挿話109 ジョブチェンジを迷うローグのグレイス
イライザがジョブチェンジさせて欲しいと言い、六合っていう兎耳の女の子から、注意事項が話される。
だけど、私には分かるよ。
イライザ……説明を全く聞いてないよね。
まぁジョブチェンジする為にここまで来たんだから、今更やめたりしないだろうし。
節約して安い船に乗り、面倒見の良い人たちに馬車へ乗せてもらって……ここまで来るのは本当に大変だったもんね。
「あ、あの、アレックスさん! 今は微妙なアコライトですけど、無事にジョブチェンジして近接戦闘系のジョブを得たら、お傍に居させてくれますか?」
「え? それは行き先次第かな。危険な所に連れて行く訳にはいかないしさ」
えっ!? 近接戦闘ジョブだと、アレックスさんのパーティに入れてもらえるの!?
何故か途中で気を失ってしまったけど、アレックスさんのが凄くて直ぐに目が覚めた。
とにかく、凄いの。
エリーさんやフィーネさんの、二人ともが妊娠したのも今なら分かる。
初めてだったけど、アレックスさんは凄い!
私もジョブチェンジして、後衛を狙うつもりだったけど、アレックスさんと一緒に居られるなら、ローグのままでも良いかも。
「グレイスはどうする? 一緒にジョブチェンジさせてもらう? 費用も掛からないんだって」
「ただ、イライザさんにも言いましたが、何になるかは選べませんし、やり直しも出来ません。心の中で願ったジョブになるのではなく、自分でも気付いていない深層心理で求めているジョブを授かるのです」
どうしよう。
私はお姫様に……アレックスさんに守ってもらえる存在になりたい。
だけど、アレックスさんのお側に居たい。
この場にエリーさんやフィーネさんが居ない事を考えると、どこかで待機しているのだろう。
あの凄いので毎晩愛してもらえるのだろうけど、同じパーティでお傍に居るというのであれば、今のままの方が……どうしよう。
「グレイスさん。私は基本的にこの教会に居ますので、迷うのであれば気持ちが固まってから来れば良いと思います。今、急いで行う必要はないと思いますよ」
「……わかった。少し考える」
「あ、私はジョブチェンジします! お願いします!」
イライザの決意は固いらしく、六合さんにジョブチェンジをお願いし……どうやら今から行われるようだ。
無事に希望している近接戦闘ジョブになれば良いのだけど、果たしてどうなるのか。
「では、公平を司る私の力をもって、貴女に今一度ジョブを授けましょう……≪天稟≫」
六合さんが手をイライザに手をかざすと白い光に包まれ……少しずつ光が収まっていく。
光が完全に消えた後、イライザは見た目には何も変わっていないけど、本人的に何か違和感があるみたいで、確かめるように身体を動かし……アコライトとは思えない身体捌きを見せる。
これは、希望通り近接戦闘職のジョブを授かったのだろうか。
「六合さん、ありがとうございます。身体が凄く軽い気がするんですけど……私には何というジョブが授かったのでしょうか?」
「はい。貴女には、アビゲイルというジョブが授けられたようです」
「アビゲイル? ……侍女って事ですか!?」
「えぇ。そういう事です」
侍女!? それってつまり、お姫様とかに仕える人っていう事よね?
戦いとかが出来る訳ではなさそうだけど……イライザは大丈夫かな?
けど、侍女っていうお世話係のジョブを授かるあたり、やっぱりイライザもアレックスさんの傍に居たいって、思っているのよね。
……うん、気持ちは凄く分かる。私だってそうだもん。
「侍女……つまり、ご主人様をお守りしたりする事もありますよね? つまり、戦うジョブ! そして、お傍で身の回りをさせていただくジョブでもあるので……アレックスさん! どうか私をお傍に置いてくださいっ!」
「えぇっ!? いや、もちろん責任は取るが、必ずしも戦わなければならない事はないのだが」
「いえ、私は戦いたいんです! 魔物を倒したいんです! そして何より、アレックスさんのお傍に居たいんですっ!」
そう言って、イライザが素早くアレックスさんに抱きつき、キスを……動きがこれまでよりも速いっ!
これがジョブチェンジの力!?
……けど、侍女って戦うジョブではないわよね? イライザが思い込みで身体強化されているだけのような気もするんだけど。
「あぁぁっ! ズルいっ! アレックス、私にもキスしてくださいっ! 公平にっ!」
「むっ!? 二回戦をするのじゃな? 当然我も混ざるのじゃ!」
「……あ、あれ? いつの間に気絶して……あぁぁっ! 私もっ! 私もお兄さんともう一回しますっ!」
六合さんに、狐耳の女の子、さっきの聖女……って、他の女性たちがいっぱい来たっ!
わ、私もっ! 私もするっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます