第897話 秘密の部屋
モニカが破壊した扉の中には、貴族……いや、王族だろうか。
四人の若い男性がいた。
俺よりも少し年上に思える男たちが立ち上がり、こっちを……入り口を見ている。
「待て! この姿が見えないのに、まるで誰かが居るかのような現象……あの神獣の力だっ! 神獣の手下がいるぞっ!」
神獣の……太陰の力の事がバレている!
いや、考えてみれば当然か。
ザガリーが支配の王笏を使って、太陰の力を使っていたのだから。
ただ、未だにどうやってザガリーが支配の王笏を手に入れたのかがわかっていないが。
……っと、それより今は、この状況をどうするかだな。
「誰か、ディスペル・ライトを!」
「警戒せよ! どこに敵が潜んでいるか分からんぞ!」
「くそっ! デイジーみたいなガキと婚姻を結んででも王族に入ろうとし、穴を掘るしか能力のないドワーフの売買をやり遂げる執着心を買っていたが……所詮はただの商人。あんな奴に神獣の支配を任せるのではなかったな」
ん? 今の話からすると、誰かは知らないが、ここにいる奴らがザガリーに太陰を支配させた……つまり、支配の王笏を渡した張本人たちという事か!?
そう思った直後には、奥に居た一人が、前に見た事のある珠を取り出した。
あれは、確か……マズい! ランランの魅了無効化を解除したマジックアイテムだ!
「はぁっ!」
「なっ!? 椅子が飛んできてディスペル・ライトが粉々に!? 一体何が……」
「神獣の手下の仕業だ! くそっ! どうして奴らが、ディスペル・ライトの事を知っているんだ!?」
危ないところだった。
魅了効果が解除されたら、騎士団や街ですら大変な事になったというのに、王族がいる王宮なんて最悪どころの話ではない。
レイチェルを始めとした女性たちの責任は取るつもりだが、流石に王族を相手にするのはメイリンだけにしなければ。
「≪閉鎖≫……ふむ。これでこ奴らは動けぬはずじゃ」
「これは……結界か! ディスペル・ライトを……って、今破壊されたのか!」
「落ちつけ。この程度の結界……はぁっ! 余の剣の声に従えば……そこだっ!」
なっ!? 一人がミオの結界を斬った!?
「ふむ……魔法の力が込められた剣か。我の結界を破るか」
「ミオ、違うわ。あれは……神の力! 気を付けて! あの剣で斬られたら、私でもやられる。アレックスやオティーリエでもマズいかも」
「ミオ! 下がれっ! どうやっているかはわからないが……奴は俺たちが見えている!」
太陰の言う神の力が込められた剣を持つ男が、結界を張る為に四人の男たちに近寄っていたミオに目をやる。
間に合えっ!
「≪ディボーション≫」
「ふんっ!」
「くっ! 我の守りを易々と……」
男の斬撃がミオの腕を掠り、血が流れる。
ミオ自身が避けたのと、自分自身にも守りの結界を張っていたおかげで軽傷で済んだようだが……マズいのはそこではない。
ミオにはパラディンの上位スキルで、対象のダメージを肩代わりするスキルが……無効化された!
こいつ相手には、いつものようにスキルで皆を守る事が出来ない!
「皆、下がってくれ! こいつには俺のスキルが効かない!」
「えっ!? パラディンの……」
「あぁ。モニカ、部屋から出てくれ!」
悪いが、誰も怪我をさせる訳にはいかない。
それに、太陰の言う神の力を持つ武器が、あれ一つとは限らない。
ザガリーの支配の王笏を含め、二つあるのだから、三つ目があるかもしれないからな。
という訳で、残りの三人が武器を抜く前に、椅子を投げつけ……三人とも戦闘不能にした。
これで気を付けるべきは、あの剣を持つ男だけだ。
「お前たち……何者だ」
「怪盗レックスと言えば分かるか?」
「なるほど。駒の一つを潰した奴らか」
「駒?」
「あぁ。国内の秩序を乱して混沌を招き、王族も堕落させて国を滅ぼすつもりだったのだが……まったく。計画が一つ狂ってしまったではないか」
こいつは……ザガリーだけでなく、デイジー王女も駒だと言っているのか!?
「お前は、誰だ!」
「部外者の怪盗如きに名乗る必要はないが……まぁ良かろう。余はモーガン・マーダガー。このマーダガー国の王なり!」
そう言って、モーガンが神の剣を振り下ろしてきた。
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