第122話 何か怪しいお昼ご飯
「一先ず、昨日かき集めた布だ。不足分は大至急集めるので、少し待って欲しい」
「すまないな。こちらも、また後日残りの半分を持ってこよう」
ヌーッティさんから受け取った、結構な量の布を荷車に積み、家に帰る。
とりあえず、今度はリディアにも来てもらって、道を整備しないとな。
とはいえ、鉄器と違って軽いので、来た時よりは幾分早く東の家に戻って来る事が出来た。
荷車を引いてくれたソフィに、一旦休憩しようと告げ、皆で家に入ると、
「アレックスさーん! お帰りなさいっ!」
「旦那様っ! お帰りなさいませっ!」
「お兄さん。おかえりーっ!」
リディア、メイリン、ニナに出迎えられる。
かと思うと、
「お兄ちゃーん! 寂しかったよーっ!」
「アレックス様……アレを、アレをくださいっ!」
ノーラとフィーネが問答無用で抱きついて来た。
ノーラは大きくジャンプして、俺の上半身に、一方のフィーネは俺の下半身に突撃……って、今はダメだぁぁぁっ!
「フィーネさん。アレックスさんはお疲れですし、お昼には少し早いですが、先ずは昼食にしましょうね」
「アレックス様ぁー。フィーネは我慢出来無いですぅー」
「フィーネ? どーしたのー? 何が我慢出来ないのー?」
リディアがフィーネを止めようとするが、そんな事では止まらず、ノーラが不思議そうにしている。
そんな中、
「遅なって、すまん。例の薬の準備は上々やでー……って、あ、アレックスはん! お、おかえり! え、えらい早かってんな」
レイが現れたんだが……今、何か隠さなかったか?
有益な薬を作ってくれるのなら良いのだが、前みたいに精力剤なんて作るのは勘弁してくれよ?
しかし、それより今はフィーネをどうするかだ。
サキュバスの血を引くので、アレを欲するというのは仕方がない。仕方がないのだが、今はノーラにソフィ、ユーディットにレイまで居るからな。
いっそ、スキルで全員眠らせてくれたら、幾らでも相手をするんだが、フィーネはそれに気付かないくらい、余裕が無さそうだ。
そこへ……ズボンの上からスリスリと頬擦りしているフィーネの側にリディアが近寄り、
「……例の計画……」
小声で何かを耳打ちした。
少しだけ聞こえたけど、何の事だかさっぱり分からない。
しかし、
「さぁ、皆さん。お昼ご飯の準備が整っています。どうぞこちらへ」
リディアの言葉でフィーネが俺から離れ、食堂へ向かう。
何だ? あの状態のフィーネを俺から離すなんて……リディアは一体何を言ったんだ?
しかし、フィーネが離れた代わりにニナが抱きついてきて……だが普通に抱きついてきただけなので、ノーラとニナをそれぞれ抱きかかえ、そのまま食堂へ。
二人が小柄だからこそ出来る事だなと思いつつ、席に着く。
「いただきまーす」
昼食は、リディアお手製のパスタとサラダとスープ。
先ずはサラダを……うん、旨い。
リザードマンの村で出されたサラダは、素材の味を楽しむ物だったが、こっちにはドレッシングが絡み、一層味が引き立てられる。
次はパスタを……って、何だ? リディア、メイリン、フィーネにレイが、俺の事をジッと見つめ続けているんだが。
リディアは料理を作ったから俺の反応が気になり、フィーネは早くアレを……って事なんだろうけど、メイリンとレイはどうしたんだ?
「……メイリン。どうして、そんなに見つめてくるんだ?」
「えっ!? そ、その……えーっと、だ、旦那様が美味しそうにお食事をされているので、つい」
「そ、そうか」
「レイもそんな感じなのか?」
メイリンから、レイに視線を移すと、
「せ、せやねん。いやー、アレックスはんの食べっぷりを見ていると、同じパスタのはずやのに、何やらそっちの方が美味しそうに見えてもーて」
「そうなのか? じゃあ、このパスタは、まだ口を付けてないから、交換してあげるよ」
「えぇっ!? ちょ、待って。アレックスはん! そういう意味と違う……あ、あ、あぁぁっ!」
レイがパスタを交換して欲しそうなので、皿ごと交換してあげた。
うん……リディアの作ったパスタは旨いな!
「どうした、レイ? 食べないのか?」
「あ、えーっと、急に食欲が……」
「大丈夫か?」
急に青ざめるレイを心配していると、
「じゃあ、そのパスタはボクが食べようか? 勿体ないし」
「ノーラはんがっ!? あ、あかんっ! た……食べるっ! ウチが責任を取って食べるんやーっ!」
レイが涙目になりながら、パスタを一気に食べ切った。
……レイ、本当に大丈夫か?
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