挿話119 デザートは別腹なチェイサーのフェリーチェ

「さぁ出来た! フェリーチェ、心を込めて作ったから、沢山食べてくれ」

「はい、いただきます」


 アレックスさんがイノシシの肉を調理し、食べるように勧めてくれた。

 料理スキルがあるそうだし、期待しながら口へ運び……おぉ、美味しい。


「アレックス様は本当に何でも出来るのですね」

「スキルを沢山持っているからな。それより、もっと食べてくれ。フェリーチェの為に沢山作ったんだからな」


 そう言って、アレックスさんが私にだけ沢山勧めてくる。

 これは、気を遣われているのだろうか? それとも、親睦を深めたいという事か?

 ただ、何れにせよ言える事がある。


「あ、アレックス様。私はもうお腹がいっぱいで……」

「本当か? もう何も食べられないか?」

「え? はい。これ以上は無理です」

「そうか。良かった。では、次は風呂だな」


 そう言って、アレックスさんが石の壁で浴槽を作り、ラヴィニアさんが水を出す。

 更に、火の剣でお湯に変えて……本当に凄いのね。


「あれ? お風呂を二つ作るのですか?」

「あぁ。こっちの温かいのは俺やニースたちで、冷たいのがラヴィニアとプルムだ」

「なるほど。アレックス様が娘をさんたちと入られるのなら、私はラヴィニアさんたちと入りましょうか」


 温かい風呂は少し興味があるが、普段から水浴びなので、水風呂へ。

 女性の姿のプルムさんと、ラヴィニアさんと三人で汗を流していると、


「ふふっ。貴女……デザートはお好きかしら?」

「えっ!? で、デザートなんてあるのですかっ!?」

「えぇ、そうよ。とっても濃厚で美味しいのがあるわ」

「あ! もしかして、先程言っていたアレとは、デザートの事だったのですか!?」

「その通り。ニースちゃんとユーリちゃんが寝たら、静かにここへ来て。すっごいから!」


 お風呂で食べるデザート?

 一体どんな物なのか想像も出来ないが、楽しみだな。

 ただ、アレックスさんの作った料理が美味しくて、お腹いっぱいにお肉を食べてしまったが……まぁデザートは別腹だから、大丈夫だろう。

 それから、水浴びを終え……夜営で安全に夜を過ごせるって良いな。

 アレックスさんたちをリス耳族の森へ案内し、本格的に世界を旅する時には、是非とも土魔法と水魔法が使える者を仲間にしたいな。


「さて、寝るか」

「じゃあ、ここはプルムの出番だよー! 見ててー!」


 そう言うと、プルム殿が平べったい円形に姿を変え……まさか、これはベッドなのか!?

 凄いな。しかも、中にラヴィニアさんが魔法で水を……ウォーターベッドとでも呼べば良いのか、ムニムニして柔らかく、広さも十分なベッドになった。

 ただ、中央部からプルムさんの顔が出ているのが気になるが。


「じゃあ、お兄さんは、さっき言った通り、宜しくねー!」

「ふふ、あなた。例の件は宜しくね」

「仕方ないな。約束だからな。……ニース、ユーリ、おいで。一緒に寝よう」


 アレックスさんが声を掛けると、娘さんたち二人が抱きつき、三人で川の字に。

 アレックスさんは大きく脚を開いているが、プルムさんの顔を蹴らないようにしているのだろう。


「フェリーチェもおいで」

「えっ!? わ、私もですかっ!?」

「あぁ。いや、くっついて寝ようとまでは言わないが、硬い地面で寝るより、プルムの上で寝た方が身体が痛くならないだろ」

「そ、そうですね」


 これは、娘さんたちが寝たら襲われてしまうのだろうか?

 いや、流石に娘さんたちの前で……というか、プルムさんの上でそんな事はしないだろう。

 それに、私はアレックスさんに完敗している。本来なら、殺されていてもおかしくないのだから、襲われるくらい……よ、よし。一緒に寝よう!

 覚悟を決めてプルムさんの上に寝転び……凄い! ムニムニで楽しい……じゃなくて、物凄く寝心地が良い!


「プルムは凄いな。これはすぐに寝てしまいそうだ……あ、≪分身≫」


 ん? 今、アレックスさんが変な言葉を……いや、それよりベッドが良過ぎて眠くなる。

 少し目を閉じ……って、デザートっ!

 危ない、危ない。果物以外の甘い物なんて滅多に食べられないし、是非頂かなければ。

 娘さん二人は……アレックスさんと一緒に眠っているな。

 プルムさんは……何故か顔がアレックスさんの股間に移動しているけど、娘さんたちみたくくっついて眠りたいのだろう。

 静かにプルムさんの上から降りると、お風呂場へ。

 ラヴィニアさんと一緒に、何故かアレックスさんに似た人が……四人も居る!?


「あ、フェリーチェさん。待っていたわよ。さぁどうぞ」

「あ、あの……月明かりしかないので、間違っているかもですが、こちらはアレックスさんに似ていませんか? というか、どなたですか?」

「細かい事は気にしない。足りなければ、隣で結衣ちゃんとしている分身さんを呼ぶから、まずはグイッといきましょう」

「えっ!? 何を!? ……んぐっ!?」


 アレックスさんに似た人から、何か棒のような物を口に突っ込まれたかと思うと、熱い何かが喉の奥に……


「これ、美味しいですか? 飲めなくはないですけど……」

「初めてだと、慣れるまでは大変かもしれないけど、慣れたらやみつきになるわ。……それより、一人につき二本あるから、どんどんいきましょう」

「えっ!? 二本!? んぐっ……あっ、でも確かに慣れてきたら美味しいかも。……けど、どうして身体が熱くなってくるんだろ? お、お腹の奥がムズムズする。こんなの初めて……」

「ふふっ。貴女が望むなら、もっと美味しい事を教えてあげるわよ? する?」

「えぇ、お願い……ひゃぁっ! な、何を……あ、あれ!? どうしてお漏らしなんて……」

「あー、その現象すら初めてなのね。わかった……初めてはあの人に取っておきましょうね」

「あの人……んっ!? ちょ、ちょっと待って! お尻に一体何を……んほぉぉぉっ! んあぁ~~~~」


 この不思議な棒……凄いのぉぉぉっ!

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