第41話 大量の肉を得た俺たちと、謎の液体を流し続けるモニカ

「ウゴクナ。コノオンナ、ヒトジチ」


 混乱状態となり、剣と鎧を脱ぎ捨てたモニカの傍に立ったオークキングが、意外な事を言ってきた。

 喋れる事もそうだが、まさか状態異常にした者を人質に取るとは。

 だが、有効そうに思えるそれは、俺の前では無力だ。


「≪ディボーション≫……エリー、モニカは大丈夫だ。蹴散らせっ!」

「えぇ、任せてっ! ≪サンダーストーム≫」


 パラディンの上位防御スキルでモニカを守ると、エリーに強力な範囲攻撃を放ってもらい、一気に形勢逆転となる。

 まぁモニカのダメージを肩代わりしたので、俺もダメージを受けているが、中位の治癒魔法で回復したので、殆ど無影響だ。


「オマエラ……ナカマヲ、ミステタノカ」

「違うな。モニカを助け、かつ、お前を倒すんだ。≪シールド・チャージ≫」


 エリーの魔法に耐えたオークキングに、盾を構えて突撃すると大きな巨体が遠くへ吹き飛んでいく。

 ……あれ? オークキングって、身体がデカいだけで、実は弱いのか?

 思っていた以上に効果があったので、


「≪ホーリー・クロス≫」


 攻撃スキルを放つと、オークキングの腕が落ちる。

 ……オークキングって、聖属性に弱いのか?

 エリーの追撃もあり、何度か攻撃を続けると、


「≪ホーリー・クロス≫っ!」


 オークキングが倒れ、動かなくなった。

 ……やはり思っていたより弱い?

 それとも、エクストラスキルで俺が強くなったのか?

 少し考えたものの、モニカを元に戻すのが先だと慌てて戻り、混乱状態を回復させる神聖魔法を使用する。


「すまない、待たせたな…… ≪キュア・コンフューズ≫」


 何故かリディアが物凄く怒っているが、モニカに攻撃でもされたのだろうか。

 そのモニカを見てみると、胸を大きく露出し、顔を真っ青にしている。


「おい、モニカ。大丈夫か? とりあえず、服を……」


 慌てて予備のシャツをモニカに掛け、胸を隠すと、


「――っ! む、胸にっ! 胸にかけられた……」


 胸に掛かった俺のシャツを、ジッと見つめだす。

 いや、胸にシャツを掛けたけど、そんなにダメな事なのか?


 結局、混乱状態が完全に解除出来て居なかった事が分かり、改めて状態回復魔法を使って、普段のモニカに戻ってくれた。


「お兄さん。沢山お肉があるけど、どーする? とりあえず持って帰るで良いのかな?」

「そうだな。とりあえず、普通のオークは置いといて、別種族と思われるオークを持ち帰ろうか」


 S級のオークキングは当然として、A級のオークメイジや、いつの間にか倒していたオークアーチャーに、オークファイターやハイオークなどの肉を取得する。


「アレックス。持ち帰れない分は、燃やしておく? 死骸に魔物とかが、集まってきそうだし」

「そうだな。既に持ち切れないくらいの量があるし、そうしようか。エリー、頼む」

「了解っ!」


 そう言って、エリーがオークの死骸を纏めて燃やしていく。

 脂が多いからか、物凄く良く燃え……消し炭に。

 ここまでやっておけば、大丈夫だろう。

 それから、シェイリーの所まで戻り、


「おーい、シェイリー。ちょっと来て欲しいんだが」

「うぅ……何の用だ? 暫くそっとしておいて欲しいのだが」


 声を掛けると、社から半分だけ顔を出したシェイリーが、未だに恥ずかしそうにしていた。

 色々あったと言えばあったけど、別に誰も気にしていないと思うのだが。


「いや、大量に肉を取得したから、一緒に食事でもどうかと思ったんだが」

「む……肉か。前に貰った食事も旨かったな。……さ、酒もあったりするのか? いや、出して欲しいという意味では無く、今は控えたいという意味なのだが」

「とりあえず葡萄酒は無かったはずだ。じゃあ、後で俺たちの家まで来てくれ」

「分かった。だが、水臭い事を言うな。我が家まで送ってやろうではないか」


 そう言って、シェイリーが龍の姿になると、


「え、えぇぇぇっ!? ほ、本当に蛇……じゃなくて、青龍だったのかっ!?」

「あー、そうか。モニカはシェイリーが龍の姿になったところを見てなかったんだな……って、どうしたんだ?」

「いえ、あまりの驚きで、腰が抜けてしまいまして」


 シャドウ・ウルフの時と同じ様に、モニカがペタンと座り込む。

 そして、その直後に現れる謎の水溜り。

 一体何なのかと考えていると、


「……アレックスたちは我の背中に乗るが良い。だが、そっちの乳女はダメだ」

「乳女とは、私の事か? な、何故ダメなのだ!?」

「……我の背中が汚れる。だが、安心しろ。背中に座られると困るが、ちゃんと運んでやろう」


 シェイリーに背中へ乗るように促され、とりあえず移動する。

 一人取り残されたモニカはどうなるのかと、ハラハラしていると、龍の姿のシェイリーが大きく口を開け、モニカの鎧を咥えた。


「うぇぇぇっ!?」

「甘噛みだから大丈夫だ。それと、今から飛ぶぞ。大人しくしていないと、落ちるぞ」

「ふゎぁぁぁっ! 怖いぃぃぃっ!」


 簡単な説明をしたシェイリーが、改めてモニカを噛み、地上へ向かって昇って行く。

 モニカの様子を見ていると、短いスカートの中から、変な液体が撒き散らされている気もするのだが、エリーたちから見ないであげてと言われ……一先ず全員無事に地上へと戻って来た。


「もう、出ません。全部……出尽くしました」


 涙目のモニカが、女の子の姿に戻ったシェイリーに何か言っているのだが、一体何なのだろうか。

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