第446話 港町クワラドへの移動手段

 モニカが小刻みに震わせながら、六合教の宿舎へ戻ってきた。

 さて、次はクララにお願いしないと……と、モニカに礼を言って離れると、


「アレックス、次は私です。モニカさんばかりで公平ではありません」


 六合が……って、魔族領へ戻る前に散々したと思うんだが。

 だが、そんな俺の思いなど関係なしに、強制的に分身が発動され……いや、シェイリーを待たせてしまう事になるんだが。


「り、六合。実はクララに用事があって……っ! ……い、今シェイリーが俺の合図を待っているんだ」

「それはそれ、これはこれです」


 六合が話を聞いてくれず、分身たちも女性陣を……というか、女性陣に襲われている。

 早く港町の家へ行かないといけないのだが……


「な、何っ!? 何これっ!? 指だけで……あ、アレックス様ぁー! は、早く指ではなくて、本物を……っ!」


 何故か、分身との順番待ちをしている女性たちが身悶えていく。

 いつもは顔を赤らめながら、わくわくしながら待っている感じなのだが、何か様子が変だな。

 声を押し殺しているような、何かに耐えているような……って、それより早く港町へ行かなくては。

 という訳で、本気で六合を攻め……気絶させた。


「クララ。頼む」

「はいっ! 喜んで……んっ、ふぅ。相変わらずアレックス様のは濃厚ですね」

「いや、綺麗にして欲しい訳ではなくて、転移スキルで、港町の家に連れて行って欲しいんだ」

「あ、こっちですね? どうぞお使いください〜〜〜〜っ!」

「クララっ!? 転移スキルを……転移スキルを頼むっ!」


 急いでいたからか、勢い余って一気に奥まで突いてしまい……あ、何とかクララが復活した。


「て、≪転移≫」


 ようやく港町の家に着いたので、分身スキルを解除し、クララを……とりあえず寝室へ。


「さて……魔法陣の場所を何処にするかだな。ちょっと集まってくれ……いや、違うんだ! そういう事をする為じゃなくて、真面目な話だ」


 ヘレナとメイドさんを呼び、脱ごうとするのを止めて、主旨を話す。


「アレックスが他にも家を持っているのはともかく、そこを魔法陣で行き来出来るようにするというのは凄いな」

「あぁ、元は天使族の魔法なんだ。それを魔法に詳しい者が解析してな。それよりヘレナには、その魔法陣を守る役目をお願いしたいのだが、何処が良いだろうか」


 ヘレナやメイドたちと検討した結果、屋敷に地下室があったので、そこに魔法陣を繋げてもらう事に。


「全員部屋から出てくれ…… ≪フレイムタン≫」


 事前にシェイリーと決めていた、合図となるスキルを使用すると、複雑な何かの模様を描くように床が輝いていく。

 気付いた時には、目の前にシェイリーが居た。


「上手くいったようだな」

「あぁ、ありがとう。一旦、向こうへ行って、六合の所に居る女性陣声を掛けてくるよ」

「忙しないのう。もっと我の所でゆっくりしていってもらいたいのだが」


 抱きついてくるシェイリーに謝りながら、何人かの人形を連れて、再び魔法陣の中へ。

 港町の家に戻ると、ヘレナとクララに、メイドさんたちがドアの外から覗いていた。


「アレックス……本当に何処かへ行っていたんだな」

「あぁ。そういう魔法陣だからな」

「アレックス様! そ、その幼女たちは? お子様なのですか!? わ、私もアレックス様の子供が欲しいですっ!」


 驚き唖然とするヘレナとは異なり、クララが、グイグイ責めてくる。


「待ってくれ。この子たちは、俺の子供とも言えるが、ちょっと違ってだな……」

「さぁ、アレックス様! 沢山子供を作りましょうっ!」

「そうだな! うん、難しい事は置いといて、私もアレックスと愛し合いたいんだっ!」


 クララとヘレナにメイドさんたちに引っ張られ、地下室から出されると、そのまま……いや、ずっとこんな調子だから腰が大変な事になるっ!


「お父さん。イネスお母さんから、お父さんの腰をマッサージしてあげてって言われているの。だから、心配せずに沢山してあげてね」


 いや、ありがたいんだが、それより今はクララに転移を使ってもらいたいんだが。


「ご主人様ー。結衣も混ぜてー!」

「結衣ちゃんが混ざるなら、私たちも構いませんよね?」


 一瞬で全裸になった結衣を見て、ステラの人形が混ざろうとしてきたが、シェイリーと同じくらいの背丈なんだよな。


「いや、結衣はともかく、ジョブを授かっていない者はダメだっ!」

「えー。結衣ちゃんも……こほん。アレックスさんの意地悪ー!」


 そう言いながら、ステラの人形が俺やクララに結衣たちを凝視してくる。

 えーっと、人形は年齢が半分になるから、九歳の時のステラだよな?

 ……今は聖職者だけど、この頃はこういう事に興味津々だったのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る