挿話134 勇者オーブリーについて行くアーチャーのベラ

 勇者のオーブリー様と魔族を倒した後、冒険者ギルドのタバサさんの所へ報告に来た。


「……という訳で、魔族を倒して取得経験値増加というエクストラスキルを得たのだ」

「ほ、本当ですか!?」

「本当だ。というか、こんな嘘を吐く意味が無いと思うのだが」

「た、確かに。ですが、しかしそれでは、アレックスさんの話が真実……!?」


 ん? どうしてタバサさんは、アレックスって人の話をするの?

 今はオーブリー様の話でしょ!?


「で、ではオーブリーさん。そのエクストラスキルについて少し調べさせて欲しいので、冒険者ギルドの本部へ向かっていただけないでしょうか」

「ん? 俺様は構わないが、良いのか? 俺様はレアな勇者だ。魔物や魔族を倒して人々の平和を取り戻さなければならないのに、わざわざ本部まで行って、スキルを調べるなんて、時間が勿体無いと思うのだが」

「そ、それはその通りです。オーブリーさんには南の大陸へ渡っていただきたいというのが本音です。ですが、エクストラスキルという唯一無二のスキルについて調べる事も、また後世の為に必要な事なのです」

「なるほど、後世の為か。確かに、俺様たちの子や孫の世代を守る事も必要だ。流石の俺様も、百年後にこの世界を守る事は出来ないからな」


 子や孫……あぁ、オーブリー様の子供が欲しい。

 きっと、凄く格好良くて可愛い上に、強くて逞しいんだろうな。

 あ、あと、体力も凄そう。

 オーブリー様は毎晩激しいし、ずっと眠らせてくれないし。

 ふふっ……最近は、深夜まで愛し合って、お昼前に起きる生活がすっかり根付いちゃったわね。


「……わかった。では、俺様は冒険者ギルドのある王都へ行き、その後は南の大陸へ向かう……それで良いね?」

「はい。すみませんが、よろしくお願い致します。こちらも、色々と調べなおします」


 オーブリー様の子供について考えていたら、いつの間にか話が終わっていた。

 どうやら王都へ向かうらしい。

 王都……一度しか行った事がないけど、凄く綺麗な宿があったのを覚えている。

 だけど聞いた話によると、あそこは貴族が泊まるような宿がらしくて、庶民が泊まれるような宿ではないのだとか。

 それでも、いつかオーブリー様と、あんな宿へ泊まってみたいな。


「ベラ。すまないが王都へ行かなくてはならなくなってしまったんだ。一緒について来てくれるかい?」

「勿論です! オーブリー様と離れ離れになるなんて考えられません!」

「ふふっ。ありがとう、ベラ。じゃあ、早速移動しようか」

「えっ!? 今からですか!? もう夕方ですし、今日はこのフレイの街でゆっくりして、明日から行きませんか?」

「まぁまぁ。善は急げと言うだろう」


 そう言って、オーブリー様が私の手を取り、冒険者ギルドの奥の部屋……転送装置へ向かう。

 うーん。本当に今すぐ行くんだ。

 本当はスキルの調査とか、面倒な事は後回しにして、まずオーブリー様とイチャイチャラブラブしたかったのに。


「では、転送装置を起動しますね」

「あぁ、頼むよ」


 タバサさんの声にオーブリー様が応じ……一瞬で景色が変わる。

 ここは……王都の冒険ギルド本部なんだろうな。

 オーブリー様が私の手を引いて歩きだし……受付カウンターを通り過ぎた。


「あれ? オーブリー様?」

「あぁ、先に行くところがあるんだ」


 なるほど。やはり勇者様ですし、お忙しいんですね。

 となると、もしかして今日はお預け?

 うーん。最悪、冒険者ギルドのトイレとかでも良いから、して欲しい……って、あっ! 憧れの王都の宿だ!

 五階建てくらいかな? お城と並ぶくらいの高い建物だし、最上階から王都を眺めながらオーブリー様に愛していただけたら……ん!?


「ちょ、ちょっとオーブリー様!? 何処へ向かわれているのですかっ!?」

「何処って、宿だけど?」

「え? でも、先に行くところがあるって……」

「だから、それが宿だよ。スキルの調査なんて面倒な事は明日にして、ベラと愛し合いたいからね」

「そ、それは嬉しいのですが、この宿は……」

「大丈夫。俺様は勇者だ。さぁ行こう」

「オーブリー様……」


 受付の人に最上階へ案内され、扉を閉めたら、大きな窓から外を一望しながら服を脱がされる。

 こんな高い建物を覗ける場所なんて無いから、カーテンを全開で窓に手を突きながら……オーブリー様っ! 私、何処までもついてイきますーっ!

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