第345話 解呪ポーションの効果

「……まさか、ズーシュン副団長が闇ギルドの長だったなんて」


 ジュリたちと合流すると、先ずは事情を説明し、自警団の団員をズーシュンの所へ連れて行き、捕らえた闇ギルドの者たちに洗いざらい話させた。

 ズーシュンが長である事や、エリラドの街で拠点としている場所、主な活動内容など。

 だが、レヴィアやツキに、マミが協力してくれると物凄く簡単に話してくれるのに、本部の場所は知らないというから、本当に知らないのだろう。


「アレックスさんたちが捕らえた、ズーシュン副団長……いえ、ズーシュン一味については私にお任せください」


 暫くすると自警団の応援が来たので、結界スキルを解いてズーシュンたちの身柄を渡し、捜索願いを出して居る三人目の者の所へ行く事に。

 ちなみに、ジュリたちが最初に行った所は、幼い娘を攫われたと言っており、話を聞いた限りでは本当の親だろうという事になったそうだ。


「……しかし、複雑な気分ですね。ウララドの街も、自警団の副団長が闇ギルドの長でしたし、このエリラドの街も……一体、自警団とは何なのでしょうか」

「俺の出身地は、国が管轄している騎士団という組織があって、その騎士たちが悪を捌いているんだが、シーナ国にはそういう組織はないのか?」

「国が管轄しているという意味では、軍隊はあります。ですが、それはあくまで外に向けた抑止力であり、国内に向けられる事は余程の事でないと無いかと。それで、地方は自警団という形で街の人々を守っているのですが……」

「そうか。他所の国だから、治安について俺がどうこう言う事は出来ないが、せめて目に留まった悪くらいは潰しておこう」


 ジュリとそんな事を話しながら三人目の所へ行き、話を聞く。

 この家も、母娘で外出していた時に娘が攫われたらしく、何度も探し回ったという。

 一先ず、嘘を吐いている様子も無いし、家に帰しても大丈夫だと思われる。


「わかった。娘さんは俺たちが救出したので安心して欲しい。ただ呪い……毒物を盛られていたようで、今薬師が治療にあたっているから、少しだけ待ってもらいたい」

「ど、毒!? む、娘は大丈夫なのでしょうか」

「あぁ。俺たちは商人ギルドにも登録しているし、先程言った薬師は一流の腕を持っているから、安心してくれ」

「わかりました。娘を……どうか娘をよろしくお願いいたします」


 話を終え、家から離れると、


「アレックスさん。先程の毒の話は本当なのでしょうか?」


 自警団の者が困惑した様子で聞いてくる。

 まぁ今まで呪いだと説明して、全く話が通じなかったので毒物だと言ったのだが……言葉が変わるだけで、ここまで態度が異なるのだな。


「もちろんだ。あと、商人ギルドの話も本当だ。これまで何度もポーションを納品しているし、問い合わせてくれても構わない」

「アレックスさんの身柄は、私が保証しよう。ウララドの街でも、闇ギルドを潰してくださったお方だ」

「いえ、毒物を疑っているのではなくて、薬師が治療にあたっている話です。ジュリさんは薬師に見えませんし……あのもう一人の女性が薬師なのですか?」


 あー、レナは見た目が幼いから、薬師だと分からないのか。

 その辺も含めて心配するなと念押しし、それぞれの拠点へ戻る。


「レナ。解呪ポーションはどうだ?」

「ユーリはんのおかげで、二本は出来たよ。今は聖水待ちやわ」

「では、いきなりで悪いのだが、その二本を……この子と、この子に飲ませてやってくれないだろうか。自警団に捜索願いが出ていてな。呪いが解けたら、家に帰してやろうと思って」

「了解! ほな、今の二人はこっちへ来てんか。で、このポーションを飲も。味は知らんけど、効果は保証するで」

「これを飲んだら、君たちは家に帰れるから、飲んでもらいたい」


 レナにポーションを渡されて困惑していた二人だが、俺から言うと「わかりました!」と声を揃えて一気に飲み……どうだろうか。


「ユーリ。この二人を見てもらいたんだが、呪いは消えているだろうか」

「んー、うん。のろいは、だいじょうぶだよー! のろいはー」

「ん? その言い方だと、呪い以外にも何かあるのか?」

「え? えーっと、のろいではないんだけどー……チャームっていうのかなー。パパに……あ!」


 ユーリが大きな声をあげたかと思うと、


「おにーちゃん! けっこんしてー!」

「おにーちゃーん! わたしもー!」


 幼い少女二人から抱きつかれる。


「……れ、レナ? どういう事だ?」

「いやー、レイお母さんも危惧していたけど、材料がお父さんのアレやから。マジック・ポーションやステータスアップ・ポーションもそうやけど、短時間で魅了効果を取り除くのは無理やったって」

「あー、まぁ確かに今回はレイに無茶を頼んだが……こ、この二人はどうすれば良いんだ!?」

「お父さんが近くに居る時だけ発動する感じやから、離れたら大丈夫とちゃうかな?」


 一先ず、この二人はジュリに家まで送ってもらう事にしたのだが……残りの四人はどうすれば良いのだろうか。

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