第155話 指名される女性たち
「さっすがアレックスはん! いやー、凄いわ。ウチに出してもろたんも凄かったけど、まさかビーカーが一つで足りへんとは思わんかったわ……実は馬なんか?」
レイ。いくらなんでも馬は酷くないか? 人間ですらなくなっているんだが。
まぁ本気で言っている訳ではなさそうだけどさ。
「サクラは大丈夫か?」
「もちろんです。ただ、あまりにも見られ過ぎているので、少し困惑しましたが」
「ふっ……まだまだね。私なんて、むしろ見られているせいか、いつも以上に興奮したわっ!」
モニカが割り込んで来たけど、それは流石に変態という種類では?
いや、そう言いながらも、結局天使族たちに見られながらしてしまったので、俺もモニカの事を言える状態ではないのだが。
「アレックス。満足したのじゃ! じゃが、これはあくまで昨晩の分なのじゃ。出来れば、毎晩して欲しいのじゃ!」
「毎晩は流石にちょっと……」
「ふっふっふ。我は知っておるのじゃ。アレックスなら、それくらい余裕なのじゃ」
そう言いながら、全員が衣服を整えたのを確認し、ミオが結界スキルを解除する。
その途端、
「おぉぉぉっ!? こ、こら押すなっ!」
ミオの結界に貼り付くようにして俺たちの事を見ていた天使族の女性たちが、コーン畑になだれ込んでくる。
「あ、あのっ! も、もう終わりなんですかっ!?」
「えっ!? あ、あぁ。そろそろ貴女たちを歓迎するパーティの準備が終わる頃なので、そちらへ移動してもらえるだろうか」
「……治癒魔法を使った訳でもないのに、平然としている!? 天使族の男性は、一度出したら一月ほど動けないという噂なのに」
天使族の一人がよく分からない事を呟きながら、愕然としているのだが……とりあえず風呂へ行って匂いを何とかしないとな。
一旦家に寄ってから、大急ぎで西の広場へ行かなければと思っていると、
「ふふっ……ご主人様の凄さが分かったかしら?」
後ろの方でモニカがまた余計な事を言っているのが聞こえて来た。
呆れながら振り返ると……ん? 天使族の中で殺気を放っている者がいる!? だが、僅かに殺気を感じたものの、それはすぐに消えてしまった。
気のせい……だよな?
念の為、こっそりパラディンの防御スキルで、ここに居る四人の女性全員を守り、家へ。
「ミオ。家が壊されないように、結界を張ってくれないか?」
「わかったのじゃ。≪隔離≫……次は風呂の中で続きをするのじゃな?」
「違うよっ! とりあえず全員身体を綺麗に洗ってから、パーティへ行くからな」
レイだけは薬の調合にと別の部屋へ行ってしまったが、一先ず四人で風呂へ入り、身体を綺麗にする。
出来るだけ急いだつもりだったのだが、そもそもコーン畑に居た時間が長かったのか、ヨハンナさんが壊した壁が完璧に修繕されていた。
の、ノーラの仕事が早かったという事にしておこう。
それから昨日に続いて皆で一緒に食事をし、ヨハンナさんがこれでもかというくらいにユーディットの事を可愛がる。
うん。母娘が再会出来て、本当に良かった。
「皆さん。この度は、このような歓迎の席を設けてもらい、ありがとうございます。そして、アレックスさん。娘を助けてくださって、本当にありがとうございます」
リディアとエリーが作ってくれた大量の料理が、そろそろ無くなりそうだ……というところで、ヨハンナさんが深々と頭を下げ、
「しかしながら、それはそれ。これはこれと言う事で、アレックスさんには力を示してもらおうかと思います」
パーティ前まで、話題が戻る。
その直後、天使族の一人が声を上げ、
「ヨハンナ様。アレックスさんは一夫多妻制の人間族であり、実際に複数人の妻が居る様です。ですので、他の妻にも参加してもらった方が宜しいかと」
「それはつまりパーティ戦に……習わしの中で最も難易度の高い方式にしろという事ですか? ふむ……」
ヨハンナさんが何かを考えだす。
一方で、その声を上げた天使族が、今度は俺たちに説明を始める。
「これより、アレックスさんとその妻……無駄に胸の大きな女性と、そちらに居る細身の女性。向こうの白衣の女性に、獣人族の子供……いや、この子は流石に除外しようか。先に言った三名の女性とアレックスさんの四人パーティと、私たち戦乙女部隊とで戦い、十分間誰も倒れなければ貴方たちの勝利となります」
「ま、待ってーな! ウチは戦いなんて無理やで!?」
「ふふふ……ならば、我が代わってやるのじゃ。何故か外されてしまっていたが、見た目で判断しない事なのじゃ」
天使族の女性から、モニカ、サクラ、レイ、ミオが指定され、レイは抜けたものの、このメンバーは……ややこしい事にならなければ良いのだが。
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