第421話 悲しむミオと、気絶している女性たち

 イライザがジョブチェンジ出来て喜んでいたのは良かったのだが、その後が酷かった。

 六合、ミオ、クララが俺に襲い掛かり、当然ヴァレーリエやレヴィアにカスミも混ざってくる。

 イライザとグレイスに、他の復活した女性たちも混ざって来て……リディアの目がちょっと怖かったのは内緒だ。


「しかし、このタイミングで礼拝堂に無関係の信者が入って来なくて本当に良かったな」

「そこは抜かりないのじゃ。我らが来た時点で、結界を張っているから、外から中には入れないのじゃ」

「そうか。それは助かるよ」


 良かった。これ以上、魅了される者が増えたら困るからな。


「まぁ逆に言うと、元々この教会の中に居た者は、混ざれてしまうのじゃが……」

「えっ!? ミオ、それはどういう……」

「いや、その辺に気絶している者が居るであろう。そこと、向こうと、あっちもか。その三人は通路から羨ましそうに眺めていた挙句、我慢出来ずに自ら混ざりに来て……こうなっておるのじゃ」


 ミオが指し示した先には、教会のシスターって感じの女性が三人倒れて居るんだけど……あ、一人は最初に俺たちを見て、悲鳴を上げて逃げた女性だな。

 いや、そのまま逃げてくれよ。どうして混ざりに来ているんだよっ!


「さて……この教会の中に、ベイラドの街でついて来られた女性が二十人くらい居るのだが、どうしたものやら」

「アレックスが望むなら、我がなんとかしてやるのじゃ」

「ん? 何とかって?」

「簡単なのじゃ。目を覚ます前に、街の隅にでも捨てて来るのじゃ」

「いや、そういうのはダメだ。してしまった事に対して責任は取る。もちろん、本人の考えを尊重してな」

「むぅ。しかしアレックスよ……このままでは際限なく妾が増えてしまうのじゃ。ただでさえ、以前に比べると我らの回数が減って居るのじゃ。悲し過ぎるのじゃ」


 ミオが悲しそうにしているが……減っているのか?

 この教会の中だけで、どれだけ……いやまぁこれまでが、もっと多かったのかもしれないが。


「とりあえず、最優先はこの女性たちをどうするか考える事と、闇ギルドの撲滅だな」

「お兄さーん。さっきの司祭が闇ギルドと思われる男と会って居たのは夜だから、まだ時間があるわよー。という訳で、続きを……」

「しないって。……とりあえず、この街の地理を知りたいな。いつまでも、この礼拝堂に閉じ籠っている訳にもいかないからな」

「じゃあ、それはカスミちゃんとサクラちゃんに、ナズナちゃんへ任せてー。大きな街だけど、地理は把握してくるわよー」

「わかった。出来れば、街の外れにある宿屋とか空き家などを借りて、この女性を寝かせたいんだ。流石に教会を閉めっ放しというのもどうかと思うからな」


 イザベラやグレイスだけでなく、六合にジョブチェンジさせて欲しいと思っている者が居て、せっかくここまで来たのに教会へ入れなかったら悲しいだろうからな。


「寝かせるだけなら、この教会の職員の宿舎で良いのではないかしら? 私は詳しくないけど、司祭たちはこの教会の裏に住んで居るはずよ。さっき隠し事がいろいろ見えたけど、いろんな悪事を働いているから、家くらい没収して良いわよ。そもそも、この教会の敷地内だしね」


 六合の言う通り、この教会の敷地内の家だというのであれば、まぁいいか。

 実質、六合の家みたいなものだろ……たぶん。

 その家に案内してもらいたいが、司祭は小部屋に閉じ込めているし、クララは起こすと面倒な事になりそうだから、さっきミオが言って居たシスターの一人にしようか。

 途中から混ざったあたり、魅了効果を受けてはいないようだしな。


「≪リフレッシュ≫……大丈夫か? 悪いが、この教会の宿舎に案内して欲しいのだが」

「ふふっ、良いわよ。ついてきて……私の部屋で続きをするのよね?」

「何のだよ……」

「そんなの、もちろん決まっているじゃない。夫婦で仲良くしなきゃね」


 何か様子が変だ……って、六合からもらった和合スキルのせいなのか?

 ミオたちは元から妻だから変化は無さそうに思えたが……礼拝堂で倒れている女性陣が目覚めたら、全員こんな感じになるのか!?

 ま、まさかな。

 内心冷や汗をかきつつ、気を失っている女性を宿舎へ運ぶ事にした。

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