第156話 バトル開始
「ちょっと待ってくれ。いつの間にかモニカたちと一緒に戦う事になっているが、俺は女性に剣を向けるつもりは無いぞ」
「ご安心を。我らは天使族最強の戦乙女部隊。その中でもエースである我々が出ますので、本気で戦ってください。おそらく、十分どころか十秒立っていられるかも怪しいですし」
おっと、十秒で倒すと言われてしまった。
だが、俺が彼女たちを攻撃しなくとも、十分耐えれば良いとも言っていたな。
それなら……まぁ、良しとするか。
「そうそう。ハンデとして、こちらは刃を潰した模擬戦用の槍を使いますが、そちらはどんな武器や魔法を使っても構いませんので」
「ほほう。随分と舐められたものだな。舐めるのは、ご主人様のアレだけ……あぅっ!」
本日何度目になるか分からないデコピンでモニカを黙らせる。
すぐ側にノーラやユーディットが居るだろ? 更に、ヨハンナさんに呼ばれたのか、ユーディットの人形ユーリも居るしな。
そういう事を言わないように。
「分かった。それで、いつからするんだ?」
「勿論、今すぐです。構いませんよね? ヨハンナ様」
「えぇ。天使族の習わしですからね。本来のタイミングから考えると、遅過ぎるくらいです。そして、今回はユーディットちゃんの見染めた相手です。私も出ましょう」
天使族の女性たちは、皆ほどほどにしか食べていなかったが、ヨハンナさんは隣に座るユーリから、あーんってされる度に食べていたぞ? 大丈夫なのか?
「アレックスさん。私の料理を沢山召し上がってくださいましたが、食べた直後に大丈夫でしょうか?」
「任せろ。俺は身体も丈夫だが、胃袋も丈夫だからな」
まぁその、天使族は空を飛ぶからか、思っていた以上に少食で、せっかく作って貰った料理を残す訳には……と、少し無理をしたのも事実だが。
「では、ルールの最終確認です。ヨハンナ様に、トリーシアとアーシア。そして私ルーシアの四名を倒すか、十分後に貴方たちが立っていれば勝ちです。場外は無く、見える範囲全てが戦闘フィールドです」
「我らは、アレックス様とミオ殿……こちらの獣人族の方に、私とモニカ殿……そっちの変態の四人だ」
「誰が変態だっ! 私が変態ならば、サクラ殿も変態だっ!」
サクラとモニカが意味不明な戦いを始めた所で、ユーディットとユーリがやって来た。
「アレックスー! ママから、この天使族の習わしの意味を教えてもらったのー! だから、絶対に勝ってねー!」
「パパー! がんばってー!」
「あぁっ! ユーリちゃん……お婆ちゃんよりも、やっぱりパパの方が良いのねーっ!」
いや、お婆ちゃんって。
ヨハンナさんは、どう見ても二十代後半なんだが。
それに、ユーディットよりも、ユーリが俺を応援した事に悔しがっている様に見えるのだが、どうなのだろうか。
一先ず巻き込まれると困るので、この戦いに参加しない者には距離をとってもらい、
「では、この石が地面に落ちたら開始としましょう」
ヨハンナさんが空に向かって石を投げる。
向こうは、天使族の若い三人が前衛で、ヨハンナさんが後ろに居る陣形。
一方、こちらは俺が盾を構えて先頭に立ち、三人を守る陣形となっている。
とにかく俺が三人を守り切るんだ! という想いと共に石の行方を見守り……落ちた!
「≪ディボーション≫」
先ずはパラディンの防御スキルを皆に使用し、万が一攻撃されても俺がダメージを肩代わり出来るようにした所で、
「乳女ーっ! 死にさらせぇぇぇっ!」
天使族の若い三人が、天使らしからぬ言葉を吐きながら突っ込んできた!
というか、先頭の俺を無視して、何故か三人ともモニカを狙っていないか?
何か天使族を怒らせる事をしたのか? と思いつつも、モニカを庇う様にして位置を変えた所で、
「≪隔離≫」
ミオが結界スキルを使用した。
「えっ!? ちょ、待って! 急に止まれな……あうっ」
「ず、ズルいっ! こんなの卑怯よっ!」
「乳女っ! 正々堂々と戦いなさいっ!」
朝にヨハンナさんが突っ込んで来た時と同じ様に、三人の天使族の女性が結界にぶつかり、ジタバタしている。
とりあえず、結界を張ったのはミオで、モニカでは無いんだけどな。
「さて、アレックス。我らはゆっくりと乳繰り合うのじゃ」
「ご主人様! 私もっ! 私もしたいですっ!」
「いや、これって天使族の大事な習わしらしいから。結界はともかく、そういう事はダメだろ」
結界の中で俺に抱きついて来たミオとモニカを引きはがすと、
「えっ!? 見せてくれないんですか?」
「せっかく至近距離で見られるチャンスなのにっ!」
「でも、そこの乳女は後で覚えとけよっ!」
何故か天使族の三人にまで残念そうにされてしまった。
……って、大事な習わしなんだよな? そうなんだよな!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます