第437話 要望に応えるシャドウ・ウルフ

 闇ギルドの建物へ戻ると、先ずは一番奥に固めておいた幹部たちを入口近くまで運んでおこうと思ったのだが、


「お兄さん、続きっ! 続きぃー!」


 分身を出して居る時にいろいろされた女性たちが目を覚まして居て、それどころでは無くなってしまった。

 しかも、クララまで混ざろうとしているし。

 この女性たちの事もどうするか考えないといけないと思っている内に、自警団の女性団員が大勢やってきたのだが、


「お待たせしました。……あ、アレックス様っ! わ、私も混ぜてくださいっ!」

「何を言って……あのポーションを飲んだ事があるのかっ!」

「ちょ、ちょっといきなり何を……確かに格好良いけど、仕事中よっ!?」


 自警団員の中でもポーションを飲んだ事のある女性が、服を脱ぎだす。

 ダメだ。闇ギルドの幹部を連れて行ってもらわないと行けないのに……仕方が無いな。


「すまない。≪閉鎖≫」


 魅了状態になっている女性たちを、自警団員を含めて動けなくする。


「えっ!? 魔法? ……な、何ですか、今の!? というか、この痴女たちも闇ギルドの被害者ですよね? うちの団員も数人巻き添えになっていますが」

「アレックスさん!? 私まで!? アレックスさぁぁぁんっ!」

「あー、いやここの女性たちは闇ギルドの被害者ではないのだが……それより先に、こっちへ来てくれ」


 自警団員の仕事をスムーズに行ってもらう為、クララも一緒に閉じ込めてしまったが、ポーションを飲んでおらず、魅了状態になっていない自警団員を連れて地下へ。

 途中に居る闇ギルドのメンバーを、都度連れて行ってもらいながら地下牢へ行くと、


「男……男ぉ」

「そんな女よりも、私をぉぉぉ」


 自警団の所へ行く前と変わらず、一部の女性が全裸で鉄格子にくっついていて、他の者は無表情で座っている。


「これは酷い……早く救出しないと」

「あぁ。じゃあ牢を開けるから、中の女性を頼む……はぁっ!」

「えっ!? 鉄格子を斬った!? 普通の剣で!? ……そ、それより女性の保護が先ですね。……こほん。安心してください。私たちは自警団の者です」


 やはり女性の自警団に来てもらって良かった。

 俯いてじっとしているだけだった女性たちが顔を輝かせ、牢から出て行く。


「男……やっと男! お願い、もう無理ぃ……」

「す、すまない。こっちの女性も連れて行ってあげてくれ」

「や、やだぁぁぁっ! 私は、この人が居ないと……やめてぇぇぇっ!」


 良かった。俺の所へ来ようとしていた女性たちも、自警団によって運ばれて行って……俺から離れれば、きっと魅了状態も解除され、冷静になれるだろう。

 暫くして牢に囚われていた女性が全員救出されると、自警団員を三人程連れて一番奥の部屋へ。


「こっちに闇ギルドの幹部を捕らえてある。来てくれ」

「しかし、アレックスさんは凄いですね。これは自警団としても表彰させてもらわないと……ひぃぃぃっ! どうして、シャドウ・ウルフが……っ!」

「あ、忘れてた……だ、大丈夫かっ!? お、おい……」


 シャドウ・ウルフを見た三人の女性が全員気絶してしまい、その内の一人は床に変な液体を……み、見ないようにしておこう。


「しかし、シャドウ・ウルフはどうしようか。テイムしているから、倒してしまうのも可哀想に思えてしまうしな……何か姿を隠したり出来ないか?」


 俺の言葉でシャドウ・ウルフが困ったような表情をしているように思えたところで、


――KUUUUUN


 シャドウ・ウルフ小さく鳴き、その姿が小さくなって……いや、影の中に沈んでいった!?


「えっ!? そんな事が出来るのかっ!? ……あ、出て来た。影の中に隠れられるという事か。よし、俺が良いと言うまで、影の中に潜んでいてくれ」


 了解と言った感じに鳴いたシャドウ・ウルフが、再び影の中へ。


「≪リフレッシュ≫」


 今のうちに、気を失った三人の女性たちを治癒魔法で目覚めさせる。


「シャドウ・ウルフが……あ、あら?」

「大丈夫か? シャドウ・ウルフなんて、ここには居ないぞ?」

「えっ!? 確かに……あっ! わ、私……うぅ、ちょっと着替えてきます」


 一人が泣きそうになりながら上へ戻って行ったが、残りの自警団員と共に闇ギルドの幹部たちを外へ連れ出し……一応、闇ギルドの奴らの引き渡しが無事に完了した。


「アレックスさーんっ! そろそろ出してくださーい!」

「アレックスさん! もう無理だっ! 早くっ! 頼むっ、我慢出来ないっ!」

「お兄さん、続き……さっきの続きーっ!」


 あとはクララと魅了状態の自警団員と、街でいろいろあった女性たちだが……閉鎖スキルを解除しないといけないよな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る