第365話 六合教の村

 村長と次期村長と呼ばれていた男を倒し、金で雇われていただけの冒険者三人は解放する事にしたのだが、


「やだぁー! 貴方様のお傍に居たいんですっ!」

「……離れたくない」


 過去にレイの作ったマジックポーションを飲んでしまっていると思われる女性二人が離れようとしない。

 そして、この二人の様子を見た残りの男が、


「うわぁぁぁーっ! ロザリーぃぃぃっ!」


 泣きながら部屋を飛び出していった。

 何て言うか、本当にすまない。


「えぇー。どうせなら最後まで見て行って欲しかったなー。いろいろと終わった後に、どういう気持ちか聞きたかったのにー」


 あと、カスミはちょっと酷過ぎるからな?


「サンゴ。この女性二人を眠らせられないか?」

「はーい。えーいっ!」


 声はゆっくりだが手の動きは鋭く、サンゴによって二人の女性が気を失った。

 奥にある四人の冒険者が待機していた部屋にベッドがあったので、そこへ女性二人を寝かせると、リーダーの男を閉鎖スキルで逃げられなくする。

 続いて、気絶している村長を治癒魔法で起こす。


「さて。お前にはいろいろと聞きたい事がある」

「話す! 何でも話すから、見逃してくれっ!」

「それは無理だな。とりあえず、六合教とやらの話を聞かせてもらおうか」

「あぁ、そっちの話か。てっきり、ここを小さな普通の村だと思って来たのだと思ったが、よくこの村の位置を突き止めたな」


 たまたま見つけただけなのだが、村長が怯えた表情から、急に不敵な面構えに変わったし……は、話を合わせてあげようか。


「悪いが、お前たちの事は調べさせてもらった」

「ふっ、お前が誰かは知らないが、我々に歯向かうつもりなのか? 死ぬぞ?」

「それは今のこの状況で言う言葉なのか?」

「ふん。所詮ここは、六合教が作った村の一つに過ぎん。だから護衛もA級冒険者が一組だけだが、王都に――本殿にまで行くのであれば、我ら六合教の強大さが分かるだろう」

「言いたい事はそれだけか? ならば、質問させてもらうが……」

「ふふっ、六合様に盾突く愚か者に天罰を……」

「ん? おい! 大丈夫か!? ……≪ミドル・ヒール≫」


 ただ話を聞いていただけなのに、突然村長が動かなくなる。

 慌てて治癒魔法を使ったのだが……効果が無い。


「この症状は……お兄さん。おそらく、口に仕込んで居た毒を飲んだっぽいわね」

「六合教の事を話さないように……か」

「おそらくね。とりあえず、カスミちゃんたち三人で、この部屋を調べてみるから少し待っていて……あ、やっぱりカスミちゃんとサンゴちゃんで探すから、お兄さんはナズナちゃんとイチャイチャしててー」


 いや、どうしてわざわざ言い直すんだよっ!

 ナズナも困って……って、嬉しそうにくっつかなくて良いから。

 あと、隣の部屋にあるベッドへ行こうとするなっ! そこには、冒険者二人も居るんだからな!?

 カスミたちが村長の部屋を調べ始めたので、俺は村長の遺体を埋葬しようかと思ったのだが、


「なっ!? 発火した!?」


 その遺体が突然燃えだした。


「アレックス様! お下がりください!」

「んー、こっちは何かのマジックアイテムの効果かしら。装着者が亡くなったら、身体を燃やすとかっていう」

「遺体からも情報が得られたりするしー、証拠隠滅なんでしょうねー」


 大きな炎ではなく、村長の遺体だけが燃えて周囲の家具や本などが燃える程ではないので、カスミやサンゴの言う通り、あくまで遺体だけを消すものなのだろうが……普通に埋葬する事も出来ないのか。

 一先ず近くで倒れている冒険者のリーダー格の男を離してやり、話を聞くために治癒魔法で目覚めさせると、


「ちっ……お、おい! エミリアはどうしたんだ!? あのアマ……許さねぇっ!」

「ふふっ、あの女の子……やっぱり小さいのだと物足りなかったんだってー。お兄さんので、すーっごく悦んでたよー」

「なっ……う、うわぁぁぁっ!」


 カスミがニヤニヤしながら、精神攻撃の続きを始める。

 情報収集の為なのだろうが、もう少し手心をだな……いやしかし、悪事に手を染めていた者なので、まぁ仕方ないか。

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