだが、


「出来るだけ大きな桶に入れたいのですが、何かありますか?」

「いや、残念ながら料理で使う小さなボールや、鍋くらいしかないな」

「そうですか……どうしたものか」


 大きな容器が無い事を話すと、モニカが困りだしてしまった。

 シェイリーが作ってくれた森から木を切って作れば良いのだが……というか、お風呂用に手桶を作ってみたのだが、上手くいかなかったんだよな。

 小さな手桶が作れなかったのに、大きな桶が作れるはずもなく、


「ニナ、鉄の残りで大きな桶みたいな物を作れるか?」

「薄くすれば作れると思うけど、重いよ?」

「とりあえず、暫定的な対応という事で、頼むよ」

「わかったー!」


 一先ず鉄で桶を作ってもらう事にした。

 ニナに桶を作ってもらう間に収穫しようという事で、小屋から鍋や調理用のボールを持って来て、葡萄を収穫していく。

 ちなみに、モニカは幼い頃から収穫している方法があるので、鍋などの容器は不要と言って、そのまま手ぶらで葡萄畑へ。

 暫くすると、モニカが大量の葡萄を抱えながら、収穫を続けている様子を見つけたのだが、一体どうやっているのだろうか。


「モニカ。その大量の葡萄を、どうやって左手だけで持っているんだ?」

「ご覧になられますか? とはいえ、横から見ていただければ一目瞭然なのですが、スカートを捲り上げて、風呂敷のように広げているんです」

「いや、それだと下着が見えてしまうだろ? 流石に覗く訳にはいかないよ。とりあえず、説明してもらって納得出来たから良いよ」

「いえ、今の私は、絶対に下着は見えませんよ? 履いてな……げふんげふん。どうぞ、横からご覧になってください」

「そうなのか? じゃあ、悪いけど少しだけ……ん? エリー?」


 モニカが自信満々なので、どうなっているのか見せてもらおうと、モニカの横へ回ろうとしたところで、唐突にエリーが割り込んで来た。


「アレックス……一体何を覗こうとしているのよっ!」

「ナイスです、エリーさん! アレックスさん、ご覧になりたいのでしたら、私がっ!」

「どさくさに紛れて、リディアさんは何を言っているのよっ! というかアレックスも、子供の頃に私と一緒にお風呂へ入っていて、お互いに見た事あるでしょっ!」


 いや、エリーと風呂に入った事は何度もあるが、それと葡萄摘みの話は全く繋がらないと思うのだが。


「くっ……あと少しだったというのに」

「いや、三人とも何の話をしているんだ? 葡萄酒作りの話だよな?」

「そ、そうですよね。エリーさんもリディアさんも、何を仰っているのでしょうね」


 モニカの言葉で、エリーとリディアが揃ってジト目になったのを不思議に思いつつ、集めて来た葡萄を、ニナが作った鉄の桶へ。


「では、集めた葡萄を足で踏んでいくのですが、桶のサイズもありますし、これは私がやりましょう」

「だ、ダメよっ! モニカさんが何をするか、大体予想がつくものっ! 私もやるわっ!」

「エリー殿。流石に、この桶へ大人二人が入るのは難しいと思いますが」

「そ、それなら……ニナちゃんっ! モニカさんと一緒に葡萄を踏んでみましょう!」


 食べ物を踏むというのは少し抵抗があるものの、伝統的な作り方で、市場で売られている葡萄酒は殆どがこの作り方だと聞いたので、二人にやってもらう事となった。

 リディアに水を出してもらい、念入りに足を洗って貰うのだが、ニナは少しばかり洗い方が雑というか、水を嫌がっているというか……ドワーフの寒さが苦手というのは、困ったな。


「ニナ。ちょっとこっちへ……俺の脚の上に座って。もっと丁寧に洗うから。リディア、こっちに水を頼む」

「お、お兄さんっ!? 冷たっ! ……って、くすぐったいよーっ!」

「足で葡萄を踏むんだろ。もっと綺麗に洗わないと」


 地面に片膝を着いて座り、ニナを俺の立てた脚の上に座らせると、足の指の間まで綺麗に洗う。

 ニナは、終始くすぐったいと言いながら身体をくねらせているけど、流石にこれは妥協出来ない。

 なので、左腕でしっかりとニナを抱えて逃げられないようにして、丁寧に洗っていくと、


「よし、ニナ。これで良いよ……って、どうしたんだ? ニナ?」

「うぅ……お兄さん。ニナ、もうダメぇ……」


 余程くすぐったかったのか、ぐったりとしたニナが俺に抱きついてきた。

 だが、せっかく洗ったニナの足を地に着ける訳にもいかず、お姫様抱っこのように抱きかかえていたら、


「ご主人様。私もご主人様に洗っていただきたいです」

「モニカさんは、自分で洗えるでしょっ!」

「……ニナさん。羨ましい……」


 何故か他の女性陣が騒ぎ始めてしまった。

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