第331話 思い付きを相談するアレックス
エリラドの街で偶然助けた女の子と、闇ギルドからこの子を買った中年男性を自警団へ無事に引き渡し、一先ず事なきを得た。
「ご協力ありがとうございました。お恥ずかしい話ですが、この街にはこういう者が多く、後を絶たないのです」
「そうなのか。ちなみに、この女の子はどうなるんだ?」
「そうですね。本人と相談していく事になりますが、本当の親元や親族の元へ戻るか、教会――孤児院に行くか、自力で生きてもらうか……のどれかでしょうね」
「先の二つはともかく、この年齢の子供に自力で生きてもらうというのは、流石に酷ではないか?」
「あぁ、言い方が悪かったですね。自分で保護者を探すと言う意味です。子供が人身売買の対象となるのは、誘拐されたケースだけでなく、貧困により親が自ら売ったケースもあります。後者であれば、親元へ帰った所で二の舞になるだけですので。それに、孤児院も必ずしも受け入れ先が見つかる訳ではありませんし」
それは……物凄く悲しいな。
あの女の子はおそらく十歳くらいではないだろうか。
冒険者として生きていくにしても、十五歳からしか……ティナのように見習いとして、何処かで働く事になるのだろうか。
「もしも最悪のケースで、孤児院も受け入れ先が無ければ、相談に乗ると先程の少女に伝えておいて欲しい」
「わかりました。ちなみに、貴方は……」
「あぁ、俺はアレックスという。パラディンのジョブを授かっており、悪事は見過ごす事が出来なくてな」
「なるほど。畏まりました。もしもの場合は、是非お願い致します」
うーん。ウララドの街の闇ギルドと同じ事が、この街でも起こっているのか。
「アレックス様! ありがとうございます!」
「ん? 何がだ?」
「いえ、先程の少女の事……昔の私と同じだと思いまして」
あぁ、ケイトも幼い頃に闇ギルドへ売られてしまったんだったな。
……あ、さっきの女の子とケイトの事で、ちょっと思い付いてしまった事がある。
どうしよう。商人ギルドの本部の話もあるが、この街はこの街で放置も出来ない。
「皆、この街の事で少し相談があるんだが……この街の闇ギルドも潰して良いだろうか。あと、潰した後についても……」
思い付いてしまった以上、一旦ケイトを含めて皆に相談すると、
「父上。それでは尚更、いそいで商人ギルドへ参りましょう。そちらの話も商人ギルドへ相談して良い案件かと」
「私もツキちゃんと同じ意見かな。やっちゃいましょー! あとの話も私に任せて」
「ほな、尚更交渉を頑張ろか。沢山資金が要りそうやしな。あと、メイリンお母さんに言って、応援も呼んでもらお。潰すのはお父さんが居れば大丈夫やけど、その後の事が大変そうやから」
ツキとケイトとレナが同意してくれた。
特に潰した後の事は、ケイトにかなりの負担をお願いしてしまう事になるし、資金も居るから……うん。レナに助けてもらおう。
ちなみに、レヴィアはよく分かって居ないみたいだけど、
「とりあえず潰せば良いなら、私の出番だよ?」
「ほ、程々にな」
一先ず協力してくれるようだ。
レヴィアは戦っている所や、ドラゴンに変身した所を見た事は無いが、ヴァレーリエと同じ竜人族だからな。
おそらくドラゴンに変身してしまったら、また大問題になるレベルだろうし、余程危ない時以外は大人しくしていてもらおう。
時間も勿体ないので、ツキに案内してもらって商人ギルドへ行くと、受付の女性に話し掛ける。
「すまない。ウララドの街から来たアレックスという者なのだが、少し話を……」
「あー、またですか。本当、バカな人が多いですね。自警団さん、お願いしまーす!」
何だ? 名乗って話し掛けただけで……何やら武装した男性が数人やって来たな。
「これは一体何だ?」
「見ての通りですよ。どうせ貴方も何処かで話を聞いて、例のポーションを作った本人だって言うんでしょ? 今日だけで何人目だと思っているのよ」
なるほど。俺の名を騙る奴が居るという事か。
「おい、お前。怪我をしたくなければ、無駄な抵抗はするな。大人しく反省すれば、明日には牢から出してやるよ」
「いや、俺はアレックス本人なんだが」
「はいはい。牢に入れられた奴は全員そう言ったよ」
「……商人ギルドのカードもあるのだが」
「全員持ってたよ。どうせお前のも偽造だろ? 無駄な抵抗はするなよ? 臭い飯を食う期間が延びるぞ?」
さて……どうしたものか。
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