第97話 水を汲み上げる魔法装置の設置

「≪石の壁≫……アレックスさん。では、ここで良いですか?」

「あぁ、頼む」

「分かりました。≪大地の穴≫」


 翌朝。リディアを連れて、ソフィと出会った湖まで来ると、以前にシェイリーの社の上に穴を開けてもらった方法で、地上へ。

 これで、湖の真上の位置が分かった。

 思った以上に家から離れているが、まぁ何とかなるだろう。

 一先ず、リディアに開けてもらった穴の周囲を石の壁で囲み、シャドウ・ウルフが来ないようにすると、


「アレックスーっ! 私たちも地上へ戻してよーっ!」

「そうですよー! ご主人様……泣いちゃいますよーっ!」


 穴の下からエリーとモニカが叫びだすが、二人を置いて行く訳が無いじゃないか。

 という訳で、石の壁を使い、二人も地上へ戻し、地下洞窟に付き合ってもらった全員が無事に地上へ。

 というのも、ソフィが作ってくれた、地底湖の水を汲み上げる魔法装置を設置する為に、湖の真上の位置を調べに来ていた訳だ。

 一先ず目的は達したので、後はここから南に向かって細い通路を作って行き……北東エリアの訓練場に繋がった。


「三人とも、ありがとう。これで少し離れているけど、水場が出来るよ」

「アレックスさん。お水なら私が出しますのに」

「ありがとう。でもリディアの負担も減らしたかったし、人形たちも増えたからな」


 昨日、地下洞窟でエリーたちとした事がばれ、地下に行っていないリディアたちと、昼過ぎから寝室へ連れて行かれる事に。

 その結果、また人形たちが増えた訳で。

 リディアの人形が二体と、こっそり地下洞窟で俺が出した物を持ち帰っていたサクラの人形が三体。そして俺の人形が五体で、十七組目の人形となっている。

 何気に、シャドウ・ウルフ討伐以外は人形たちで殆ど出来るので、増えても困らないと言えば困らないのだが。


「お兄ちゃーん! もうすぐ三軒目の家が出来るよー!」

「そうか。いつもありがとうな、ノーラ」

「ううん。大丈夫だよー! ゴレイムも手伝ってくれているし、かなり楽になったからねー」


 東エリアを通ると、追加の家を造ってくれているノーラが駆けてきて、抱きついてくる。

 来たばかりの頃は、こうしてずっと俺に抱っこされていたノーラだけど、最近は人見知りもなくなったみたいで良かったと思う。

 まぁ未だにお風呂では抱っこしているが、他のメンバーはもっと凄い事になっているからな。

 ノーラが作業に戻ると、


「お疲れ様です、マスター」


 すぐさまソフィが話し掛けてきた。


「ソフィ。湖の位置が分かったから、設置を頼む」

「承知致しました」


 ついでに作ったと言う台車に、ソフィが何かの装置を載せ、先ほど開けた湖の穴へ。

 暫くソフィが作業をして、


「マスター。設置完了です。現在は、私が内包する魔力を用いて稼働するように設定しています。大した装置ではないので、消費魔力は少ないですが、私への魔力補給を忘れずにお願い致します」


 無事に使用可能となった。

 ちなみに、今朝起きたら小さな寝室の外でソフィが立っていたので、昨日と同じくフィーネの目隠しと絶妙な舌使いでソフィの魔力補給を済ませている。

 まぁその後、フィーネにも飲まれ……げふんげふん。


「マスター。すぐにでも水は出せますが、いかがいたしましょうか? 尚、私の魔力で稼働致しますので、起動と停止、水量の調整などを、遠隔で設定可能です」

「それは凄いな。じゃあ、先ずは少量でここに水を頼む……≪石の壁≫」


 北東エリアに繋がる通路の壁に沿って、石で細長い溝を作り出す。

 水路のつもりで作ったのだが、


「あ、そうか。向こうへ水を流そうと思ったら、微妙に傾斜を付けないといけないのか」


 水を少なくしたのと、平らにしてしまっていたのとで、南へ上手く流れなかった。


「マスター。向こうまで距離がありますので、起点となるここの位置を高くしておきましょう。少しお待ちください」


 ソフィが魔法装置を調整している間に、俺は石の壁の微妙な制御を……って無理だ。

 エクストラスキルで土の精霊魔法が使えるようになっているものの、俺が精霊魔法に長けている訳でないので、細かな調整が難しい。

 大急ぎでリディアを呼び、良い感じに少しだけ傾斜をつけた水路を作ってもらう。

 すると、流石本職と言うべきか、微妙な傾斜のついた水路が出来、ニナが作ってくれた、今は人形たちが使うお風呂へ水が入って行くようになった。


「アレックスさん。如何ですか?」

「ありがとう。俺の思っていた通りの物が出来たよ。あとソフィも、短期間でこんな物を作れるなんて、凄いな。本当に助かるよ」

「お褒め頂き、ありがとうございます。汲み上げるだけでなく、濾過や浄化もしておりますので、飲料水としても利用可能にしております」


 あの魔物がプカプカ浮かんでいた水が飲めるのか。

 一先ず、洗濯や作物への水やり用と考えていたのだが、ソフィは俺の予想を超えて来たな。


「マスター。話は変わりますが、そろそろ魔力の補給をお願い致します」

「……リディア。少し頼みが……」

「大丈夫ですよ。お手伝い致します」


 すぐ側の小屋へ入ると、リディアがソフィに目隠しをして、俺のを……って、待った! そろそろ止めないと、もう……あっ!


「すみません。止めるのが少し遅かったですね。では、もう一度」

「……リディア。そろそろ……くっ!」

「あの、マスターもリディア様も、何をされているのでしょうか?」


 リディアが三回くらい俺のを飲んでから、ようやくソフィへ魔力を供給する事に。

 ソフィが次の開発に取り掛かると言って小屋を出た後、


「アレックスさんのを飲んで身体が火照ってしまいました。どうか、こちらにも……」


 リディアに迫られ……今日も明るいうちからしてしまった。

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