第344話 パッシブ魅了スキル

「アレックスー。服を買って欲しい」

「あ、あの、父上。出来ればで良いのですが、私も何か着る物をいただけると助かります」


 ズーシュンを倒したものの、レヴィアとツキが半裸になってしまっているので、俺の服を着せ……上半身裸になってしまったが、仕方が無い。

 ズーシュンとその部下たちを一ヶ所に固め、結界スキルで逃げられないようにしたので、先ずは服屋へ。

 とりあえず、全員の着る物が居るからな。


「んー、お兄さん。どうして裸なんだい?」

「ちょっと色々あって、服が燃えてしまったんだ。サイズさえ合えば何でも良いから、売って欲しい」

「……こっちのお嬢ちゃんたちにもかい?」

「あぁ、頼むよ」


 少し年上の女性店員が、呆れた様子で俺を見ながら、服を選んでくれている。

 チラチラ俺の方を見ながらサイズを確認してくれているようだが……ある程度ブカブカでも良いから、とりあえず服を売ってくれないだろうか。

 いや、もしかしたら服屋として、似合わない服は売れないとかっていう、譲れない何かがあるのかもしれないが。


「じゃあ、お嬢ちゃんたちは、この服でどうだい。そっちに試着室があるから、着てくると良いよ」

「レヴィアもツキも着替えて来てくれ」

「あと、お兄さん。気付いていないかもしれないけど、ここは女性向けの服屋なんだ。男性向けの服はここには無くてね。ちょっとついて来ておくれ」

「わかった。レヴィア、ツキ。着替え終わったら、少し待っていてくれ」


 そう言って、女性店員について行くが……よく考えたら、レヴィアとツキの二人が服を着たら、俺の服が戻って来るから、それを着れば……いや、焦げているし、ダメか。

 炎で身体はダメージを受けないが、服は思いっきりダメージを受けるんだよな。


 しかし……何処まで行くんだ?

 店の奥へ入り、倉庫のような所へ来ると……暗闇の中で突然抱きつかれた。


「え?」

「ふふ……お兄さん。良い身体してるよねぇ。私、裁縫師っていうジョブだから、見ただけで身体のいろんな所のサイズが分かっちゃうんだよねぇ。……ここも」

「って、おい。何処を触って……んっ!?」

「……ふぅ。大丈夫。これは私がしたいからしているだけで、サービスだから……んぐっ!」


 抱きつかれた後、舌を入れられ……うん。身体が光らなかったのは、兎耳族に裁縫師っていうジョブの者が既に居たからだろう。

 って、女性が倒れたけど、どうしたんだ!?


「アレックス。そういう事は、私とするの!」

「その声は、レヴィア!? さっきの女性に何をしたんだ!?」

「大丈夫、気絶させただけ。という訳で、アレックス。早速……」

「いや、待て。こんな所ではダメだ。というか、俺もこの女性とそんな事をする気なんて無いからな? まぁ一方的に襲われてしまったのは俺の落ち度だが」


 暗闇の中でレヴィアの頭を撫でて宥め、気を失っている女性を抱きかかえて店の中へと戻る。

 レヴィアとツキが、可愛らしい……が、太ももに大きめのスリットが入っていて、ちょっと露出が激しい服に着替えていたので、焦げた俺の服を返してもらうと、


「≪リフレッシュ≫」


 神聖魔法で女性店員を起こす。


「あ、あれ? 私は……お兄さん? どうして服を?」

「ん? 俺は店に入った時から服を着ていたが? それより、この二人が着ている服をもらおう。幾らだ?」

「え? あ、はい。ありがとうございます……んん?」


 女性店員が不思議そうにする中、あくまで夢でも見ていたんじゃないのか? という感じで話を進め、店を出る。

 その直後、


「父上。影から見守っており、一つ分かった事があります」

「ん? 何だ?」

「父上は強いです。ですが、その強さ故、隙が多すぎます……あ、女性に対しての隙です」

「そ、そんな事は無いと思うんだが」

「父上が半裸で居ると、魅了スキルの効果が強化されると思うんです。そんな状態で女性に暗がりに連れ込まれたら、どうなるかなんて子供でも分かりますっ!」


 ツキから怒られ、レヴィアがうんうんと大きく頷く。


「今からジュリ殿たちと合流するのでしょうが、その前にちゃんとした服を購入してください! その焦げて、所々身体が見えているのはマズいです。また同じ事が起こります!」

「レヴィアたんが、アレックスの服を選んであげる」

「いや、ジュリたちが待っていると思うんだが……わ、わかった。出来るだけ早く頼む」


 ツキとレヴィアに詰め寄られ、服を着替えて……ジュリたちと合流する事になった。

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