第769話 モニカの発見

「うーん。思っていた以上の本の数だな」

「そうなんですよ! アレックス様。この中から有益な情報を見つけた私を褒めて下さい」

「そうだな。本当にありがとう」


 イベール国の古文書の山を前に、軽く目眩を覚えながらグレイスを労っていると、ガブリエラも近寄って来た。


「アレックス様。け、結果は出せておりませんが、私も頑張っているので、その……」

「あぁ、ガブリエラもありがとう。助かるよ」

「えへへ」


 二人の頭を撫でていると、何処かに行っていたモニカがやってくる。


「ご主人様! 先程話しておりました、水攻めの件です。聞いた所によると、この近くの地上に湖があるそうです。その湖の底を魔族領に繋げれば、一網打尽に出来るのではないでしょうか!」

「いや、それは俺たちやドワーフの住人たちも一網打尽にしてしまうのでは?」

「くっ! 名案だと思ったのですが……」


 どうやら、ドワーフ族たちに聞き込みをしてくれていたらしいが、流石にその案は却下かな。

 そう考えると……やはりレヴィアもマズいかもしれない。

 洞窟内でレヴィアの攻撃は危険過ぎる。


「……あ! 湖があるという事は、そこでグレイスに舟を出してもらえば、天后の力でアマゾネスの村へ行けるのか。そこまで戻れば、シェイリーやランランに相談出来るな。ちょっと戻って聞いてみるか」

「という事は、やっと魔族領での続きが出来ますね」

「ん? アレックス様! 今、モニカさんが言った、魔族領での続きって何ですか!? 私たちも地味に頑張っているので、ご褒美を下さいっ!」


 モニカの不用意な発言でグレイスが抱きついてきて……いや、本当にそういう事をしている場合ではないんだが。

 何とかグレイスを宥めたものの、私たちにも……と、全員でアマゾネスの村へ事になったので、ミオたちに声を掛け、最後にニナの所へ。


「ニナ。盾はどんな感じだろうか」

「あ、お兄さん! ついさっき終わって、ニナもお兄さんを探しに行こうとしたところだったんだー!」


 そう言って、ニナが俺の大盾を見せてくれた。

 歪む前の形に綺麗に戻っていて、何の違和感も無い。

 イベールの王女といい、ニナといい、やはりドワーフ族の鍛治能力は凄いな。


「えっとねー。モニカの聖水を貰ったから、お兄さんの盾に付与しておいたよー!」

「ありがとう、助かるよ」

「これで、レイスを盾で吹き飛ばしたりも出来るんじゃないかな」

「レイスは数が多いからな。剣で捌ききれなければ盾を使う事になるだろうし、助かるよ」


 ニナにお礼を言っていると、


「ニナ殿。私の聖水を鎧に付与する事も出来るのだろうか」

「勿論出来るよー!」


 モニカが手にしたバケツとニナを交互に見る。

 なるほど。俺も盾を強化してもらったし、モニカも防具を……いや、露出している胸を覆うのが先な気もするが。


「では、ご主人様の鎧を是非強化していただきたいのだが」

「俺のを? いや、俺は盾を修理と同時に強化してもらったし、モニカの防具を強化してもらった方が良くないか?」

「いえ。ご主人様の鎧に付与していただければ、常にご主人様が私の聖水を身に纏っている訳で……超興奮するではありませんか!」

「ニナ。鍛治が終わったばかりで悪いが、アマゾネスの村へ行く事になったんだ。近くに湖があるらしいから、先ずは地上に出よう」

「ご主人様っ!? 防御力と、私の興奮を高める一石二鳥な案ですが、どうして無視するのですかっ!? ご主人様ぁぁぁっ!」


 叫ぶモニカを放置して、周囲の人に道を聞き、久々に地上へ出ると、辺りが砂漠や荒野ではなく、草原になっていた。


「うわ……全く違う景色というか、生えている植物とかも全然違うな。あのトロッコで、どれほど移動して来たんだ?」

「あの、お兄さん。ニナは何度か言ったけど、あれって凄い速度だったんだよ?」

「そ、そうか。気をつけるよ」


 地下でドワーフから聞いた方角へ向かって歩くと、沢山の動物が水を飲んでいる湖が見えてきた。

 近くまで行くと、早速グレイスに舟を出してもらい、レミからメイリン経由で連絡して……天后の力でアマゾネスの村へと戻ってきた。

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